act 28

「オメーさ。まだ食えンの?」
軽く10皿目に手を付けた神楽の団子の皿を見つめ沖田は口を開いた。上機嫌で食べていた神楽の手が止まった。

そしてすぐに口を尖らせた。これはまずいと、本能的に沖田は感じたのか、店の女を奥から呼びつけると、「三皿追加でお願いしまさァ。」そういい、神楽の方に視線を戻した。

神楽はまだいじけてるように、その止めた手を動かそうとしない。この感じ。まるで、あの時と一緒じゃねェか。沖田は思う。神楽が、馬鹿な行動に走った根源の、あの日と同じ…。

沖田は団子を掴んでいる神楽の手を掴んだ。
「ほら、いいから食えよ。」
神楽はフイとそっぽを向いた。どうやら完全にへそを曲げたらしい。
沖田は頭を掻いた。どうしたものか…。そうこうしていると店の女が三皿の団子を持ってきた。テーブルの上には団子が並んだ。

「俺はこんなに食えねーんだ。いいから食え。」
沖田なりの言葉だったが…。
「いいアル。あたしこんなに払えないモノ。」
神楽は沖田と目を合わせない。あの一件で得たバイト代は、とうの昔に其処をつきつつあった。もう既にここの会計を払えるほど残ってないのだ。沖田は声にだし、ため息を付いた。

「オメーに払わせるなんざ最初から思ってねェ。大体誘った時点でその位察しが付くだろうが。」
確かにそうだった。大体こんな事では、計画がパァだと沖田は内心焦っていたのだった。

まだ覚えの浅いアノ日。次の日、朝早く神楽を万事屋を送ってみると、待っていたのは、予想していた通りの惨事だった。玄関口で仁王立ちをしていた銀時、そして何故かそれに付き合わされる羽目となった土方。銀時の制裁。
そして、付き合わされたイライラを、思っクソぶつけてきた土方の制裁。

鼻っから覚悟していた事ゆえ、そんなに抵抗を見せなかったが、さすがに最後の方では開き直り、二人相手に体を張っていた。しかしやはり、銀時には弱く、全て終えた頃にはボロボロになっていた。

銀時は気がすんだようで、しかしぎこちない歩き方をする神楽を見ると、しばらく、そういった行為は禁止だと言った。さすがの沖田もこれに反応しようとしたが、やはり銀時には敵わなかった。いや、もともと敵う相手ではないと思っていたが、今回、精神面で更に、その思いが強くなった。

どうにも、銀時には、土方の様に自分を強くだせない。結果的に、これも惚れた弱みであるとは、まだ沖田自身、気付いていなかったが…。

とにもかくにも、その様な日々が続くこと、二週間。それはそれは沖田にとって地獄絵に近かった。

そして神楽自身、そういう行為をした沖田と一緒にいるのが、どうにもこそばゆく、ついつい避けていた。
そんな沖田はと言えば、そのモヤモヤを全て、土方や、部下である山崎、その他隊士にぶつけていた。

むごかったのは、山崎を含む隊士の方だった。なんせとばっちりの量が半端ない。口を開いたとモンなら、無理難題をふっかける。断れば、身も凍る稽古が待っていた。どうにかしてくれと隊士は土方に泣きついた。土方は面倒くせーなァと言いつつも、沖田に話をしたのだ。

たまには団子の一つでも奢ってやったらどうだ…と。

しかしどうだ。目の前の女は完全に機嫌が悪かった。
「嫌ヨ。どうせあたしを置いて、帰るなんて言うつもりアル。」
誰がそんな事を思うかよ。沖田は咄嗟思った。この間みたいな事になるのは真っ平ゴメンだと。

「帰らなねェよ。いいから食えって。」
沖田の言葉を完全に信じたわけではないが、おずおずと神楽は手を動かした…。



……To Be Continued…

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