act 9

「まぁまぁ、神楽ちゃん、結果的には良かったって事で…。そんなにふくれないで欲しいッスよ。」

大広間、学年全員が女子と男子に別れ、席を連ねている。神楽の横にはまた子、神楽の前、そしてその横に連なる様に座っているのは、また子と同じように神楽を宥めているお妙とミツバの姿がある。神楽はデザートにと用意されたミニプリン四つをちらちらと見ながら、それでもそれが義務の様にプンと頬を膨らませている。

「だって、皆どっかいっちゃうし…。そりゃ結果はアレだったけど…。あたしすっごく心細かったアル!」
まだ食事は始まったばかりだと言うのに、神楽はペロっとそのプリンの一つのふたを開けた。スプーンで大きくすくったと思えばあっという間に口の中へと消えて行ってしまった。そのままかまわず二個目へと手を伸ばす。これも又あっという間に消えてなくなってしまった。

モグモグと口を動かしながら、先程膨らませていた頬は何処へやら消えていったらしい。ク〜とそのぷるんとした触感と濃厚な味わいを堪能してるらしい。また子達は楽しみにしていたデザートをふいにした甲斐があったと息をつく。
「いっとくけど…。まだ…あたしは…怒ってるアル…。」
口の中で三個目のプリンを堪能しながら言葉を出す。コレだけ食って何を今更と思いはしたが、其処はあえて口に出す事はなかった。
「ごめんねー。神楽ちゃん。でも楽しかったでしょ?」
お妙の柔らかい笑みに神楽はうっと口を噤んだ。
「な、なんで姉御達が知ってる、アルカ…。」
ミツバがちょっと俯いた。ちらりと男子の方を見てみると、今まさに土方が沖田の背に蹴りを入れてる所だった。しかし沖田も負けていない。ゆらりと立つと土方の方へ一直線、しかし今度はその背を高杉に一発はめられた。もう勘弁ならねーとでも言う様に掴みかかった沖田、それを食事中だからと止めるのは近藤だ。そしてこうなる事が分かっていた様に、クツクツと笑う銀八…。確かに土方や高杉の気持ちが分からんでもない。全くもって身に覚えない所か、それを静止しようとしたのにも関わらずとばっちりをうけた二人…。事務所に連れて行かれ説教されたのは言うまでもない。プッツンと糸が切れた二人は目を吊り上げ警備員に掴みかかった。それを止めるのは一緒に来た近藤達…。お妙と近藤が何とかイタズラなんですと状況を説明し、何とか帰されたものの、その時間には集合時間が来ており、結局本当に何をしに来たのか分からないと言う結末で幕を閉じたのだ…。


【―――この恨み、はらさでおくべきか―――】

高杉と土方の瞳は漆黒に燃えたのだった…。

旅館の仲居がヒィィなどとお膳を避ける。沖田、土方、高杉…。この面子を一人で対処するのは明らかに分が悪い。かと言えど、他のクラスの先生は見てみぬフリをしている。銀八はといえば、今も変わらず笑っているだけだ。しかし仲居の破壊すれば、物損が請じるとの声を聞き、急いでその輪の中へと入った。
そんな光景をまた子は遠い目をしながら見た後、お妙やミツバを含め、さも自分達は何も見ていないとでも言う様に、「さ、頂きましょうか。」と微笑んだ。

普段お目にかかることのない贅沢な料理の数々に神楽は文句のつけようがない。途中からはもう上機嫌で食器の中身を食いつくし、これから風呂だと言うにも関わらず牛の様にゴロンと寝転がっていた。
「もう、神楽ちゃんたら、女の子なんだからはしたない格好しちゃ駄目よ。」
お妙は言うが、そんな事お構いなしだと言う様に、神楽はお腹をすりすりとお膳をそのままに大の字になっている。
「パンツ見えてるッスよ。」
また子は目を細め神楽に言う。マジでカとすぐに足をたたみ、起き上がる。くすくすとミツバが笑うと、隣でまた子が「冗談ッス。」とイタズラに笑った。


ふりだしに戻った神楽のふくれっつらだったが、大浴場に行く前、ばったりと会ってしまったその男に思わずつぶされてしまった…。

「何でィ。お前も今から風呂かよ。」
「そそそうアル。てか、あたしのナイスバデーを覗かないで欲しいアル。」
ツンとそっぽを向いていても、頬の発色はとても心に忠実だった。
「どの口が言うんだその台詞。ちったァ自分の体を見てみろィ。陥没―――。」
沖田の顔に着替えを詰め込んだバックがめり込んだ。悶絶しながらしゃがみこむ。
「な、何しやがるこのクソ女…。俺の顔が変形したらどうしてくれんでィ。」
「いっそ整形してやってもイイアル。」
沖田を目を細め見下ろす。ヒューと冷たい風が辺りを包んだ。しかし次の第一声でその模った場面はパリンとひび割れ、ガシャンと床に落ちて散り散りになり儚く風に吹かれた…。
「つーかオメー気合入ってんなァ。」
へッ!?
視線が其処に集中的に集まった。
「それともいっつもこんなのしてんのかよ。」
そう言いながら、神楽の下着をブラブラと揺らす。Bカップのそれは高杉の手に揺らされ周囲の目にさらされている。きゃぁ…!神楽が言うはずだった言葉が出てこない。立ち尽くしたまま石化と化している。それも束の間、ヒューと風に吹かれたと思えばサラサラと形状が崩れていった。

「ちょぉ!何て事してるんスカ!」
神楽の代わりにまた子が突っ込んだ。高杉の手からソレを取ろうと必死になるが高杉はくっと笑い取らせてくれないらしい。お妙とミツバが思わず口をあけようとしたその時だった。沖田が俊敏にソレを高杉の手から奪い、ミツバの方へと投げたのは…。

冷ややかな目で高杉の胸倉を掴んだ。うっすらと笑っているが、本気にも取れる。囁く様にと口を開く。
「オイ、此処で殺し合いでもしてみるか?ア?」
「それも楽しそうだがとりあえず止めとくぜ?つーか後が煩いんでなァ。」
そういうと、高杉はまた子の方を見た。なるほど、まるで猪の様に鼻息荒く憤慨している。いくら彼氏でも、いくら神楽が振り回して落ちたと言う半分事故が原因の事であっても、それはからかい過ぎだと…。
高杉は沖田の手を振り払うと、昼間のお返しだと言う様に手をヒラヒラと大浴場へと消えていった。その後ろを土方がヤレヤレとでも言う様に、その横をため息をつきながら近藤が…。

「オイ…。オイ…!。クソ女…。」
頬をつねって沖田がゆさぶりをかける。しだいに神楽は元の形状に戻った。しかし目の前にある顔が沖田であると認識するなり、また固まった。
「明日は駄目だ。別のにしろィ。」
頭にクエッションマークを浮かべた神楽をそのままに、沖田は踵を返した。沖田の言った意味が分からないまま、神楽はその場に立ち尽くした。しかし、沖田の【やっぱりな態度】を垣間見たお妙たちは、実の所嬉しかったりもしたのだった。

……To Be Continued…

作品TOPに戻る







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -