act 22

「ありがとうございました。」
そう言いながらこちら側に背中をむけ、中の医師にお礼をすると、一度、肩で息をついて、振り返った。

神楽が出てくると同時待合の椅子から腰をあげたまた子らは神楽を囲むように側に寄り口を開いた。

「大丈夫?!大丈夫なの?」
お妙の言葉に、神楽はゆっくりと頷いた。
「横っ腹に青痣が出来てたって。今度からは気をつけてって言われたアル。」
神楽の言葉が終わらないうちに、また子は自分達の背の後ろにいる男の中の一人、沖田を目を細め見た。

その視線は一瞬交わすか交さないかで沖田はバツが悪そうに、項を掻いた。
とわ言え、多少女の方にも罪悪感はある訳であって…。
ここは、近藤の出番だった。

「と、とにかく此処じゃなんだから――。」
「し、仕事…。仕事あるんデショ…。」
神楽の一言。
視線は相変わらず沖田とあわそうとしない。今気付いた様に男はハッとし、腕にある時計に目をやり、思わず顔を見合わせた。

遊びじゃない…。彼らがいつも心の真ん中に置いている言葉だった。しかし目の前の女、よりによって全員がそれぞれの男の子を身ごもっている。
誰の代わりも出来ない。

そんな中、一番に声をあげたのは、とりあえず今の渦中の人物である沖田が真っ先に口を開いた。
「仕事の方は、先方と連絡をとって明日にしてもらう。とりあえず話が先だ。」
神楽は下唇を噛んだ。

ぐちゃぐちゃになった心は、まだちっとも改善されてない。それどころか、渦にぐるぐると巻き込まれたように自分が何を考え、何を感じているのかが分からなくなっていた。

昨日までは、ほんのちょっと沖田の喜ぶ顔を想像した自分がいた。はにかむ沖田の顔を想像して嬉しかった。

何って言おう。パパになったんダヨ。実はベビーが出来たネ。お腹の中に総悟の赤ちゃんが生きてるんだヨ。色んな台詞を考えた。そんな台詞が散り散りに散ってしまい。あとの残されたのは、唾を飲み込むいやにリアルな喉の音と、逃げる算段。しっかりしして、母親になるんだから…。

何処からか声が聞こえた気がした。
沖田の言葉に一度目をゆっくり瞑った。鼻からすぅっと息を吸い込んだ。
吐き出す息と共に、肝が据わった。

「分かったアル。此処からだと高杉の家が一番近いアル。其処で話をするアル。」
沖田を真っ直ぐ見たその視線は、何も迷いが無く、透き通った空色をしていた…。



……To Be Continued…

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