act 5

「総悟、チャイナさんと仲直りは出来たのか?」
教室、ベランダ側の隅っこ、丁度高杉の席の周りに集まって居たのは、顔なじみの面子だった。
その中近藤が話を切り出したのは、先週からこじれていた神楽と沖田の様子の現在の状況だった。

沖田は今更?と鼻で笑った。
「あんなんとっくに型つきやしたぜ?」
「どっちが折れたんだ?チャイナか?総悟か?」
来週のテスト範囲を教科書で見ながら、土方は沖田に言葉だけ投げかけた。
「ぁあ?決まってんだろうが――。」
「沖田だろ?」

沖田がしゃべり終える前に高杉が突っ込んだ。沖田は舌を鳴らし、高杉を睨みつけた。臨戦状態はバッチシといった所だ。しかし其処に、近藤も加わった事で、その開始合図は掻き消された。

「いや、俺も総悟が折れたと思うんだがな。チャイナさんだけには甘いだろう?違うか?」
笑みを見せる近藤の表情に沖田は「近藤さんには敵わねー。」と頭を掻いた。
「折れたっつーか…。ヤりそこねたっつーか。」
沖田の言葉に思わず教科書から土方も顔を表し唖然とした。

「オメー、案外鬼畜だな。学校でかよ。おもしれー奴。」
高杉が鼻で笑った。
そんな彼らを教室で見る女生徒の群れ。いつもはくっ付いている女も近くには居ない。絶好のチャンスといえた。

教室の側から携帯を向けて、音が鳴り響く。いくつも、いくつも…。
それに全く興味を示さず彼らの話は続く。

「つーか、総悟が近頃揉め事を持ってこねェ。天地がひっくリ返ンじゃねーのか。」
土方が唐突に切り出した話題に、近藤は確かにとしみじみと感心した表情をさせた。
「前は馬鹿みてェに喧嘩を安売りして、高く買っていたのになァ?」
くくっと高杉が笑い沖田を見ると、「うるせっ!人の事言えたタマかよ。」と切り替えした。

女生徒には、人気があるのは当にしれた話がが、男の中でも別の意味で有名だった。
名が知れていたのだ。主に、土方の言う事を無視して、喧嘩を買っていた約二名の所為でもあったが、その強さと言えば、折り紙つきで、巷じゃその手では有名だった。その男達が、最近喧嘩を売らない、そして買わないと噂になっていたのも本当だった。

元々、沖田を初めとした四人と、ミツバやお妙、そしてまた子は常にいる面子だったが、其処に、神楽が三年になり転校してきた事で、新しい風が吹いた。
銀八の居候と言う事で、当初は銀八と噂になっていた。

神楽に一目惚れした沖田は心底面白くなく、神楽にちょっかいを出す事から初め、自分を印象ずけ、時間は多少かかったが、やっと手に入れた女だった。

沖田と神楽が付き合いだした頃から、自然とその糸を繋ぐように、それぞれがたどり着いた糸の端を小指に結んだ。そこら辺からだった。無駄な殺生(喧嘩)はやめようと暗黙の了解を決めたのは。

「コイツは駄目だ。終わってやがる。神楽にベタ惚れで仕方ねー。」
高杉の言葉に、沖田が再び凄みを利かせる。
「ぁあ?人の事言えんのかコノヤロー。つーか人の女名前で呼ぶな。呼んでいいのは俺だけでェ。テメーは女の上で腰でも振ってろや。」
「うるせーよ。神楽に相手してもらえねーからって俺に欲求不満をぶつけンじゃねー。」

ハっ。鼻で笑った後、舌を鳴らし、高杉の胸ぐらに手を伸ばした。それを近藤がまぁまぁと止めた。
「近藤さん、コイツには一度教育が必要みてーでさァ。」
ふるふるとなる沖田を高杉はくくっと笑った。面白くない沖田だったが、何かを思いついた様で、高杉どうよう、サド顔でくくっと笑い、口元をあげた。
「じゃ、俺もまた子って呼びまさァ。」

今度は高杉の手は沖田の胸倉を掴んだ。その手を土方が止めた。
「いい加減にしろ。ガキじゃあるめーし。」
そう土方がため息を付いた所で、ひょこっと女の顔が見えた…。


......


一人分の足音が耳に付く。
こんなんだったら、また子達と無理してでも付いてきてもらえばよかったアル…。
神楽はそんな思いに駆られながら、その足を家路へと向けた。

こうなったのも、毎度毎度隠される靴の為だった。無くされてもすぐに対処が出来る様に、銀八がパチンコに買った時、お小遣いとしてもらうお金で買い置きをしておこうと。
自分でも、馬鹿らしいと思いはするが、今はこうするしか方法が無かった。
真新しい靴とシューズを箱に入れ、そしてそれをビニール袋に入れてもらい手に、ぶらぶらとぶら下げていた。
最初は誰かと買いに行こうかとも考えたが、又、心配をさすからと、お妙達には断ったのだ。

どうせパチンコに勝ったあぶく銭だからと自分の中で正当化してみるが、やはり、一人になると、その虚しさや、悔しさ、自分への苛立ち、そしてそこまでしても失いたくない沖田総悟への思いで、パンクしそうになっていた。

幸い今日は、沖田は、珍しく銀八に雑用を頼まれ、どちらにしても一緒に帰ることが出来なかったので丁度よかったと其処は思った。

しかし一人で帰る帰り道と言うものは、コレほどまでに寂しいものかと感傷にひたりつつ歩いている神楽の背中にまるで蛭(ヒル)の様にねばっこい声色がかかった。

「お前、神楽って奴かよ…。」




……To Be Continued…

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