act 2

神楽は、体が一瞬動かなかったが、ピクリと指が動いたのを確認すると、鞄をもち、沖田の側まで歩く。
ふてくされた表情で神楽はドアに持たれている沖田の側を通り過ぎようとする。
が、それを止める様に沖田は足を持ち上げ、ドアを塞いだ。

神楽の足に、丁度あげた沖田の片足が当たる。
「…足を退けるアル」
冷めた目で沖田を睨む、それを物ともせずに、沖田は口元をあげた。
神楽は、イライラが益々募り、無理やり沖田の足をまたごうとする。
その足を沖田は止めて口を開いた。

「何イライラしてんでさぁ。」
「別に、イライラしてないアル…。」
「イライラしてんじゃねェか。」
「してないアル!いいから其処を退くネ!」

無理やり沖田の足を退かそうと神楽は手をかける。沖田の足はすんなり退いたが、その肩を掴まれた。
「何怒ってンでェ。」

「だから何も!お前が何処で何してようがっッ―――。」
口から思わず出た言葉に、神楽は思わずハッとし、口を手で隠した。一度、まずった様に、沖田の顔に視線を泳がせた。そんな神楽の表情を見た沖田は、一瞬訳が分かってなかったが、その意味を理解すると共にサド顔へと変わった。

「おめーさっきの見てたんだろィ?」
沖田は、神楽を覗き込む。顔は勿論、耳まで真っ赤。自分がやきもちを妬いた事がわかってしまったと神楽は、必死で、違う違うと首を横に振りまくった。何もかもお見通しの様に沖田はニヤリと笑うと、神楽に顔を近づけながら口を開く。

「俺はてめーだけでさぁ、安心しな。」
そのまま、神楽の口に重ねようとする。が、それを神楽は拒んだ。
「だ、誰も気にしてないアル」

そう言ったまま、顔を逸らす。
「ったく。可愛くねェ女。」

ぼそっと言った沖田の言葉、それは顔を逸らしている神楽の耳にも届いた。神楽はいい加減イライラ来ていた感情が、ついに爆発してしまう。
「―――ッどうせ、どうせあたしは可愛くないアル!」
沖田の肩の手を振りほどくように神楽は走る。―ー少々走ったトコでピタリとその足を止めた。

可愛くない―――。今の神楽にとってどうしても言われたくない言葉だった。

自分より、もっと可愛い子だって、沢山いる。なんでよりによって、こんな瓶底眼鏡の性格の悪い自分と沖田は付き合ってるか、神楽自身知りたかった。毎日、毎日、不安で堪らない。いつ沖田の気が変わってしまわないかと…。

沖田に好きだといわれ、本当に信じれなかった。やっと信じれた今でも、不安は拭えない。好き過ぎて、どうにかなりそうな自分、素直になれない自分…。

今でも、こんなに沖田に溺れているのに、コレ以上溺れて、もし心変わりされたら、耐えられない…。
周囲の女子からの反応も凄かった。陰口なんて、日常茶飯事だった。何であの子が沖田君と付き合ってるの?何あの瓶底眼鏡…。

毎日毎日…。

だが実際は、沖田の方こそ、実は気が気ではなかった。
神楽のその瓶底眼鏡の奥の奥。露草色の透き通った瞳に心を奪われた。意識すればすればするほど自分のモノにしたくてたまらなかった。

勇気を振り絞って告白した時、表面上は何とかいつもの態度で隠せたが、心臓はバクバク、手には汗をにぎり、真っ直ぐ見つめてくる神楽のその奥の瞳にくらくらした。

神楽がOKしてくれた時、嬉しくて舞い上がった。コレで俺のもんだと思う。しかし神楽は心を許したものへ執着が行き過ぎる。近藤、土方、高杉、山崎、そして銀八…。気がきじゃなかったのは、むしろ沖田の方だったのだ。

そんな神楽が自分に嫉妬した事が嬉しかった。だから少々度が過ぎたのか?
沖田は考えたが、キスをしようとしただけだったのを、何故其処まで怒るのかが正直分からなかった。しかし、止まった足を再び動かし、一度もコチラを振り向く事なく走り去る神楽の背を見ると、やはり、やりすぎたかと立ち尽くし頭を掻いた…。



……To Be Continued…

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