act 8

「何で…。バレたッスか?」
シンとした空気に耐えられなくなったまた子が、ええい、ままよと切り出した。その質問は気になるものだが、言いにくいもので…。よく言ったまた子!神楽は視線をキラキラとさせた。

「携帯、こいつの携帯に電話して、出たと思ったら会話だけ聞こえてきたんでィ。」
沖田が、視線と顎を神楽の方に送った。携帯?そこまでで、何となく分かった神楽達は、3人であーね。と視線を交わした。アハハと空笑いも其処までに、また会話が途切れてしまった。特に視線を送るところが見つからない。普段ならば、早く二人きりになりたい、などと思うが、流石にあれだけ泣いてしまったので、何となく気まずかかった。かといって、一緒に居たくない訳じゃない。何か話す会話はないかと男の方を見ずに、床に視線を落とし、ときおり、ミツバ、また子と視線を交わす。

「とりあえず帰ェるぞ。ミツバ連れて。」
ミツバの驚いている視線をそのままに、土方はたちあがった。
「んじゃ、俺も帰ェるわ。ほら、行くぞ。」
そう高杉はまた子を呼んだ。え?え?!と二人を交互に神楽が見た。ミツバとまた子も唖然としている。そんな二人の手を男は引いた。半ば強引に立たされる。じゃぁな、総悟。そういい残すと、そのままミツバとまた子を引いていった。思わず神楽も立ち上がり、玄関際まで行く。その目には、一人にしないでよぅぅと、すがる様な色が見えた。また子も、ミツバも、自分自身、これから二人きりになってしまうと言う不安もあり、互いに顔を見合わせたが、土方、高杉がそのまま手を引っ張っているため、急ぎ足で靴を履き、玄関にバックをぶつけ。結局神楽の視界は、二人の背中が見えただけになってしまった。神楽はため息を付く。

部屋の中には沖田一人、気まずい他ない。ジュースでも買ってくるアル。なんならそう言って逃げてしまおうか…。いやいや、あいつにはそんな手通用しないアル。あぁ、でも無理、心臓がバクバクと危険を知らせてるモノ。
「神楽。」
沖田の声に、神楽はビクっと体がはねた。また子では、ないが、ええい、ままよ!神楽は足を向けた。
シンとした空気、深呼吸、吸って、吐いて…。まもなく視界に入った沖田の姿。が、すぐに視線をそらしてしまった。ベットに腰掛けた沖田がここに座れとポンポンと横を叩く。テクテクと歩き、ちょこんと座った。しかし、まだ久し振りと言う事もあり、恥ずかしく、俯いている神楽に、沖田の声が耳に入った。
「―――その、悪かったな。寂しい思いとか、させちまって。後、傷つける様な事いっちまって…。」
神楽は俯いたまま、コクンと頷く。
「とりあえず、まだ忙しい日は続きそうなんだが、逢える時間は作る様にするから…。」
神楽はまた、コクンと頷いた。
「おめェも、思った事は、口にしろ。分かんねェし、おめェの我侭は昔から知ってるから、今更驚きゃしねェよ。」
また、頷いた。すると沖田が神楽の顔を覗き込んだ。
「神楽、言いたい事は言え。溜めるな。」
「―――いっぱい、我慢、してきたもの。そんな簡単に言えれないネ。」
そうか。沖田は切なそうに笑みを見せた。じゃぁ。沖田は立ち上がる。飲みてェもんはあるか?そう聞く。神楽はうんと答えた。おめェが取りにいくか?沖田の問いに神楽はふるふると首を振った。
「取ってきて欲しいアル。」

沖田は笑みを見せ、へいへいと台所に足を向ける。自分ん家ほどに熟知しているこのアパート。手馴れた手つきで沖田は冷蔵庫を探った。テーブルに置かれた麦茶は、よく冷えている様で、神楽が口を付けると、思わず体が仰け反った。それから沖田は、神楽の様子をみつつ、今日は何していた、何処の店に行って、何を食べたとひとつひとつ聞いていった。はじめ、神楽は言葉数が少なかったものの、30分もすると、次第に、いつもの神楽の調子を取り戻した。台所の奥から菓子をひっぱり出し、テーブルの上に広げる。此処最近の出来事、話したかった事、仕事の事、お妙やミツバ、また子の事、話だすとキリがなかった。沖田が台所へ飲み物をとりに行くと立ち上がると、まだ駄目だと座らせた。そんな神楽を沖田は柔らかく見つめ、はいはいと腰を下ろし、話を聞いた。

一通り、自分の話を終えると、沖田の話を聞かせてと神楽は言う。別に面白くねェよと沖田は言うが、それでも聞きたいと神楽は言う。根負けした様に、沖田は神楽にも分かりやすい様に優しく仕事について教えてやった。途中何度か神楽が頭をかしげると、沖田は最初からもう一度説明をしてやった。理解できた時、神楽は嬉しさのあまり、携帯を取り、また子に連絡をつけようとする。その手を沖田が止めた。そして、ゆっくりと携帯を神楽の手から離した。神楽は何か感じるものがあったらしく、俯いた。

その顔、すくう様に唇に重ねた。久し振りなのと、緊張しているのとで、神楽はかたまったまま。沖田は神楽の唇を甘噛みした。唇で軽く挟み、軽く、何度も重ねる。何度も重ねてると、神楽の顔が傾く、おうとつをあわせた。離れて、塞いで、離れて、塞いで…。少し開かれた唇の隙間、舌を沖田はしのばせる。神楽はその舌を受け入れる。塞ぎながら、華奢な肩を抱く、柔らかい感触は、やがて、荒々しいものへと変化していく。

いつのまにか倒された自分の体、いつの間にか移動している、服の中の手を神楽は止めた。沖田はそのまま神楽の首筋に舌を這わした。神楽の体はしなった。いやと右に、左に首を振る。その度沖田の舌は右に左に移動した。ギシっとベットがしなる。呼吸は浅く、速く。吐息をふくめ、高い温度の息が神楽の口から吐かれた。

スキだ。すきだ。神楽が好きでさァ。沖田は繰りかえしながら、首筋に噛みついた。神楽から甘い声が漏れた。ぞくぞくと体の内側から込み上げてくる、火照る。又、声が漏れた。沖田の首に両手を巻きつけた。沖田の手は服の中で動く。

沖田の動きが止まった。
「やっべ。アレがねェ。」
沖田は神楽の上に体を乗せ、マジかよ…。そうつぶやいた。神楽は、沖田の耳元で囁く。
「ねェ。一つだけなら、あるヨ…。」


……To Be Continued…

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