act 2

小さなお皿に、少しのミルク、喉が渇いたとばかりに、駆け寄ってくる子猫、ピチピチと音を立てて、必死に飲む様を見て、神楽は微笑みながら、人差し指で、頭をなでなでとした。そこに、着信音が聞こえた。神楽ははっと顔をあげ、帰ってくるなり無造作に置いた携帯を探す。何処にやったアルカ?そういいながら着信音を手繰り探す。クッションの裏?鞄の中?玄関?ポケット?あぁもう何処?!耳を済ませる…。ベットの布団の方から聞こえる!神楽は間一髪、ボタンを押すのに成功する。

「もしもし!?」
とりあえず言葉を。そして息を、酸素を…。肩を上下しつつ出た相手は待ってた相手であり、神楽の彼氏でもある沖田だった。
「何かすげー息が上がってやすぜ?」
「あ、あ、うん。大丈夫アル。」
沖田が電話の向こう、軽く吹いた。
「何が大丈夫なんでィ。どうせ、部屋が汚くてつまづいたんだろィ?」
「違うアル!散らかっては居るけど…。」
また、軽く沖田は吹く。しかし、すぐに、言葉からも分かるほどに慈愛が込められた。
「おめェって奴は…。―――神楽、悪りィ。明日の休み仕事が忙しくて、買い物に付き合うってやつ、キャンセルになった。」
ツキン…。神楽のココロに何かが刺さる。
「ちょっとだけ…とか逢えないアルカ?だってももう一週間も逢ってないアルヨ?」
「―――悪りィな。俺だけが逢えない訳じゃねェし、そう我侭も言ってらんなくてな。」
「わか―――っ。」
プツっ。

零れ落ちそうだった、震えた言葉を聞かれるのが嫌で電話を切った。
ギリギリ、聞かれなかった。良かった。そう考えた途端、堰を切ったように零れた。

高校生の時は、嫌でも、毎日逢えた。喧嘩しても、毎日顔を会わせた。でも、卒業してから、沖田が皆と仕事を始めてから、逢える時間が本当に減った。一週間逢えないなんてしょっちゅう。この間は10日逢えなかった。分かるヨ。遊びじゃないもんね。仕事だもん。
やり始めたからには、責任があるって事、そしてそんな責任を捨てるような最低な沖田じゃないって事、分かるから、我侭言えなくて、苦しくて、悲しくて、そりゃ、沖田はいいヨ、没頭してるもんね。
ちっとも寂しくなんかないよ、きっと。でもあたしは、女の子は違うんだヨ。
また子、この間、逢いたいってないてた。ちょっとだけでも逢いたいって。
でも高杉が時間がないって…。ねェ。そんなに時間がないもんかな。たった5分、10分逢う時間、本当にないかな。タバコ一本吸う時間、分けてくれれば泣かなくていいんじゃないかな。
ミツバ姉も、姉御も、逢いたいって思ってるのに、一日の24時間の中で、携帯なしで、言葉を交すじかん、本当に、つくれないモノ?

あたし、我侭言ってる?言ってないヨ。神様の、いじわる…。

涙拭って、拭って…。そしたら、ピンポーンって鳴った。スンって鼻ならして、涙の名残、飲み込んで、玄関開けたら、あたしと同じ顔したまた子が立ってた…。

テーブルの上には、ティッシュの山。一度止めた涙は、また子の訪問によって、また溢れた。二人の顔は真っ赤に腫れている。神楽の元にかかってきた電話の様に、また子の元へも電話がかかって来たといった。やはり、電話の内容は、明日の予定のキャンセル。二人とも、久し振りに逢えると言う言葉、予定が空いたとの言葉に胸を躍らせていた。
服は何を着ていく?二人で買い物に言って、ランチ食べて、夜はそのまま彼のアパートに泊まって…。そんな頭の中の予定は粉々に崩れた。
自分たちばかりが逢いたいと思っているのがたまらなかった。

「きっと、あたしの事なんて、どうでもいいんスよ。」
「それを言うなら、あたしアル。」
鼻声で二人は言った。高校の時に言えた我侭は、自分達が社会に出て成長した分、言えなくなって、いい子になっていった。一度いい子でいる事にしたら、中々そのくさりを外す事が出来なかった。可愛く甘えるなんて出来なくなっていった。逢いたくてたまらない。来てくれないと別れるからね!高校の時、バイトをしてるの分かって言ってた。きっと自分を選んでくれる。
そう確信があったからできた。困らせた。そして自分が思ってた様に、自分を選んでくれた。

でも、今は選んでもらえる自信がなかった。きっと、きっと、選んでもらえない…。
そう二人で唱える様に、寂しさを埋める様に、一つのベットで手を繋いで抱き合って、眠った…。


……To Be Continued…

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