act 19

「あっちいってェ。おまえなんかァ、しらないアルヨぅ。」

素面の神楽ならば、きっと、きっと神楽は沖田のその視線を見るなり、恐くて、たまらなかったに違いない。
きっと、手が震えて、きっと、声が震えていた。が、しかし酔っ払いの神楽は強かった。それに加え、思考があやふやで、喉を鳴らした程度では、ビクともしない。

神楽は口を尖らせて、沖田の手をパンと払いのけ、又もや銀時に抱きついた。
「か、神楽、おまっッ。沖田くんを怒らせるなっつーの!俺の寿命が縮まるじゃねェか!」
「しらなぁい!こぉんな奴、しィらなァい!」
銀時にしがみついた神楽はまるでコアラのように離れない。沖田はもう一度神楽の肩に手をかけた。それもめいっぱい力を込めて。
「オイ、クソ女…。てめェ俺に喧嘩売ってんのか?」
その言葉を無視する神楽。そして義正は、愕然と近藤の方を見た。近藤はもう、どういいわけしていいか分からず、フォローの達人、土方に視線をやった。何で俺に回ってくるんだと土方は、大きなため息をはいた。その両側の椿と百合は、ただ、信じられないと言う面持ちで、双方を見ている。

「ちょっと待ちな。」
其処を、お登勢の言葉がさく。
「神楽、あんた彼氏はいるのかと言った時、居ないと言ったじゃないかい。こんなトラブルがあるからとあたしゃ聞いたんだよ。」
お登勢の凛とした言葉、神楽は少し、正気を取り戻した。そして、ぅぅぅ〜。と唸ったかと思えば、くわっと口を開いた。

「こんな奴、あたしは彼氏と認めないアル!いやらしくて、すけべで、女なら誰とでもちゅーする様な奴とは、断じて付き合ってないアル!」
沖田の方を指さし、神楽は酔ってるにも関わらず、早口にまくし立てた。
「ぁあ?!アレはしょうがなかったんでィ!つーかしてねェよ!」
「邪魔が入らなかったら絶対してたアル!てか、何がしょうがなかったアルカ!?どうせ、綺麗だからやっとけとか思ってたアル!最低ヨ!」
「目的を達するための小事っつーやつだ。仕方ねェだろうが!」
「あ〜あ〜、そうアルナ!大体お前はそうゆう奴アル!目的の為ならば何でもする奴ネ!」
「誰のためにやったと――。」
「あたしの為に?!あたしの為にやった事アルカ!あれが?!お前おかしいアル!」
「だから、そう言う意味じゃねェっつてんだろうが!」

あぁ、全て終わりだ。お妙さん、僕かァもう、終いです。最後に貴方の顔が見たかった…。出来る事なら、貴方の側で…。
げふぅと吐血をし、近藤は息耐えた。はァと息を吐き土方は額に手をやった。そして、席を立ち、沖田の襟を引っつかんだ。そして、ずるずるとひこずった。神楽は銀時に襟首をもたれ、同じ様に席に付かされた。お登勢は、銀時の方を見ると、メデューサの様に蛇を頭から出した。銀時は顔を引きつらせた。お登勢は、一時間だけ客を連飲みに行く。その間に方を付けときな…。そういい残し、飲みなおしだよ、そう客と出て行ってしまった。

沖田と神楽をヘルプ席に並んで座らせた。勿論、銀時と土方が、だ。近藤は、もはや再起不能らしく、土方も面倒だとは思っていたが、あえて、咎める事はしなかった。まぁ、既に意識はなく、咎める事が出来なかったと言った方が正解ではあったが…。

「あ〜。義正さん、とやら、すまなかった。確かにこの二人は、既に男女の関係に―――。」
銀時の言葉が最後まで言い終えないうちに、土方が後ろからスパンとしばく。
「馬鹿かてめェは!」
目をつり上げた土方を、頭を掻きながら。面倒くせェだろうが…。銀時は言った。
「もういい、てめェは黙ってろ!義正とやら、確かにこの二人は既に恋人と言う関係にだな――。」
「こんな奴、恋人ナンかじゃないアル!」
折角うまくまとまりかけた話を、またもや神楽はややこしくさせた。沖田は無言で神楽を睨んだが。同じように神楽は睨んだ。意を決し、義正は口を開く。
「じゃ、じゃぁ、僕にもまだ希望はありますか!?」
「んじゃ俺も。あきらめなくていいって事だろう?」

神楽は淡く照る酔いの回った顔をしながら、にっこりと微笑んだ。
そんな神楽を見ながら沖田はつぶやく。
「何が、気にいらねェんだ馬鹿女。」
神楽の耳にそれは儚い振動と共に伝わった。
「――あたしは、あたしじゃないと駄目な人と付き合いたいのヨ、馬鹿男…。」
その言葉は儚すぎ、沖田に届く前に途切れてしまった…。

……To Be Continued…

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