act 21

「あれ、お前ら…。来るなんて珍しいじゃねーか。つーか体調はもういいのかよ。」
先陣きったのは沖田の声。今の今まで一大決心をしていたはずなのに、どうにも声が出ない。神楽とまた子は急いで鞄を拾った。ソファの上から腰をあげ、デスクを通り、こちら側へとやってくる。

土方は、ごく自然にミツバの頬にふれ、「大丈夫か?」とミツバにしか見せる事のない表情を見せたが、思わずミツバは作り笑顔になってしまった。
沖田は、神楽のおでこに手をやり、「熱はねーみたいだな。」と安堵の表情をみせた。

神楽とまた子は、視線を不自然にキョロキョロとする。
「どうかしたのか?何か用があって来たんじゃねーの?」
高杉の言葉に、あからさまに体をビクつかせた。自然に視線は俯きかげんになる。
「な、なんでもないアル!」

思わず口から出た言葉に、お妙はえっと、目を丸くし神楽の方を見た。隣のまた子はといえば、神楽の台詞に同意権なのか、何も言わない。土方はミツバを見た。ミツバは別の意味で限界だった。きゅっと土方の服を掴んだまま土方を見上げた。

勘のいい土方だ。そのしぐさだけで何かあるとふんだらしく、ミツバを外へと誘った。それにミツバはついていく。

そのミツバの服を神楽は掴んだ。ミツバは俯く神楽の顔を振り向き、困った表情をさせた。神楽は俯き、首を振る。その神楽の肩を今度は沖田が掴むと、やんわりと神楽が掴んでいるミツバの服を外させた。

また子はその感ずっと高杉に睨まれている。もはや、何か話しがある事は全員が気付いているようだった。

まるで蛇に睨まれている蛙のように、きゅぅとまた子は小さくなり、目を逸らす。その肩に手をやられ、顎を持たれ、無理やり視線を合わされた高杉の顔は、口元をあげ、笑っていた。まるで観念しろと言っているように…。

「神楽、何か用があって来たんだろ?とりあえず向こうに座れ。」
そう沖田はソファに親指を向けた。

何が、恐いのか、何がいやなのか、神楽自身訳が分からなくなっている。

神楽はまるで、母親に怒られた頑固な子供のように、その場から動かない。沖田は一度長くため息を付いた。それでも神楽は動く様子はない。舌を鳴らし、神楽の腕を引いた。神楽は前のめりにつんどめったが、何とかそれを持ちこたえ、そしてそれでも其処を動こうとはしなかった。

「オイ!一体ェ何だってんでィ!」
思わず声を張ってしまい、更に強く神楽の腕を引いた。
学生時代の時から、これくらいのやりとりは経験済みだ。おしとやかな女からはほど遠く、自分のみぞおちに何度重い一発を食らったかも忘れた。手は早い、おまけに足も口も出る女。だからこそ、多少の事では大丈夫だと強く手を引いた。

瞬間、皆が目を引き、お妙、ミツバ、また子は顔から血の気が一瞬にして引いた。
『神楽ちゃん!』

学生の時の得意の瞬発力は身の危険と、あまり派手に動いては、お腹の中の赤ちゃんに危険だと別の信号が働き、作動しなかった。神楽はひっぱられ、沖田の横を通りすぎ、目の前のゴミ箱を回避しようと身を翻した。しかし思わず体勢が崩れ、デスクにへと突っ込んだ…。

沖田は唖然と口をさせるが、神楽が丈夫だと言う事は言うまでもなく知っていて、そして、それは土方にしても、高杉にしても、近藤にしても、同じであり、沖田に対して、「オメーやりすぎ。」などと言ってた。

しかし次の瞬間、まず一番に目を見開いたのは土方と沖田だった。
スパンと言う平手打ちの音が、沖田の頬になった。叩いたのは姉であるミツバだった。
「なんてことをっ…!すぐに車もって来て!十四朗さんでもいいから!早く!」

普段のミツバからは到底考えられないような行動と台詞。これによって、周りの状態に気づくのが、少々遅れた。しかし一番に気付いたのは、近藤だった。
神楽は何も言わず、お腹を押さえている。
その周りでは、また子が神楽の体をぎゅっと抱いていた。

「ま、まさか…そんな…!お妙さん――。」
いち早く気付いた近藤は、お妙達に気付き、顔を真っ青にさせた。

「そうよ!神楽ちゃんのお腹の中にはっ…、皆のお腹の中には赤ちゃんが居るの!だから早く車!」

沖田の前で、全身に鳥肌を立て、体を震わしながら、弟を睨むミツバと、神楽の身を心配し、大丈夫とお腹をさするまた子とお妙、唸るような声をあげ、痛いのか、どうなのかも分からないまま冷や汗を伝わす神楽に、身動きの取れない男。

そして、怒り声を張る女の声は部屋に響いた。

『早く!!』



……To Be Continued…

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