act 19

寝返った時に体にふわっと圧し掛かる感触に気付くと、此処は、自分の家だと納得がいった。
まだ虚ろ目で、隣を見ると、ミツバが寝息を立てていた。

もぞもぞと布団の中で体の体勢を変え、外を見てみると、その空は暗くなっていた。目を二、三度開いて、閉じて…。体を起してみると、ちょっと楽になっている事に気付くと共に、そうか…、つわり…。と理解が出来た。
一時、ボーとしてると、背中に声がかかった。

「あっ。神楽ちゃん、大丈夫っスか?!」
言った後、神楽の返答を待たずに、また子は台所にいるお妙を呼んだ。
パタパタとスリッパの足音と共に、神楽の前に座って、頬をそっと触った。

「どう?まだ気分悪い?吐きそう?吐いてもいいのよ。」
柔らかく笑ったお妙に神楽はほんの少し笑みをつくり、しかし憔悴した表情で首を振った。

その後、たった今気付いた様に、部屋の中をキョロキョロとさせた。お妙とまた子は同時に気付くと、その口を開いた。

「沖田さんなら、さっき帰ったわよ。覚えてないの?」
神楽はキョトンと、首をかしげた。
「神楽ちゃん、ずっと気持ち悪そうで、ミツバちゃんと二人、ベットに寝かせたはいいけど、とても話せる状態じゃなくて…。神楽ちゃんが寝るまで、ずっと手を握ってくれてたんスよ。」

「そうなの?全然…。覚えて、ないアル。」
話す事で、また吐き気がぶり返す事を神楽は心配したが、どうやら大丈夫だったらしい。

話した後、軽く息を吐いた。お妙は奥から、麦茶を持ってくると、神楽に飲めるかと渡した。神楽はゆっくりとソレを取り、喉に少しずつ流し込むと、ひんやりとした感触が体に染み渡たった。

ベットの体をそのままに、神楽はミツバの方を見ると、またもや先を手繰った様に、お妙が口を開いた。
「さっきまで土方さんも来てたのよ。高杉さんが連絡してくれてね。そしたら近藤さんも来て、ホントにさっき皆が帰るまで、二人のほっぺたとか、おでことか心配そうに触っててね。」

そうなのかと神楽は目を丸くした。全く記憶がない。
「また子と姉御は、大丈夫アルカ?」

そういえばと、二人は顔を見合わせたが、こればかりは個人差と言うものがあって、いつつわりが始まるかもしれないと言う事も、始まるかどうかと言う事も分からない。だから、今は大丈夫、とりあえずは…。と声を揃えた。

神楽は安心した様に笑うと、ミツバの方を見た。
「ミツバちゃんも凄く辛そうだったから…。」
また子の声が神楽に届くと、ミツバにも届いた様で、ミツバはゆっくりと目を開けた。
「大丈夫アルカ?」
神楽が言うと、ミツバはほんわかと微笑んだ。体を起そうとしたが、無理はしないほうがいいと神楽が止めた。

「十四朗さんに、早く言わなくちゃ…。」
ミツバが言った一言に、皆は全員ため息を付いた。
その内の二人、お妙とまた子のため息は、神楽とミツバのものより、ずっとずっと大きく、長かった。

家に着き、この二人の状態で、本当に寝てれば治るのかと二人はまた子とお妙に突っ込んだ。おかしいだろうと。沖田にいたっては、神楽のこの状態で薬もださないなんて、自分が医者に話しをつけに言ってくると言い出し、これに二人は慌てた。其処に高杉が加わり、そして土方の到着。ベットの上の女は顔を真っ青にさせて余裕もなにもない。頭の切れる土方はどんな病気でどんな症状で、そして最後に何て名前の医者だと二人に言った。

そして、別の病院に連れて行こうと言う声までもあがった。
二人は苦労した。本当に苦労したのだ。いっそ本当の事を全部ぶちまけたいと、心底思った。
しかしそれは今するべき事ではないと言う理性が働き、何とか、男を宥めた。しかし、荷が重かったのは言うまでも無い。

やっと帰ったときには、また子と二人、玄関前で座り込んだ。

そして、今のミツバの声。コレ以上、嘘をつき続ける事は出来ない。そして付き続ける理由も、もう無い。
ミツバはゆっくりと体を起す。そして、今の自分に、とりあえず動ける力があると分かった上で、神楽と二人、ベットから下りた。

『ママ、頑張るからね…。』





……To Be Continued…

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