act 3

崩れるように、もつれるように、それでも降りた駅…。
冷たい汗は額から、背中から、じわじわと神楽を追い詰めた。

降りた先、その足を一歩進める勇気も、気力も、精神力もなく、ただただ、自分の体をぎゅっと抱き締めた。

交差された両手は、両腕にその綺麗に手入れされた爪を食いこませた。歪んだ顔からは、感情の喪失が簡単に読み取れ、その小さな唇はわなわなと震えた。悲しく、辛く、現実逃避したいと体が泣き叫ぶが、ショックが大きすぎるあまり、涙さえ出てきてくれなかった。

神楽は唇の震えを止めようと、唇を掴んでみたが、全くその震えはおさまらない。
立ち尽くす神楽の後ろから、同じように降りた人の波が背中を打った。前に突き動かされた様にガクガクと震える足をだした。

思わず転びそうになった。
足には力がはいらず、下着の中はぬるぬるしており、気持ちが悪い。
太股に流れる、陵辱のつめ跡が生々しく神楽を現実へと引き戻した。

その前かがみに倒れる神楽の体、その腕を引かれた。

「ヤァァァァ!!」

力の限り手を振り払った神楽を、唖然と見ているのは、一緒に乗っていた、沖田だった。

立つ事を拒否した神楽の体は、電車の発進された駅の真ん中で意図も簡単に崩れた。
「お、オイ…。どうしたんでェ…。」
本気で心配する沖田の下で、大きく息を吸って、吐いてを俯きながら繰り返す神楽がいた。口を両手で覆い、肩を強く上下させながら、体がぶるぶると震えている。思わずしゃがみこんだ。

覗き込むと、顔が真っ青になっている。
「ど…、どうしたん――。」
「な、何でもないアル。ただお前がいきなり脅かすから…。うん、そう。」
「何言ってやがる。別に俺は脅かしてなんかねーだろうが。オメーが転びそうになったから腕を持っただけ…。つーか何でェ、その汗。どうかしたのかよ。」
沖田は神楽の顎に手をかけ、その顔を真正面から真っ直ぐみた。
血の気がない。

「だ、大丈夫アル。あまりに驚いて、腰ぬかした、ダケヨ。」
神楽は手のヒラで顔にびっしょりと掻いた汗を拭った。
「だ、だから先に行っていいアル。」

行ってと手をひらひらとさせてみる。しかしそれを無視し、神楽の腕をもう一度、引いた。やんわりと。
「立てるか?」

立とうとすると、太ももがベタつき、更には下着の中の感触が神楽の顔を歪ませた。カクンと膝が折れたと同時、沖田が神楽の体を抱き、支えた。先ほど悲鳴をあげた自分だが、相手が沖田と分かると、ひどく安心した。自分の顔の近くに沖田の顔があって、その息は自分にかかる。が、ちっとも嫌じゃない。

あの男とは、違う…。

一歩足を出そうとするともつれる自分の足が憎たらしい。その体を沖田はぎゅっと支え、足を出した。
「お前―――。」
沖田の声が低く、神楽の耳に響いた。神楽の体が硬くなったのが、沖田にも伝わった。しかし…。
「まさかだよな…。つーかオメーだし。投げ飛ばされるっつーの。」

けらけらと笑い、気をそらすように「つーか、オメーびびって腰ぬかすたァ、案外ヘタレだな。」と笑った…。




……To Be Continued…

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