act 26
スルリ…。背中を、冷たい空気がかすった。
シーツのするりと擦れる音。沖田がベットを出たのが背中ごしの神楽に伝わった。
だって、しょうがないアル。本当に痛いんダヨ?
出しかけた言葉を飲み込んだ。言葉は鼻腔をツンと刺激し、目頭へと上ってくると、涙へと姿をかえて頬に流れた。
溜まった涙を、瞬きが追いやった。そして瞬きをした後、上半身を晒した沖田が見えた。
ベットに腰をかけ、神楽の隣にするりと入ってきた。
「オメーが向けないから、俺が来てやった。」
一度しゃくりはじめたら、中々止まらない。鼻をスンとならす神楽の頬を、大きな掌が拭った。
「――痛いアル。」
沖田は、目を細め、頭をよしよしと撫でた。
「無理させてすまなかった。マジで焦ってたんでさァ。」
神楽は口を尖らす。
「何でヨ。」
「さっきも言っただろうが。早く俺だけのモンにしちまいたかったって。」
「だから…って…。そりゃ、あたしも早く、なんて思ってたけど…。でも、こんなに恐いもんだとは知らなかったネ。当分したくないアル。」
「マジでか。」
「大マジアル。」
沖田はこれ見よがしに、大きくため息をついた。神楽はぷっと吹いた。
スっと神楽は一指し指で沖田の鎖骨をなぞった。綺麗なおうとつ。見た目はそんなにゴツゴツもしてないし、ガタイもいい方ではない。だから本当は今日、沖田が脱いだ時、目を奪われた。
細いと思っていた体は、筋肉がしっかりとついていて、無駄がない。組み敷かれた下で、思わず喉を鳴らした。
豆だらけの掌が、うってかわって優しく乳房に触れたとき、初めての感覚で体中が満たされた。
痛くて、痛くて、泣いちゃって…。
我慢しようとして、やっぱり痛くて…。でも、その合間、確かに、ほんのちょっとだけ、体が疼いた。
幸せって、別の声が体のあちこちから聞こえたのも本当だった。
神楽は鎖骨からスーと胸筋へと指をすべられせた。
「ナンだ?誘ってンのか?」
神楽は一度、沖田に視線を移した。沖田はいつものあの笑みを浮かべていた。
そのまま腹筋へと指を滑らせた。どこもかしこも硬い。鍛えている証拠…。
コイツに、あたしは抱かれたアルカ…。
自分の考えた事に思わず体が反応した。沖田は神楽の手を掴んだ。反射的に沖田を見上げた。
神楽の上に覆いかぶさるように、神楽の顔の横に両手を付いた。急に神楽は意識をもどした様に目を見開いた。
「ちょっ…。ごめっ、待つアル…!」
沖田の体の下。さらされた体を恥ずかしそうに視線ごと隠そうとする。その所為でビリっと痛みが体を巡った。
沖田の息を近くに感じ、体が急に縮こまった。
「もう痛い事はしねェよ。」
神楽の肩へと口を落とすを音をならし、吸い付いた。ひゃっと小さな声を神楽はあげた。
恐る恐る、沖田を見上げると、朱色が神楽の色を捕らえた。
そのまま落とされた、温かい温度。
ちゅっと離れ、そのままやんわりと神楽と包んだ。
「抱き締めるくれェ…。かまわねェだろィ?」
回された腕の感触と、その柔らかく低い声に、神楽はジンと揺さぶられた。
「沖田の体って…。温かいアル…。」
「そうか?俺ァ、オメーの方がずっとあったけェと思うけどな。」
そっと手を回し、胸にと顔を埋める…。
「帰ったら、きっと銀ちゃんに怒られちゃうネ…。」
「怒られる?殴られるの間違いだろィ?」
「殴られるの、分かってあたしと、こんな事しちゃったアルカ?それくらい、好きって事アルカ?」
急に返答がなくなった沖田の顔を見上げた。思わず笑みが漏れた。
「沖田。」
「何でィ。」
「あたしの事がスキって顔中に書いてアルネ。」
「うるせッ。犯すぞくそ女…。」
照れ隠しに、強引に唇を重ねた。重ねた隙間から、くすくすと漏れた甘い声、それさえも塞ごうと押し付けた。
そんな唇とは裏腹に、無骨な大きな手は、コレ以上ないほど優しかった。
……To Be Continued…
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