act 5

おはようございまぁす!
よろず処、裏口から軽快な声と共に、いつもの様に2人は入ってくる。
ここでのバイトも3ヶ月目にはいってくると、慣れたものだった。
外はもう寒く、学校帰り、制服の下、薄茶色のコートにはまだ11月半ばだというのに、小さな小さな雪が付いていた。入るなり、外の寒々とした空気と一変、キッチンからの温かい温度が肌を包んだ。
神楽とまた子はコートの上の小さな雪を手で払った。掌の上で、ひんやりと雪が溶けた。思わず顔が緩んだ。

時刻は6時10分前。土方は既にホールのチェックを始めており、時折、キッチンにいる近藤に何か話してるようだった。既に山崎も仕込みにはいっている。其処を横目で通り過ぎ、入った左手奥の更衣室、兼休憩所に2人は足を向けた。

休憩所にはお妙、それに雑誌に目を向ける沖田。ガムを噛みながらipotで音楽を聴いていた高杉。
2人はおはようございます。そう声を揃えた。お妙は一番最初におはようと答えてくれた。
沖田は雑誌に目をやったまま、軽く手をあげた。彼なりのおはようのサイン。
高杉も同じように、音楽に耳を傾けながら手をあげた。

初めの時から、こんな感じだったため、もう誰も何も言わない。
お妙と三人、顔を見合わせ、苦笑しつつ、その奥にある女子専用更衣室に足を進めた。
更衣室に入った所で、お妙が姿を現した。

「ね、持ってきた?」
小声で言ったのはお妙だ。また子はコクリ。頷いた。
隠す様に持ってきた小さなラッピングされた箱。神楽は何も知らなかった様で首を傾げた。
その箱の中からは、甘いチョコレートの香が漂った。何コレおいしそうアル!神楽が飛びつくように箱に手をかけた。その手をパチンとお妙が叩く。ぁうう。神楽は子犬の様にきゅぅんとしょげた。

「コレはね、…。」
小さな声でお妙が話す。どうやら更衣室前の二人に聞かれたくない内容らしかった。神楽は耳を澄ませる。
高杉さんに持ってきた物なのよ。お妙は神楽に囁いた。いつの間に?神楽は目を丸くした。
また子はちょっと照れた。また子のお菓子の腕は自他共に認める凄腕だ。将来はパティシエになる道も考えているだけあって、焼き菓子、ムース、デコレーション。まるで魔法の様に仕上がった。神楽の舌を唸らせたのも、一度や二度ではない。何を作ったアルカ?また子に神楽は聞く。

「トリュフッス。」
神楽の大好物の一つだ。人差し指と親指でそっと掴み、舌の上にのった途端、とろける触感。それと同時に舌先でつっつくと、チョコレートが瞬く間に口の中に広がり、侵食する。美味しい。上品。絶品。
余計にその欲する気持ちに拍車がかかる。
ハイ。先にこうなる事を見越したまた子が、神楽の分を作っておいたと言う。もっと早くに出してほしかったと口を尖らせた神楽に、先に食べても、後で食べても、どうせ欲しがるじゃなッスカ!。また子はくわっっと噛み付く。シー!お妙は人差し指を口元に立てて言った。

2人は思わず口を押さえる。深呼吸をした後、神楽はそれを口に入れた。
また子はお妙さんにも。そう言って差し出す。お妙も口にほおり込んだ。
神楽とお妙、幸せそうに緩める顔をまた子は見ながら、何とも嬉しそうに微笑んだ。


……To Be Continued…

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