act 20

背の高い、低い、まばらなビルが続くなか、コンクリートで作られた建物があった。神楽達はその建物をみあげた。

引越しする際、一度だけ来た事のある、いわゆる沖田らの事務所。使用するのは主にパソコンと棚だけでいいと小さな部屋を借りたのだ。まだ駆け出しの頃で、家賃さえも払えるかと初めは不安に思っていた神楽達だったが、思うより早く軌道にのったと話を聞き、喜んだのも事実だった。

一度、新しい事務所にしたらと、お妙が近藤に提案したと言っていたのを、皆は思い出した。確かにこのつくり、はやりの建物ではないし、古く、どうみても、見た限りでは、うさんくささが際立つ。

十分他に移れるくらいに、軌道にはのっている。が、近藤や土方は、綺麗にした所で、大体、こちら側から行くことが殆どで、来る人間はほとんど居ないとの言葉、そして、見るところは綺麗か汚いかではなく、売り上げや、信用性だと言われそのままにされた。

昨夜、あれから、神楽とミツバはそれぞれ沖田と土方に電話を入れた。
声を聞けて安心したのは、どうやらどちらともだったようで、神楽達の側でまた子とお妙は終始微笑んでいた。

その夜はそのまま皆神楽の部屋で一晩明かし、朝一番、まずお妙が近藤に一本電話を入れた。すると、珍しく午後まで予定が空いていると言う言葉。どちらにしても言うつもりだったし、今しかないと神楽たちはふんだ。

体調は、とりあえず、どちらとも良好。ただ食べてしまうとまたあの様になりかねないとの事で、オレンジジュースだけを口に入れた。

そんなこんなで扉の前。さあ行くわよとのお妙の声。ゴクンと生唾を飲み込んだ。以外にも、そろ〜と開けられたドアの向こう。
すぐに、つけられたテレビの音が神楽達の耳に届いた。何故かは分からないが抜き足差し足になってしまう。

見通しが悪いわけじゃない。入ったすぐの所にはデスクが4つ。それぞれのデスクトップ。

その横には、持ち運び用のノートパソコン。以外にも片付けられており、いくつもある棚には、扱っている商品の資料などが、きちっと置かれてある。向って右側には、先ほど入れたと思われるコーヒーの残骸。そして、匂ってくるいい香は、どうやら、お妙の手作りのパンを、トースターで焼いたものだと予想がついた。

そのデスクの向こう側、黒い革の大き目のソファに四人の頭が並んでいる。
どうやらテレビに熱心な様だ。テレビから聞こえる音声から読み取れるは、今時はやりの生憎劇。
その音声を置き去りに、四人は近づく。

「女ってーのは恐い生き物でさァ。なんだってこんな事しようと企むのかまったく理由がわからねー。」

「全くだ。オイ、高杉。オメー過去に一度や二度やられてンじゃねーのか?」
「ふざけんな。俺はコイツとはちげーよ。」
「ぁあ?何で俺にふんでェ。俺は近藤さんみたく一途なんでね。オメーらと一緒にすんじゃねーよ。」
「誰がだ、高杉はともかく俺は――。」

「まぁまぁ、いいじゃないか、俺たちの周りにはそんなコンドームに穴あけるなんざする女は居ないんだ…。」

直後、どさっと言う鞄の落ちる音が二つ分、沖田達の耳にと届いた…。




……To Be Continued…

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