act 9

朝の登校の時には、まだ表情が明るかったが二時間目を終える頃、神楽の表情を見た高杉は、顔が真っ青になっているのに気づいた。休み時間になって、すぐに神楽の側に寄ってみたが、空笑いしてるのが分かった。神楽の状態が少々おかしいのは、また子から確認済みであって、遠めから様子を見ていたのだった。

土方と近藤は、特に何も聞いてなかったみたいだが、神楽の様子がおかしいと言うのは、少なからず感じてはいた。だが、本人が言わないのに聞くことも出来ず、ミツバ達にも話してない様だったので、そっとしている様だった。
高杉の目には、神楽が、隣の席に座っている沖田に、まるで何かを悟られたくないようにしてる不自然な感じも読み取れ、何気ない感じで、神楽を、購買で何かおごってやると呼び出した。

「お前変じゃねェ?」
イチゴ牛乳を飲んでいた神楽の喉が、不自然になったのを高杉が気づいた。
「べ、別に何でもないアル…。」
「何でもないって顔じゃーねーだろう。」
神楽の横で立って、何気なしに高杉は言ったが、神楽の行動を見逃すかと視線は神楽に注がれて居た。
背中に当たるコンクリートが、余計神楽の冷や汗を誘った。

確かに登校までは良かったのだ。あの時だけは、全てを忘れられた。けれどやっぱり不安があったのだ。逃げれば全員にばら撒くと言われたサイトのアドレス。恐かった。だからホームルームが始まる前にそと教室を抜け出した。使われていない備品室に逃げ込むように入ると、震える手であのサイトを開いた。

撮られて居たのだ…。二人の写真を…。

確かに顔は写っていない。けれど当然沖田の顔は知られてしまった。
文面には、今日は騎士(ナイト)が守ってくれていたみたいだと書かれていたが、諦めるつもりはないと…。
このまま逃げていれば、沖田自身に何か接触をしてくるかもしれない…そんな事、絶対耐えられない…。

「オイッ…オイッ…!!」
ハッと気づいた時には、目の前に高杉の顔があった。
「お前…大丈夫か…。」
呼吸は荒く、全身びっしょりになるほど汗が吹き出ていた。
「あ、あぁ…ごめん。大丈夫アル…。」
額に手をやり、ぐっしょりと濡れた汗を拭った。
高杉の目つきが鋭くなった。その片目で、神楽の全てを射抜く様に見つめた。
「話せ。お前に何が起こっているのか…今すぐ全部ぶちまけろ。」
手を強く握りしめたまま、神楽は口を開こうとはしない。
「沖田に知られたくない事なのか?」

思わず神楽は目を見開き、高杉を見てしまった。すぐにしまったと思ったが、後のまつりだった…。
視界が歪む、思ったら瞬く間に唇が震えた。あっと言う間にボロボロと涙が零れ落ちた。目の前で高杉は言葉を失っている。こんな顔見せられないと顔覆った。その手に高杉の手が重ねられた。
一体コイツは何を隠してやがる…。ひどく思ったが目の前の女は泣くばかり…。顔を見せろと手をかけたが、首を振られ、まるで触らないでとでも言う様に拒絶した。

「お願い…アル。アイツには…何も言わ…ないで…。」
そんな事出来るわけねーだろうが。本当は口から出ようとしたが、言えば神楽が壊れてしまいそうで言う事が出来なかった…。小刻みに肩は震え、小さな体は今にも崩れそうだ。一体何を隠してやがる…。高杉は思うが何も分からない。沖田に相談したかったが、それらしい事を言えば神楽がどうにかなってしまいそうでその道も絶たれてしまった。かと言ってまた子にいう気にはなれなかった。女同士の絆と言うものは深過ぎて、時に相手の事を考える余り、余計神楽を追い詰めてしまいそうだと危機感を感じた。

かと言って、今の神楽の状態を放置するわけにもいかない。確実に何かが起こっているのだ。知らないところで、こんなにも震えるほどの、【何か】が…。
「誰にも言わねー。沖田にも絶対いわねーよ。誓ってやらァ。だから俺だけには話してみろ。」
鼻をすすりながら神楽は首を横にふった。高杉は眉間に皺を寄せた。苛立ちさえ感じてきた…。

「何も…聞かないで…。お願い…アル…。」
苛立ちは増すばかりだ。助けてやりたい。でもそれを神楽自身が拒む。何故だ?。しかしどんなに考えても答えはでない。かと言って相談はできない…。いや、神楽に内緒で相談したらいいのではないか…。分からない所で内密に動く事が出来れば…。しかし駄目だと思う。そんなにポーカーフェイスが上手い奴が居ない。肝心の沖田には知らせるなという。高杉は頭の中でぐるぐると答えを探した…。だが、これしか言葉が出てこなかった。

「分かっ…た―――。」
高杉の言葉を聞いた神楽は涙でぐしゃぐしゃな顔をあげて、ありがとうと言った。
必死に涙を拭い、高杉の横をすり抜けていく…。歩いてるその背中は確かに助けてと叫んでいるのに、どうしてやることも出来ない…。爆発した感情は拳に集まっていくと、コンクリートの壁にそのまま打ち込まれた…。

……To Be Continued…

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