(今回の小説は、前半神楽の壮絶な悪夢、後半、
前半の悪夢を吹っ飛ばす甘さにしたてあげていきます。)



act 1


―――7時半、いつもその電車に乗って、私は学校に行く―――。


「ふぅ〜ギリギリ乗れたアル!!良かったヨぅ。」
家を出たときには、完全に乗り遅れると覚悟したが、神楽の足は以外に頑張りを見せて、駅のホームを一直線に走り、定期を一瞬見せ、半ば強引とは言え、電車に乗り込む事が出来た。

炊飯器を片手に…などと言う荒業は見せなかったが、風に揺らせ、せっかく二つにまとめたお団子頭はボサボサ。
制服のスカートは捲れチャームポイントのビン底眼鏡は上下させた体から吐かれた息によって曇っている。神楽はそれを制服で吹くと、ついでに捲れているスカートも直した。

電車はそんなに混んでない。確かに座席の部分は満席だが、つり革には十分掴む場所があった。が、神楽はいつもつり革を持つ事はなかった。理由は単に背が届かないと言う点だったが…。

なので、いつも入ったすぐ側にある、座席部分にある銀色の手すりを掴んでいた。

横目でちらりと見れば、いつものふざけたアイマスクをしているサドヤローこと、沖田総悟が向かい側少し離れた所で座って寝ていた。

二駅前から乗ってくる沖田は、毎日座る席が、まだ空いて居たおかげで、いつも今みたくに座席に座って、学校までの短時間だが爆睡している。恨めしい視線を送ってみるが、テレパシーなどと言うものが使える訳もなく、何も状況は変わらなかった。

空いていた車内も、各駅に止まるごとにその人数はどんどんと増えていった。少し離れている沖田をちらりとみる。

ゆうゆうと寝ているその姿を目にすると、理不尽だが、其処を退いて自分に譲れと言う思いが強くなった。だが、その熱烈な視線に沖田は気付かないまま、神楽は人に揉まれた。いつの間にか手から手すりは離れ、人の波に揉まれ、奥に押しやられた。

沖田とは、席が近いと言う訳でも別になかったが、只の喧嘩友達と言うわけでもなかった。
穂のかな淡い恋心…。今の時代には珍しい言葉だったが、自分の気持ちを口には出せずに、それでも密かに思い続けている神楽には、ぴったりの言葉だった。

神楽が沖田に話をかけようとすると、素直じゃない面が目立ってしまい、どうしても喧嘩越しになってしまう。
しかしそこは少し大人の沖田が上手くフォローが出来ていた。さすがフォロ方と呼ばれる男といつも一緒に居るだけの事はあった。
神楽の本心が分かった上で、その日の気分に寄って、喧嘩を盛大に高く買ったり、甘やかして神楽の反応を楽しんだりしていた。

だからと言って、恋人同士と言う訳ではなかった。決定的な言葉を、どちらもが言わなかったからだった。
沖田の事が好きだと言う事を本人にバレていると知らない神楽と、自分の事を好きで居てくれているのは殆ど分かっているが、どうしても最後の一押しがまだ出来ない沖田…。
焦れったく思ってるのはクラスメイトだけではなく、担任の銀八もだった。

早く、くっつけばいいのに…。
皆がそう思った。沖田が他クラスの子に呼ばれて行くたびに、神楽は頬を膨らまして、見えないように机につっぷした。神楽が他クラスの子に呼ばれたとモンならば、そこら辺の机や文房具は粉々に散った。

だからこそ銀八は早く、くっついちまえと言っていると言っても過言ではない。堂々と彼女だ、彼氏だと言えれる関係ならば、何も問題はないじゃないかと。しかし物事、しかも男女の間と言うものは、そんなに簡単に事が進むわけもなく、そして答えが出るはずもなく…。

だから、ほんの少し、背中を押してやろうと思ったお妙は、神楽に告白を提案したのだ。
それはもう強烈に押した。なんせ告白の答えは出てるも同然なのだから…。

神楽はまだうじうじと悩んでいたが、しぶしぶOKをした。「じゃぁ、明日、朝ね。」
お妙の言葉に神楽は頷いた。

明日ね…。それが、悪夢の始まりだった…。



……To Be Continued…

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