act 14

たった一本が、今は、宝物みたいにキラキラと輝いている。何度見ても飽きないし、いつまでだって眺めていたい。
勝手に顔がにやけてくる。周りを見渡しても、ほら、皆同じ顔…。

「ね、何だか信じられない気持ちでいっぱいアル。」
「本当ねぇ。何だか、胸が一杯だわ。」
「すっごいッス。だって、このお腹の中に伸介の赤ちゃんが居るっスよ!」
「このお腹の中に十四郎さんの赤ちゃん…。」

また子に続き、神楽、ミツバ、お妙とお腹に手をやった。既にその顔は母親の表情を垣間見せている。
ゆっくりとさすってみた。まだ動くはずもない。ちゃんと病院に言ってもない。ただ、何となくちょっと前からそうかな?それぞれは思っていた。妊婦特有の気持ち悪さが、既に出始めていたのだ。

自然と交わした視線の後、こみ上げてきた気持ちに皆で微笑んだ。

「ね、いつ言うアルカ。」
「じゃ、いますぐっス!」
「えっ!さすがに今すぐは…。」

神楽とまた子の突拍子もない言葉に、さすがのミツバも止めた。
お妙は、「エアコンの温度の下げ過ぎも、体を冷やしてしまうからよくないわよね。」そうちょっぴり温度をあげた。

外は、灼熱の太陽が照り付けているであろう。行き来する人の手にはハンカチや小さめのタオル。

ちょっと前に,お互いのメールに入った言葉。何かにおいが鼻についちゃって…。
何となく確信していた。

月ものが遅れていたのは言うまでもない。神楽とまた子は、会社用の靴も、少し前にペッタンコ靴に変えていた。まだ、早い。まだ早い。ちゃんと検査するまでは…。みんなの仕事の休みの日に集まろう。そう言った先週。会社ですれ違う人の香水の匂いが鼻につく。

もっと言えば、それぞれの彼氏が愛用している香水にも反応をしめしていた。
あの数ヶ月前の一件以来。忙しい合間。時間にして、ほんの十分でも時間を作ってくれるようになっていた。その間にも、色々あった。逢ってしまえば、どうしても離れがたくなる。

まるで遠恋の様な気持ちに襲われた。また泣いた日々もあった。それでも、逢えないよりは、ずっと、ずっとマシだった。

約束がキャンセルになる事もあった。しかしそんな時は、どんなに深夜になっても、自分が寝ていたとしても、そっと家に来て、自分の隣で寝ていた。深夜、ふと目を覚ますと、時々自分の隣で寝ている男がたまらなく愛しく、ずっとその寝顔を見ていた。

しかし、そんな自分達の赤ちゃんが、自分の中にいる。嬉しくて仕方なかった。神楽はオレンジジュースを口に含み、皆を見る。

「でも、早く言わないと…。つわり??て言うアルカ。隠せないヨ。」
「そうよね。でも先に病院に行って、ちゃんと診断してもらうのがいいと思うのよ。」
「それはそうっスね。」
「だったら、行かない?病院に?」

エっ?ミツバの言葉に一同唖然となる。待て待て、とりあえず落ち着こう…。と。

「い、つ?」
「今からはどうかしら?」
「い、今からっスか?すっごいいきなりなんスけど…。」

「だって、また皆のお休みに合わしてたら遅くなっちゃいそうだし…。ほら、今日は十四郎さん達とも予定立ててないわけだし。」
「それもそうね…。行きましょうか。」

神楽とまた子は、めずらしく、呆気にとられた。
お妙は飲みかけのオレンジジュースを一気にストローで飲み干した。ミツバは保険所のチェックをしている。待て待て…。
嘘でしょ?そんな面持ちの二人を他所に、お妙はタクシーを呼んだ。

「ぇえ!ちょう待っ――。」
「本気っスか?」

『マジっスよ!』

お妙とミツバは言いながら笑った。二人に手をさしのべ、行きましょう?そう立たせた。

いつもは、反対に自分達が手を差し伸べる側だが、何だか今日のミツバとお妙は、強引と言うか、頼もしいと言うか…。神楽とまた子は思わず二人、顔を見合わせたが、ふふっと笑うと決心した様に『行くか!』と気合を入れたのだった

……To Be Continued…

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