act 3

「露出狂かテメーは。」
隣の神楽を横目で睨み、冷たく言い放った。
神楽は口を尖らせ足をぶらんぶらんと椅子の上で揺らした。

「そんな事いわないの。神楽ちゃんがそんな女の子じゃないって分かってるでしょ。」
優しいミツバの言葉を鼻で笑い沖田は再び口を開いた。
「はン。どうだかな。露出狂じゃなかったら、頭の脳みそがカラッポなくるくるパァでさァ。」

神楽は通路側をフイと向いたまま新八から貰ったお菓子を黙々と食べている。
空気を和ませようとした新八の心使いだったが、どうやらありがた迷惑な行為へと変化してしまった様で、神楽の座席の裏側で思わずため息を付いていた。

「ね、神楽ちゃん、私にもお菓子ひとつ頂戴。」
空気を和ませようとしているのは、何も新八だけではない。神楽の目の前に座っているミツバもだった。

隣で土方をほっとけよと言っているが、ミツバはその言葉を聞いていない様に神楽に話をかけた。

神楽はおずおずと袋の中をミツバに見せた。「あら、おいしそうね。」
そう柔らかく笑うミツバを見た神楽は、つられて笑った。「どれ食べるアルカ?」「どれにしようかしら…。」楽しそうに会話をする二人をまたもや沖田の一声が遮った。

「太るならテメー、一人にしろや。姉ちゃんを巻き込むな。」
俯く神楽の顔。ちょっとやりすぎてしまったかの沖田の表情。アホらしーと窓の景色を見始めた土方、困った様に
沖田を見るミツバ。

シーンと流れたのは一瞬。すぐに、火山の噴火10秒前のカウントダウンがゴゴゴ…と言う地鳴りを引きつれ、神楽から鳴り響いた。思わず土方がまずそうに神楽を見る。ゆらりと立った神楽がまるで、かの有名なリ〇グに出てくるホラーヒロインばりの動きでゆらりと沖田の前に立った。

「な、なんでェ。」
行った直後、その車両に、景気よい平手打ちの音が響いた。

「もういいアル!誰がお前の隣なんかに座るかヨ!バーカ!死ネアル!」
目尻に、涙をぶら下げて、神楽は沖田に背を向け、銀八のもとへと去っていった。

「だからテメーはガキだっつーんだ。」
土方がため息交じりに頬を撫でている沖田につぶやくと、わざとらしく沖田はその視線を逸らした。

「駄目じゃないの。総ちゃんたら。神楽ちゃんにあやまんなきゃ駄目よ。」
包み込むようなミツバの声が沖田を叱った。
「あんな女居なくなってせーせーすらァ。」
態度を改めない沖田に、ミツバは息を吐き、知らないから…。と呟いた…。

.......

少し後ろの座席の方で、今度は銀八合戦が始まっているようだった。
「其処を退くアル。銀ちゃんの隣はあたしアル。」
「何言ってるの?私のためだけにこの席はあるのよ!あなたはさっさと自分の席に付きなさいよ。」

「たった今、あたしの席は此処になったアル。って事でお前退くアル。」
「だから先生の隣はあたしだって言ってるじゃないの!」

神楽と同じ眼鏡ヒロインであるさっちゃんこと、猿飛あやめと銀八の席の隣の取りあいをしており、その隣の銀八はといえば、面倒くさそうに鼻をほじっていた。
「ふん!じゃあ私の席は此処アル!」
そう言うと神楽は銀八の太股の上に横座りし、銀八の首に手をまきつけ、あやめにべーと舌をだしていた。

「つーか、銀さん重いんですけど…。」
やる気のない声で銀八は言う。わなわなとあやめは震え、其処を退きなさいよと神楽に手をかけた。しかし神楽はぎゅうっと銀八を抱き締めたままふふんと動く様子がなく…。


「自業自得だな。」
土方はくっと鼻で笑い沖田を見た。
ミツバはその隣で、「十四朗さんも、そんな事いわないの。」と叱るが、全く効果は見込めなかった。

下りろ下りないとの絡まる声を始め聞こえない振りをしていたが、沖田の座っている位置から、時々、神楽の髪がふわりふわりと浮くのが見えた。

舌をならしたかと思うと、沖田は立ち上がった。
鼻で笑ったのは、目の前に居る土方、それに高杉、近藤…。
「…便所にいくだけでェ。」

そう言いながら、わざわざ、近い方の入り口の【トイレ】ではなく、銀八の方にある方の入り口の【トイレ】へと足を向けた沖田だった…。



……To Be Continued…

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