act 6

直感だった。
理由?そんなモノがあるかさえ分からなかったが、ただ、体内信号が自分に逃げろと警報を送った。

だが、時既に遅し、足がすくんで動けなかった。
若干震えた足をほんの少しだけ動かす事ができた。しかし状態は変わらない。喉を鳴らすと同時に、男の頭数を数えようと試みた。一、二、三、四…。数えながら、もう一度唾を飲み込んだ。が、今度は音だけが体内に響いた。数が多すぎる。

男に免疫がない訳じゃない。ただ、こいつ等はヤバイ、そう思った。
だったら逃げればいいのだが、初めて本当に直面した恐怖に体の回路が切断された様に、すがる信号を受け取ってくれなかった。

手前の男が神楽に近づいた。金髪にそめあげた頭、ごつい体に背は沖田程度。顔は決して褒められたもんじゃない。ただ、手に残る傷跡が喧嘩の場数を表していた。神楽は精一杯の虚勢を張った。

「人違いじゃないアルカ?あたしはお前らの事全く知らないモノ。」
一度、男は隣の男と顔を合わせ、鼻で笑い、神楽に口を開いた。
「あたりめーだろ?俺も、オメーの事なんざ、写真でしか知らねーからよ。」
「しゃ、写真?…何アルか…?」

脆い虚勢は簡単に崩れ、心底怯えた表情で、男に聞いた。手前の男は後ろの男に首でくいっとやると、見せてやれと言った。同じく金髪の男が何枚かの写真を神楽の目の前まで持ってくると神楽が手を伸ばそうとした瞬間、手を離し、バラバラと写真を地面にと落とした。
その写真が舞う角度のでチラリと見えた自分の淡い色の髪…。神楽はしゃがみこんだ…。

ぐしゃっと必死で地面から剥ぎ取った写真の数…。
「何…コレ。」
まごうことなき、自分。色んな角度から、まるで日常をハサミできりとった様な写真が神楽の手に、そして地面に散らばった…。

その神楽の体がふわりと浮かんだ。大きく目を見開き頭上を見ると、にやりと笑った男の顔が自分を覆っており、神楽の脇下から男は手をくぐらし、神楽の体をひっぱり上げたとこだった。神楽は言葉にならない悲鳴をあげたが、男はそれに気付く事なく顔を神楽の後ろの方へと合図した。

「な、何する――っ。嫌アルッ!」
神楽の言葉は無視され、踵をずるずると、両側から男に持たれ、背中の方をむけたまま、前に、前にと進んでいった。神楽はいくら体をよじっても、その力はビクともしない。いつもなら、沖田に一発や二発ここらで蹴りを入れている所だ。ここに来てようやく沖田が男であり、実の所まったく自分は敵わなかったのかと気が付いた。

全て最初から沖田が手加減してきたと言う事、いくら普通の女より自分が強くても、やはり自分は女で、男の力には敵わないと言う事…。
理解した途端、とんでもない恐怖に襲われ、狂った様に暴れ出した。
なんとなく自分の末路が見えてしまったからだった。

「嫌ぁぁ!離せっ!離すアル!やだァァ――!。」
一人の男が神楽の口を大きな手のひらで覆った。あっと言う間に神楽の声は掻き消された。
何をどう叫んでも男の手の中でもごもごと言い消えるだけ。神楽は足をバタバタとさせてみるが、あっと言う真に体を浮かされ、何にも意味が無くなってしまった。

間も無く連れてこられた場所は、薄暗く、昔車の解体屋を営んでいた場所だと神楽は周りの状況から理解が出来、それと同時に恐怖が滲み、耳鳴りがしてきた。
ザッザッっと地面をする靴の足音がいくつも聞こえる。奥へ奥へと連れて行かれると、初め届いていた陽の光はどんどんと届かなくなり、高い天井の脇についてある小さな窓から漏れる光だけが射すくらいになっていた。

ぶるぶると震えている神楽の体はピタリと止まり、息を吸い込んだのも束の間、そのまま容易く押し倒された。一瞬で最悪の状況を神楽は理解し、叫んだ。

「嫌ァァ!沖田!沖田〜!助けて!助けてェ!」
手足をバタバタと暴れさし、叫ぶ神楽の腹の上に、最初の主犯の男が馬乗りになった。顔を歪まし身をよじる神楽を楽しそうにしばし眺め、たまらないように顔を歪ました。
「大人しくしてりゃァ、悪い様ににはしねェ。一緒に楽しめばすぐに終わっちまわァ。」

ビン底眼鏡越しに、男は神楽の顔のまん前に顔を持ってくるとそう言った。そしてその視線を体に這わした直後、神楽の泣き声が、高く高く反響した。

「嫌ァァ―――――!」

……To Be Continued…

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