act 6

甘い、キャラメルをコーティングされたものと、絶妙な塩加減でコーティングされたポップコーンが舌の上でコロコロと踊る。甘いと思えば塩加減で舌を絡められ、かと思えば極上のキャラメルを口内で埋め尽くされ…。

ちらりと横を見てみれば、およそ15cm差の所にあるのは沖田総悟の顔。目が合うと、不敵な笑みを見せた。わっと神楽は掌いっぱいにポップコーンを取り小さい口の中に詰め込んだ。

「喉詰めるぜ?」
ふっと笑いながら言う、沖田の言葉の直後、案の定咽た神楽だったが、ほらよと差し出されたMサイズのサイダーをごくごくと喉に流し込んだ。ぷちぷちと口の中で弾ける炭酸が目を回した。
「お、お前が…。」
左手で抱え込むように二種類のポップコーンと、右手で今貰ったサイダーをもち唸るように言葉を発したが、その先の言葉が思うように出てこず、結局サイダーと、元々沖田の物だった塩味のポップコーンを沖田に突きつけた。
「何でェ。折角機嫌取りに買ってやったのに、もういらねーのか?」
「べ、別にいらないって訳じゃ…。大体、何でお前と一緒に行動してるアルカ?」
口を尖らして言葉を出した後、しまったと神楽は思った。これでは自分が意識してるのがバレバレじゃないかと。

あの後、神楽が足を急がせたが、中々沖田だと言う動物が見つからない。大体にして、自分はこの沖田総悟に対して、どんなイメージを持っているんだと、改めて神楽は考える様に、後ろから当然の様についてきた沖田を見てみるが、見れば見るほど整ったその顔に、沖田をギャフンと言わせるほどの動物が見当たらない。さしずめ、獲物を狙うその瞳は凛々しくもある豹の様にも思えたが、そんな事、死んでも言ってやるものかと頬を膨らませた。

そんな自分の横を何時の間にか当然の様に歩き、当たり前の様に小腹が空いたなどと言いながら、自分にも餌を与えてくれた。こうなれば大人しくなるしかないじゃないかと何とも言いがたい心境に見舞われたが、正直嫌じゃない。むしろ今のこの状況を嬉しかったりすると思っていた。

一度嬉しくなってしまうと、沖田のどんなしぐさも、どんな態度も許せてしまう自分に怒りたかったが、其処はあえて自嘲していた。今までは…。

「別に、ただお前が置いてきぼりをくらってたんでな。」
「そ、そんなんお前も同じアル。」
「だから別にいいだろィ?同じ置いてきぼり組ってー事で。」
「むぅ…。別に嫌とは…言ってないアル…。」

ごにょごにょと最後誤魔化したが、それはちゃんと沖田の耳には聞こえていて、しかし本人が知られたくなさそうなのと、此処でまたナンだカンだとちゃちゃを挟めば、今度こそ本当に頭からシューシューと音を出しそうなので、そのまま聞こえないフリを沖田は決め込んだ。

「あっ…あっちでアザラシの餌やりが出来るアル!」
照れくささを隠す様に神楽は指を指した。足先を進めるや否や、神楽は小さな手を差し出した。
「なんでィ、この手は。」
呆れる様な沖田を気にする風を微塵も感じさせず、そして先ほどの可愛らしい乙女心はどこが散ってしまったかの様に、その空色をキラキラとさせながら「お金ないアル!」と満面の笑みで言い切った。

「ったく…。何で俺が何からなにまで…。」
そうぶつぶつと言いながらも尻ポケットから二つ折り財布を取り出し千円札を取り出し、神楽の手に渡してやった。キャッホーイと声をあげながら出てきた餌を取り、アザラシの元にへと足を駆け出した。

見てみれば他の生徒も何組か餌やりを楽しんでいる。どうやらこのアザラシの餌やりはいわゆるこの動物園の見せ場的なものであるらしく、プラスチック張りの柵の下に餌でやる魚を置いてやると、下からアザラシがジャンプをして魚を咥えていった。一瞬驚いた神楽だったが、たちまちその表情は興奮に包まれ、沖田のの服をぐんぐんと引っ張り歓喜を表した。穏やかな表情で神楽を見ていた沖田だったが、何度もジャンプするアザラシに、自然と制服や髪を濡らされ笑顔が出てきた。

「ちょっぅ!びしょ濡れになっちゃったアル!」
前髪から垂れてきた雫を額で拭い神楽は笑った。
同じく髪からヒタヒタと落ちてくる雫を頭をぶんぶんと振りながら沖田はつられる様に笑った。

「やばいアル!ごっさ楽しいネ!」
次行こう、次!と思わず神楽は沖田の手を引いた。ぎょっとしつつ、その手に視線を落とした沖田に気付き、神楽はあっ…。と手を離そうとしたが、その手を沖田がぐっと掴んだ。

「次行くんだろう。テメーが迷子になんねー様に、握っててやらァ。」
くっと笑いながら、正気に戻り恥ずかしさを表にだしている神楽の手をやんわりと引き、足を進めた…。





……To Be Continued…

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