act 18

「オイ神楽!テメっ――。」
「怒鳴らないでヨ…。」

沖田は口を開くなり罵声を飛ばしかけたが、携帯の向こう側から聞こえる声の弱さにすぐに言葉を詰まらせた。

相変わらず携帯を持っている神楽の顔は青い。その隣のミツバの顔もだ。
肩で息をし、何とか吐き気を外へ外へともって行きたいようだが、うまくいかず、またいつ襲ってくるかもしれない状況に顔を歪めていた。

口元にへハンカチをあてたまま。時折深く呼吸してみるが、気持ち悪いものは気持ち悪いらしく、お妙とまた子に二人とも、もたれかかっていた。

「とりあえず何処に居ンでェ。」
「あたしは大丈夫アル。今日は帰るヨロシ。」
「ハァ?何言ってんだ。てか何処に居んだよ。」

沖田の声はスピーカーを通じて、お妙やまた子の耳にも入っていた。神楽は会話するのも辛そうで、本当にそっとしてくれと言うか、早く切らしてと言うか…。とにかくそんな状態の神楽を見るに見かねたまた子が、「あぁ、もう!」その携帯を取った。「エっ?!」とお妙は目を丸くした。

「か、神楽ちゃん、ここ数日胃炎だったみたいで…。やっと治りかけって言われて、調子にのって今日食べたらまた悪くなっちゃったみたいで…。だから…。」
言った後で、こんな言い訳、あの二人に通用するはずがないかと後悔した。
お妙も、その思いは同じらしく、目を思わずぎゅっとつむった。しかし天は彼女に味方した。

「ったく。馬鹿じゃねーの。とりあえず何処に居ンでィ。」
以外に信じたようだった。ほっとお妙とため息をつき、電話をしながら、手洗い場を出ると、丁度沖田と高杉の姿を発見し、手をあげた。神楽はともかく、姉であるミツバの状態を見ると、沖田は更に驚いた。

二人の顔は真っ青になっている。相変わらず口元にはハンカチを。既に神楽はあれやこれやと考える余裕はないらしい。沖田が隣に居るにも関わらず、目を瞑ったまま、開こうとはしない。

目を瞑ったからと言って、何が変わるはずもないのだが、目が回りそうだからと神楽は言った。

思ったより状態の悪い神楽とミツバをとりあえず椅子に座らせると、もう一度病院にかかったらどうなんだと沖田はお妙に言った。

とりあえずこの台詞に二人は慌てた。家で寝てれば治ると説得を試みる。すると今度は薬はと言い出した。コレにも動揺した。

そんなものある訳がない。そこでまた適当な事を言う。
「薬はないんッス、もうただ耐えて体の中から毒素を出さなきゃいけないって…。」
嘘は一度つくと、つき続けなければならない。するとどんどんと嘘は大きくなる。また子は早くも後悔をしていた。

しかし神楽は、今は言いたくないと言っている。こんな具合の悪い神楽とミツバの間で、今妊娠の話を持ち出すべきじゃないと思えたのだ。勿論、二人の体調が回復しだい、言わなければならないとは本当に思っている。でもちゃんと神楽とミツバの口からそれぞれに言った方がいいと判断しての事だったのだ。

「オイ、大丈夫かよ。」
以外に優しい沖田の声だが、神楽は本当に余裕がないようで、下手すれば又ぶりかえしが来そうなこの状態を必死で耐えていた。沖田は隣でくったりとしているミツバにも視線を移した。高杉はミツバのおでこに手をやった。

「ちょっと熱があるんじゃねーか?」
確かに、体温は妊娠している為、高い。風邪ではなかったが、この際どうでも良かった。
「立てるか?」
沖田が聞くと、神楽は一層眉間に皺を寄せた。沖田は考えるそぶりを見せたが、ものの数秒で答えを出した。

そして、同じ事を高杉も考えていたらしく、二人同時に、ゆっくりと神楽とミツバを抱いた。

「姉ちゃんに変なそぶり見せたらぶっ殺すんで、宜しく頼みまさァ。」
沖田の言葉に高杉はくっと笑った。沖田と高杉の腕の中で、二人くったりと症状が軽くなる事はないらしい。しかも振動が体に伝わる事で悪化していってるようにも見えた。

「オ…きたァ…いいから…吐いちゃうヨ。」
絞り出すように神楽は言った。沖田が神楽に視線を落とすと、更に真っ青になっていた。

本当に大丈夫なのか?そんな気持ちが胸をよぎる。しかしイタズラに神楽を心配させてもいけないからと息を吸った。

「心配すんじゃねー。いいからオメーは黙ってろ。つーか吐きたきゃ吐け。我慢すんな。」
目を瞑ったまま神楽は神楽はコクンと頷いた。
高杉はといえば、ミツバに振動がなるべく伝わらないように静かに歩いていた。
言葉はないが、其処には言葉で伝わらないやさしさが、確かにあった…。


……To Be Continued…

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