act 25


夏場の一番暑い時期を越え、まだまだ暑くはあるが、たまに吹く風が秋の香をほんの少しだけ含ませはじめた。
そんな中、事務所の前に車が止まったかと思うと、そこからひょっこりと沖田と高杉が頭を出した。車内から外に出ると一気に蒸し暑い風が纏わり付いたのか、額の汗を拭いながら事務所の中へと入ってきた。

「あ〜。この暑さ何とかなんねーの?」
沖田の声に、近藤がおかえりと口を開こうとしたが、その前にミツバが口を開いた。
「お帰りなさい。二人とも。」

ミツバはたった今用意した麦茶二つを沖田と高杉に手渡した。ありがとうと簡単に礼をいった後、沖田はミツバにアイツは?と聞くと、ミツバは軽く笑って、例の部屋を指差した。沖田がそちらに足を向けると同時、高杉は部屋を見渡したが、また子の姿もなかった。お妙はといえば、近藤の側でなにやらやっている。てことはと沖田の背に続くようにガチャリとその部屋をあけると、案の定、干からびた魚の用にぐったりと横たわる神楽とまた子の姿があった。

「オイオイ、真っ青じゃねーか。」
「ぎぼちわるい〜。」

沖田の声に神楽と、隣で同じように寝転がっているまた子も声を揃えた。高杉はまた子の側に息を吐きながら腰を下ろした。そっと髪を触ってやると、にへらとまた子が笑った。沖田も其処へ腰を下ろし胡坐をかいた。
「仕事はァ…?」
「とりあえず今日のは片がついた。」
「そうアルカ。」

安心した様な表情を浮かべると沖田の手にすりすりと頬を寄せた。そして這うように沖田の膝の上に頭を乗せ、「楽ちんアル。」と微笑んだ。ずるいと一言、また子は負け時と高杉の膝の上に頭を乗せたところでお妙とミツバが麦茶を二人に持ってきた。あらあらと微笑みながら神楽とまた子にそっと渡してやると、ゆっくりと体を起してコクンと飲んだ。気持ちが幾分楽になったと神楽とまた子は礼を言った。

一枚の布団に二人と考えて、二組の布団とソファ。この際だと買った液晶テレビ…。至れり尽くせりのこの部屋は、全て近藤を含め、彼らが揃えてくれたモノだった。初めて事務所を見せた時の彼女達の表情は近藤達に、買って良かったと心から思わす事が出来た。

一人家でつわりと苦しむよりも、皆が居たほうが安心だろうと毎日此処に通う様にしてみると、やはり不安からくるモノでもあったらしく、一日中苦しさに見舞われると言う状況から、時々気持ち悪くなる、程度に治まりつつあった。とは言えど、今回みたく急にくる場合もあり、まだまだ一概にはなんとも言えないが…。


日によって誰がどれだけ気持ちが悪くなるかが全く違うため、この部屋は色んな意味で役割を果たしていた。心配の種が自分の側にあると言うだけで仕事の身の入り方も異なった上、誰かが必ず事務所に居るので、神楽達からしてみても、とても心強いものだと言えた。

そしてそんな合間、彼女達は少しずつ、沖田達の仕事の手伝いをする様になった。初めは、ただのお茶くみ。これについては神楽とまた子は得意分野だった。気分がいい時にデータ入力など、事細かく教わるようになっており、誰をとっても、こんなにいい職場?はないと言えた。

「そういえば、冷蔵庫にゼリーを買いだめしておいたんだが、食べれるなら――。」
近藤の声にまた子と神楽は、ゼリーなら食べられると挙手をした。そうかと笑った近藤がまもなく持ってくると、丁度3時だと土方も入って来た。お妙がスプーンを神楽に渡すと思わず神楽が笑った。

そのまま、また子の方を向くとまた子も笑みを漏らした。沖田と高杉は頭にクエッションマークを浮かべた。そのまま神楽とまた子が笑っているとその笑いの意味を理解したのかミツバとお妙もくすくすと笑い声を漏らした。

「オイオイ。何を笑ってるんだ。ちっとも分からないじゃないか。なァ、トシ。」
近藤の言葉に土方は考えるのも面倒くさいと言う面持ちだ。どうせくだらない事だろう?土方の顔に書いてある。

くすくすと笑う神楽の口から、ゆっくりとそれは零れた…。
「―――だって…。だってネ。幸せアル。」
そう言った後、すぐにまたくすくすと笑う神楽達に、思わず男は絶句したが、何故だかこそばゆさに見舞われ、それぞれが頬を掻いた…。





……To Be Continued…

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