act 12

「親父だって仕事なんだ。我侭言ったってしょうがないだろ?ほら、帰るぞ。」
息子が来たと言う事で、またひとつ箍が外れた様で、神楽の顔はますます、くしゃりとなった。

「だってネ。あいつ昨日明日は絶対帰れるって言ったノヨ。っぐす。なのにネ。やっぱり帰れなくなったって留守電に入ってたアル。嘘つきヨ…。」

言ったそばから、留守電に残してあった総悟の声を思い出した様に、怒って、すぐに泣き始めた。

あの少女だった神楽は、もう立派に30代前半だ。しかしその容姿は、ますます目を見張るものになっている。
そして、それは神楽だけでは無かった。神楽の側で、「仕方ねーだろうが。」と宥めている銀時もだったし、もっと言えば、この母親を中心にこいつらは全員年を取らないのかと言うほど変わらない。

何でこんなに皆変わらないんだと、一度父親の上司でもあり、親交の高い叔父の土方に利いてみると、事件ばかり追ってアドレナリンがでているんだ。と訳の分からない回答を貰った。

この母親をほっとくと、本当にろくな事がない。今でこそ、家出先は、大体近所に集結している、銀ちゃん、さっちゃんこと、坂田宅。
その少し先の、お妙さん、近藤さんと呼ぶ、近藤宅。

その真正面にある、ミツバさん、トッシーこと、土方宅。
どこかに決まっているが、初めは家を飛び出し、行方も分からない。携帯も持たずに、全員で探したものだった。
蒼が見つけた時には、おお泣きでぐずる母親の周りに、チンピラが絡み、それを蒼が瞬殺した。

母親の強さは、十分しってるが、理屈じゃなかった。幼い頃から、母親を守ると言う信念は純粋に育ち、今は、若干使い方を間違えているが、蒼と隼人が、高校生ながらでこんなに腕が立つのも、もともとは母親である神楽を、父親が仕事で留守で家を空ける時に守れるようにと極めた武道や剣の為だった。

だから、近頃は、家出の行き先がはっきりしているので、安心はしていたが…。

「母さん。ほら帰るぜ。」
蒼も手を出した。息子である双子が手を差し伸べた事で、神楽はおずおずと銀時を離れた。

銀時はやっとと、肩を大きく回した。
「総悟の変わりに銀ちゃんが出張でもなんでもいけばいいアル。」
神楽の背から聞こえてきた言葉。

「あのね、神楽ちゃん。俺は手伝っては居るけど、警察ではないからね。んなものある訳ないだろうが。」
激しく項垂れるは銀時。依頼 と言う形で、今も変わらず無理難題と言う仕事を持ってくる近藤達に、毎度毎度苦労してるのはこっちの方だと。

「分かってるネ。でも総悟近頃出張ばっかで…。もしかしたらネ…。」

『いや、それはねェ。』
銀時、隼人、蒼の声が重なった。それもそのはず、周りから見ても、容易く分かるほどに、総悟は神楽を溺愛していた。神楽を見るその瞳。年月を重ねても、いくら口が乱暴でも、悪態をついても、変わらなかった。

ゆえに、それだけは断言できた。

「今頃親父だって、トッシーに悪態ついてるはずでさァ。俺は逆にそっちのが気の毒でならねー。」
「蒼の言う通りだって。あの親父が浮気なんざ、地球が破滅してもありえねー。」
「おれも、それに一票。あの馬鹿野郎は昔からオメー以外見てねーからな。」

三人の言葉に、ぐすっともう一度鼻をならし、神楽は落ち着いた。
時刻して、もう9時近い。朱璃は、「ママ、泣かないで。」といつもの様に神楽の頭をナデナデと慰めている。
そんな様子を見ると蒼と隼人、銀時の目は自然と柔らかいものになっていた。

「それにしてもオメーら、よく此処だって分かったな。」
「あぁ、とりあえず銀ちゃん家が一番近かったから、まずはと思って行って見たら。」
「ドンピシャだった訳でさァ。」
三人は苦笑した。

「銀ちゃん、さっちゃんは?もしかして愛想付かされたとか?」
隼人はイタズラな視線をやった。
「ばーか。ンな訳ねーだろうが。しばらくは居たが、終始が付かなくなりそうだからってな、ミツバとお妙ン所へ――。」

苦笑まじりで話す銀時の言葉を遮るように、がちゃりと音がした。
あっ。帰って来た。三人は口を揃えた。

「ったく。又泣いてンのかアイツは…。いくつになっても変わんねーな。」
予想していた人物ではない声が、聞こえた事で、目を見あわせた。
「もう、十四朗さんもそんな事言わないの。」
アレ?ますます顔をかしげた。
「そうだぞトシ。これも愛ゆえってな。ねェお妙さん。」

「人前でそんな事言わないでくださいって、何年言い続けてるのかしら。殴られたいの?」

「ちょっとー。人ン家壊さないでくれる?大体お妙さん、DVもいい加減にしないと通報されるわよ?あっ。警察だった…。」

ガヤガヤと流れ込む様にリビングに入ってくる面子に、思わず皆は目を丸くした。
「あー疲れた。何とか今日中に戻ってこれて良かったな。」
当たり前の様に土方がリビングで寛ぐ様に、ジャケットを脱ぎ、ミツバに渡す。その横で近藤も同じように上着を脱ぐと、お妙が自然に受け取った。

「え?お前ら何で?」銀時の言葉は軽く交わされた。

「あぁ。お妙さんの顔を見れないなんて、耐えれなかったんでな。がはははは。」
言う近藤の後ろから、平然と言葉をかけながら、入って来たのは、今回の根源とも言える総悟だった。

「よくもそんな恥ずかしい台詞が言えれますねィ。やっぱり近藤さんはすげーや。」
「ぜんっぜん、尊敬している風には聞こえねーんだが。お前、近藤さんをおちょくってるだろ?」
いつもの様に土方の言葉を背中で受け流す。土方は目を吊り上げた。ミツバは困った様に土方を宥めた

思わず言葉をなくした神楽の姿を確認すると、総悟はふっと笑い、近づいた。
しゃがみこみ、神楽の頬をつねった。

「また、離婚するって騒いでやがったのか?泣き虫。」
まずは、唖然と、すぐに、つねられたまま頬を膨らまし、睨む。そして最後に拗ねた様に総悟の首へと手をまわした…。

「遅いアル…。馬鹿…。」


……To Be Continued…

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