act 6


普通、これって逆アル――。

精神的なモノからくる気分の悪さを、一瞬、沖田の行動が吹っ飛ばした。ピタリとくっつけられた耳元には制服の感触、驚きのあまり上なんて見上げることが出来ないけれど、確かにその男の手は自分の肩を掴んでいる。

車内に人が少ないとは言えど、まだまだ他の学校の生徒、そして銀魂高校の生徒、そして一般人が乗っていて…。好奇の目でコチラをみられているその空気になんとも言えない気持ちが混ざり、少なくとも現在は脳天を揺さぶられるようなあの感覚は襲ってこなくなった。

精神恐怖を一気に吹っ飛ばした神楽とは裏腹に、こんな自分らしくない行動をとってしまった沖田は、今更、なんでこんな事をしてしまった感に捕われていた。しかし後悔はしていない。下を見下ろすと耳のふちが赤くなってはいるが少なくとも、あの真っ青な顔色は何処かに吹っ飛んでいってしまったようだと安心をしていた。

けれども少々その神楽を見る好奇の視線が面白くない。初めはこんな所でイチャコラしている風にみえてる為かと、ならば今は致し方ないと思ってはいたが、どうやら少なくとも男の視線は別の所にあるらしかった。

座った状態で膝枕をして居るため、真っ白な太股の面積が広がっている。其処に集中している視線に沖田が気付くやいなや、自分の制服を脱いだ。すると何も言わず無言で神楽の小さな体を包んだ。

その時神楽がはじめて顔をあげ沖田の方を見た。先ほどから会話がない自分達だが、お互い普段では考えられないようなこの状況に照れつつもあり、しかし反面では早く唄われる恋唄に耳を澄ませていたいと感じていた。もぞもぞと制服の中で神楽が動く、沖田の制服をきゅうっと掴むようにすると、少しでもこの気持ちが悪くなる催眠剤を投入されたような匂いから逃げたいとその匂いを吸い込んだ

「沖田の匂いがするアル…。」
ぼそりと口から出された言葉に、沖田は一時唖然となった。
そんな沖田をそのままに神楽は素直に言葉を漏らした。
「いい匂い。すっごく安心するアル…。」


それは神楽の本心であって、しかしこんな事を言うようなキャラじゃない事も確かで…。困惑ぎみの沖田だったが、沖田の制服の中に埋もれる神楽を見ると、ふっと表情が穏やかになった。
「そうかよ、そりゃ良かったな。」
コクンと頷くと、悪夢の様な世界に足を踏み入れた自分の中の、唯一の場所を手に入れたように、その瞳をゆっくりと閉じた…。



……To Be Continued…

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