act 11

「嫌な天気ね〜。」
寺の、長く続く階段を見上げながらお妙は口を開いた。
「天気なんてどうでもいいけど、この階段が嫌になってくるっス。」
お妙の横で、同じように階段を見上げながらまた子はゲッソリとした。長く長く連なる階段は、確かに見ているだけでもやる気をそいでいく。

しかし上がらないと先に進まない。
神楽はと言えば、いつもなら一番先になって愚痴をこぼしそうだが、今日は何故か大人しい。其処をまた子に突っ込まれた。
「神楽ちゃんは、登りきった後に誰かさんと約束があるんスよね〜。」
「んなァ!た、確かにそうだけどッ、別に楽しみになんかしてないアル!」
「誰もそんな事聞いてないっスよ〜?私はただ約束があるスよねって聞いただけっス。」
にや〜と笑うまた子は、可愛げもなにもない。しかしマンマとそれにノせられた神楽は顔を赤くし、頬を膨らませてしまった。その頬を面白そうにまた子がつっつく。そしてそんなまた子を、一応止めに入るお妙、そんなクダリをミツバは終始柔らかい笑みで見ていた。

長い長い階段を、半分ほどまで上った所、明らかに皆に疲れが見えてきた。特にミツバの消耗は激しく、一度階段に四人して尻をつき、休む事にした。
「ねェ…。今日は皆、ほら、あの…。高杉とか、トッシー、ゴリとかと一緒じゃなくてイイアルか?」
動物園で、まさかの置いてきぼりをくらった神楽は、何故今日は一緒にいるのか、けれど、やはり一緒に居られて楽しい…。そんな思いを含みながら言葉を出した。
その言葉を聞いたお妙達は、元々動物園の時は、神楽と沖田の様子を伺おうとしていただけ、との理由のもとでの放置だったため、一瞬微妙な面持ちをしたが、すぐに笑みを作った。

「あぁ、いいのいいの。彼との時間も大事だけど、友達の時間も大事だから。」
「そうそう。それにあんな連中と一緒になんか登れないッスよ。だって体力が有り余ってそうで恐いっスもん。きっと疲れなんか感じないんスよ。女の子同士の方が、ずっと気が楽だし、楽しいッス。」
ニシシとまた子が笑った。
「確かにそうよね。私きっと十四朗さんのスピードになんかついていけないわァ。休む事をしらなさそうだもの。」
ミツバが可愛らしく笑った。
「確かにそうアル。きっと沖田なんて、一人でさっさと登ってって、早くしろ!だの、遅いだの、文句ぶつぶつ言ってきそうアル。あ〜良かった。」

ケラケラと笑う声が重なった。笑いすぎで、そのまま空を見上げた。


「うぎゃ〜〜〜!!!」

また子と神楽の声が重なった。
「人を冷血漢みたいに言うじゃねーか。え?クソチャイナさんよォ。」
非道っぷりを全快に、神楽の顔を見おろしながら沖田が、その隣、目を細め、同じく冷めた目つきの高杉がまた子を…。となると、当然居るわけで…。
「と、十四朗さん!」
おっとりが特徴のミツバが一瞬焦った声をあげた。
「人を体力バカみたいに、言ってくれるじゃねーか。ミツバ。」
青筋を立てた土方、の隣に、そんな男じゃありません!と男泣きをする近藤…。
あわわと立ち上がった神楽達を、冷ややかな視線で見下ろす男子軍。
「ち、違うっスよ〜。ほら、たまには女の子同士で居たいって言うか…。ねェお妙さん?」
「そ、そうよ〜。昨日神楽ちゃんを一人にしちゃったし、今日は皆で居たいなァ…なんて。ねェ、ミツバちゃん?」
「え?えェ。そうなの。だから別に…。ね、神楽ちゃん。…神楽ちゃん?」


「雨…雨が降ってきたアル…。」

神楽の言葉の直後、パラパラと皆も雨を感じた。
お妙達が声をあげるその前に、その雨はあっと言う間にザーザーと振り出してきてしまったのだった。

……To Be Continued…

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