act 5

駅から徒歩10分の所にあるのは、まず最初の観光名所京都動物園だった。
神楽の隣にはまた子。その反対側にはお妙、そして神楽の前を歩くのはミツバ。しかしそのどの手にも男の手は繋がれていて…。

自身の手はといえば冬の冷たい風に晒されている。神楽はため息を付きながら自分の斜め前、ミツバの隣にいる沖田総悟を唇をきゅっとむすびながら見つめた。

ほんのさっきまで繋がれていた温かい人の温度は簡単に離され、そしてそこから今まで、ろくな会話さえしていない。あの突発的な出来事は夢、幻だったのかと思わず疑いたくなった。

園内に入るとまた子やお妙は薄情にも彼氏とイチャコラし始めた。こうなったらミツバだと思ってみるが、あの弱気なミツバまでもが土方にピタリとくっついてあれみたい…。などと甘えているではないか。神楽はあんぐりと口をあけ、散り散りになっていく自分の周りを虚しく見つめた。そんなキョロキョロとしているその背中に声がかかった。

「オイ、そこの寂しい女。」
振り返るといなや、神楽は思わず心臓を跳ね上げらせた。濁った木賊色のコートを羽織っている沖田が自分を見ていたのだ。しかし気持ちを見透かされてはなるモノかと憎まれ口を神楽はたたく為に口を開いた。

「あっ…おま―――。」
が、口は言う事を聞いてくれなかった。
沖田は一直線神楽の元へとやってくる。息を思わず吸い込んだ。ちょうど吐こうとした時に、沖田が自分の目の前でピタリと止まった。あまりの緊張でぎゃくに沖田を凝視してしまう。瞬きさえままならない自分が腹立たしくもあるが、この体の中心で音を刻んでいるのは紛れもなく自分自身である事もちゃんと分かっているので、諦めた。

「あっちにお前が居るぜ?」
「へっ?ど、何処アルか?」
吐いた息と共にでてきたまぬけな声。にやりと笑った沖田の親指の先にある場所に、沖田の背を追いかけるように神楽はついて行った。分かっているが此処には沖田の他には誰もいないわけで、傍から見ると、自分達も【そういう風】に見られているのかも…。なんて事を考えていた神楽の前で歩く沖田の足が止まった。危うくぶつかりそうになった神楽は、ぶつかっていないが、結局暴言を吐いた。しかしそんな事をみじんも気にしない風で沖田はコレ、とその檻を指差した。

直後、平手が飛んだ。

「痛ってーな!お前のそういうトコがそっくりなんでェ!」
頬をすりすりとさすりながら沖田は言った。神楽は目を吊り上げ頭からしゅーしゅーと湯気を出した。

「何処がアル!ちゃんと看板にマウンテンゴリラって書いてあるダロ!」
「よく見てみろ!ちゃぁんとチャイナって書いてあるじゃねーか!」
もう勘弁ならんこの男と神楽はふるふると震えた。
「おっ…まえ!絶対許さないアル!」
神楽は園内をキョロキョロとし始めるとその足を出した。沖田に一泡ふかしてやろうと突き進む神楽の背中をふっと沖田は笑いながら追いかけた。


……To Be Continued…

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