act 4
「神楽。」
机に突っ伏している神楽の背に、沖田の柔らかい声がかかった。神楽はもぞっと動き、振り返った。

沖田の姿を確認するも、先日の事をまだ少々根にもっている風な神楽は、自分の正直な気持ちと、素直じゃない自分との間でゆらゆらと揺れた表情をさせ、口をきゅっと結び、結局ふいっとまた背を向けた。くっと沖田は含み笑いを見せ、神楽の側にと足を進ませた。

委員会で遅くなるから先に帰ってろとの自分の言葉を無視し、一人で待っていた時点で、あの件はとうに向こうだと沖田が分かっている為、神楽の行動は全て、裏返しと考えてよさそうだと沖田は瞬時に判断し、遠慮もなく、神楽の背にピタリとくっつき、後ろから抱き締め、神楽が耳が弱いと知ったうえで、ピタリと口を寄せた。

「素直じゃねーのな。まっ。其処も可愛げがあるんだけど…。」

抱き締めている向こう側、下唇を噛み締めながら、照れている神楽が容易に汲み取れた。此処でもう一度、沖田は手をくちに、にやける表情を隠した。

「あ〜。ヤッベ。ムラムラしてきたんだけど。」
沖田の言葉に、神楽は暴れ出す。そんな神楽を容易く腕の中に閉じ込め、口元をあげ沖田は笑う。

「は、離せっ!」
パッと神楽を包んでいたその手を沖田が離すと、勢いよく神楽は飛び出した。その手を沖田はもう一度、強く引き、正面を向かせ、もう片方の腕を強く掴んむと自分の中にもう一度閉じ込めた。

あまりの早業で呆気に取られぎみの神楽の表情を楽しむ様に一瞬見た後、神楽の唇に重ねた。

神楽の声が鼻から漏れた。苦しそうに一時もがく、しかしそうするうちに段々弱弱しくなっていく。沖田は待っていたとばかりに神楽の中に舌を割って滑り込ませた。一度離して、息を吸わせる。

あまり感覚もなく又重ねた。漏れた音が教室に響いた。神楽の首を巻き込むように手をかけ強く、引き、自分の唇のおうとつにもっと触れさせた。

離れたと思えば、また吸い付かれ、蜜を全部持っていかれるような感覚に神楽はくらくらとし、足を震わせると、それを支えるように沖田の手が腰に巻かれた。首にかけられていた手はゆっくりと離れ、セーラー服の下の神楽の素肌に触れた。刹那、神楽の体はしなり、突き放すほどの力で沖田から離れた。

「ま、待ってヨ…。」
「正直俺はもうそんなにモチそうにねーんだが。」
口元を拭いながら神楽は口ごもった。

「し、シたくない訳じゃないアル…でもその心の準備が…。」
「俺てきには、稀にみるくれー待っているつもりだがねェ。」
うっと更に口ごもらせた。

沖田が待ってくれている事など、もう、十分伝わっている。自分を大切にしてくれている事も、分かっている。
ただ、やっぱり恐いものは恐くて…。柄にもなく、臆病になってしまう自分がいた。

神楽はいじいじと手を遊ばせた。なんと今の自分の気持ちを表現していいやら、自分自身分かっていないのだから…。

沖田は、神楽に聞こえるように、ため息を付いた。神楽が顔をあげた。一度沖田の目をみると、すぐに逸らす。手をぎゅっと握り、目までぎゅっと瞑った。
エッチしてしまえば、もっと不安から救われるかもしれない。もっと自分自身に余裕がもてるかもしれない。

優越感がない訳じゃない、沖田が自分のものだともっと表に出したい衝動だって人一倍本当はある。なのに、恐くて踏み切れない自分が嫌でたまらない…。
神楽の顔を知らず知らずのうちにくしゃりと泣きそうになっていた。

「ったく。そんな顔すんじゃねーよ。俺が悪りィ見たいじゃねーか。」
沖田は一歩進み、神楽の首を引き、抱き締めた。

「ヤっちまえば楽なんだがなァ…。惚れた弱みっつーもんは恐えーなマジで。」
神楽はぎゅっと沖田の服を掴んだまま、制服に顔を埋めた。
「もうちょっとダケ…。頑張るから…。」

「何をだよ。」
そう沖田は笑い、神楽の髪の毛に温度を触れさせた…。


……To Be Continued…


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