act 21

「で……。どうなの!? きっちり話をして貰うわよ」

雅の定番であるピーチ&アールグレイティをズズ〜と飲みほすと同時に口を開いた。しかし目の前に居る男は、あからさまに不機嫌だった。だが、雅も譲らない。早く話せコノヤローと言う目つきをその男に向けている。
其処で、また更に声が加わった。
「わ、私も……しりたい……です」

寧々が言うと、ちらりと蒼はそちらを見た。
一度観念する様に空を仰いだ蒼は、はァ……、と息をつき、つぶやいた。
「本当なんじゃねーの」
雅は口をあんぐりとさせた。

「あんたね〜! 折角こんな裏庭まで引っ張ってきたのに、そんなふざけた回答しか言えないの!?」
わなわなと怒りで震える雅の背中は、今にも蒼に飛び掛りそうで、そんな雅を寧々は、どうしようかと不安そうに見ている。此処で更に声が加わった。
「雅さんの頭から角が出てらァ」
声に勢いよく振り返った寧々は、あっと声をあげた。

「隼人! ねぇ! 何で蒼が停学に? 何したの? それって朝の不機嫌さと関係ある? ねぇ!」
蒼があいまいな答えしか返さなかった中、隼人が現れた。此処はもう彼に聞いておくしかないだろう……。
思うが早く寧々は、蒼の尋問から隼人の尋問へと移ったのだった。蒼は解放されたといいながらも頭を面倒そうに頭を掻いている。一方雅の質問攻めにあう隼人はその勢いに多少苦笑している。けれどその一生懸命さに、分かったと一度切り、話しはじめた。

「停学ってーのは本当。ただし、蒼じゃなくて俺も……だがな」
今度は雅だけじゃなく、寧々までもが声をあげた。あわわと二人はドが付くほどに混乱している。

特に寧々が面白い。まずちゃんと話す事さえ困難な様だ。そんな二人を見て、思わず二人は笑った。
何故ならこの二人の停学というのは、今にはじまった問題ではないからだった。既に一年の時からの、いわゆる常習犯。特に酷かったのは、二年だった。
一度は退学にもなりかけたが、其処はなんとか回避した。その理由は考えるまでもなく、喧嘩。喧嘩とひとくくりに言っても、まず銀魂高校の奴と喧嘩をしたのは、たった一度、それも入学式の時だった。以来喧嘩はしていない。理由は考えるまでもなかった。

後は他校との揉め事だった。途中、それさえもつまらなくなった隼人は一抜けたとやめたが、蒼は隼人よりも血の気がさかんな為、中々抜けようとしては見たが、本能には逆らえなかった。そして思いのほか多かったのは、なんと兄弟げんかだった。それは見ているものが引いてしまうほど凄まじいもので、周りの物の破損は免れる事なく、いつも親である沖田家が弁償していた。そしてその度、何度も担任がわざわざ家にと足を運んだ。
 何故わざわざ親が呼び出されるのではなく、教師が足を運ばなければならないのかと言う、その理由は、『新選組』だった。
あの頃よりも更に力を付けた新選組は、別に権力を振り回している風でもなかったが、教師ですら畏怖する存在だった。

けれど処罰には学校も厳しかった。おかげで停学回数で言えば、蒼はトップクラスだった。勿論隼人もトップクラスだったが、隼人に至っては成績もトップだったため、余計に教師の悩みの種だった。そして、今日は三年になってから初の停学……。双子はあっけらかんとしたものだったが、雅と寧々が二人を見る視線は凄まじいものだった。

「なな、何が原因? 喧嘩? 喧嘩なの? もうしないっていったのに喧嘩したの? それ以上考えられない!」
雅の言葉に、双子はただただ笑うだけだった。
「喧嘩……じゃねーよなァ?」
「あァ、違ぇな」
隼人の言葉に蒼はくつくつと笑いながらも答えた。
「じゃ、じゃ何?」
じれったそうに雅は双子を急かした。しかし首をふっただけで双子は訳を言おうとはしなかった。その後も突っ込んだが、その双子の口から答えが出される事はなく、その会話は終わってしまった。



納得のいかない雅は、蒼と隼人が姿を消した後でも、ずっとその場に残っていた。そして寧々もその場に居た。蒼と隼人はと言えば、校内放送で職員室に来なさいと呼び出されたため、仕方がないとその背を向けた。その際、その背中を心配そうに見送る寧々と雅に、一度だけ振り返り、心配するな、とまた背を向けたのだった……。


「何で喧嘩……したのかな。あっ……でも喧嘩じゃないって言ってましたね。でも、じゃァ、どうして……」
「て言うか、何で停学って聞いてあの双子はあんなに、しゃぁ、しゃぁとしてるの? 信じれない! 停学よ? 停学! 私だったら考えられない」
口ではそういいつつも、雅は心配でたまらないと言う顔をしている。

「ね、雅ちゃん……。雅ちゃんは誰に聞いたの?」
突然の寧々の言葉に、雅は、寧々と蒼のシーンを思い出したのか、急に慌てはじめた。
「そ、そういえば! 寧々ごめん! まさか保健室であんな事になってるなんて……。あっ、でも相手は蒼だし、私もちょっと考えれば分かったかもしれないのに、気がきかなくてっ……」

顔の前で両手を合わせ、雅はごめんと何度も言った。

「う、ううん。べ、別にそれはいいの。私もちょっぴり安心しちゃったし……。そ、それより、雅ちゃん! さっきの質問の続き。誰に聞いたの?」
寧々の再度の質問に、雅は参ったなァ、との表情をさせた。しかし自分も蒼と寧々のラブラブシーンを、悪意ではないにしろ覗いてしまったんだ。自分だけ言わないのは……。それに、唯一こんな話しが出来るのも寧々だけだと、寧々は重い口を恥ずかしそうに開いた……。
「あのね――。あの後……」





……To Be Continued…

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