act 22

「何でオメーはそうなんだ」
唐突にきり出された隼人の言葉に、何がどうなんだ、とそっぽを向いた。
「ったく……オメーと蒼くれーだ」
「何が!」
先ほどと、立場が見事に逆転してしまっている事など、雅はどうでもいいとばかりに、
不機嫌な感情をむき出しにした。

一コマ戻って、今の自分にさっき自分が隼人に向って吐いた台詞を
聞かせてやりたいと思う程に雅の癇癪と呼べるものは凄まじかった。
隼人にずるずると教室の外へと引きずられていく様を、生徒達が、興味津々で見ていた。
舌を鳴らしながら、隼人は備品室へと連れてきたが、もう既に何度も雅は隼人から、この備品室からの脱走を試みている。が、それは無理だった。

雅の手をもった隼人は、その手を離そうとはしない。
少し油断すれば、その鋭い牙で噛みつかれそうな危機感に襲われた隼人は、雅とは反対に、どんどんと冷静を取り戻していく。

少し前なら、この自分のイライラを発散させる為に、悩んだものだが、
驚いた事に、自分でも気付かぬうちに、雅と会話をするだけで消え去っていた。
「ちょっとは落ち着け」
「だから私は落ち着いてるじゃない! 落ち着いてないのはアンタの方で――」
湧き上がる怒りとともに出した言葉の矛盾に、雅は最後の最後で気付いたのか、ふっと、勢いよく燃えるが消えたかの様に、大人しくなった。
自分のたった今までの行動が、ちょっぴり恥ずかしくなったのか、でも隼人には謝るつもりはないと言うように、腕を組んで、またふりだしに戻った。

「――で? 何よ。 言ってみなさいよ。 私を納得させてみて!」
どうしてそんなに偉そうなんだと隼人は突っ込みたくなったが、また繰り返される歴史がうっとうしいと、素直にこの女を納得させてやると口を開いた。それもあっけなく。

「停学になった」
「停学!?」
雅の間髪居れずの言葉。
「何で? どうして? いつ? どれくらい?」
「何でかは話したくねー。いつかは……さぁな。まだ分からねーよ」
「そんなの答えになってないわよ! 全然納得できない! 何で! 何で!?」

さっきまでの表情とは一変し、本気で心配の色を伺わせている。
「何? 俺と離れたくないってーのか?」
隼人がその色にからかいの色を混ぜた。
が、すぐに平手が飛んできた。そして隼人の頬に甲高い音を刻んだ。
「私そんな冗談嫌い。もういい。言いたくないンなら其処にいれば? 私出てくから」
どうやら今の隼人の冗談は、雅に通用しなかったどころか、本気で怒らせてしまったらしかった。
スッと隼人に背を向けると、唖然としている隼人をそのままに扉に手をかけた。
しかし、ハッとした隼人が、その扉を押さえた。

「離して」
雅の声は、冗談ではなく低い。そして冷たい。
「悪かった。けど理由は勘弁してくれ。言う気分じゃねー」
背中越しに隼人の温度が雅に伝わり、思わず可愛い本音がポロリと出てしまった。

「何で? 私にも教えられない事?」
私は特別じゃないの? 隼人にはそう聞こえた。
一瞬焦った気持ちを、息をつくことでおさえ、自然に口元には笑みがにじみ出てきた。
又殴られるか? と思う気持ちも含めつつ、隼人はそのまま雅を後ろから抱き締めた。
以外にも雅は抵抗しない。調子にのりそうになった気持ちを更におさえ、その髪の毛に唇を落とした。

雅は、怒っていた事も忘れ、隼人の手に自分の手を重ねた。だが隼人から見える表情はまだまだ拗ねている風にも見え、思わず自分の母親を思い出し、母親と同じ、正統派ツンデレだと苦笑した。


……To Be Continued…
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