act 16

神楽は唖然とした表情から、一変、みるみると顔を歪ませた。手の拳に力が入る。ぎりぎりとシなる。下唇を強く、強く噛み締めた。
椿は、照明の中で艶やかに光る、その唇で妖艶に微笑んだ。沖田は、さも面倒くさそうな面持ちでその場から動かない。椿は身を乗り出した。斜め前の沖田へと顔を近づける。
神楽の顔はますます歪む。どうしてこの男は拒否らないのか、自分のあてつけなのか?だったら酷過ぎる。抵抗していない訳ではない。必死に自分なりに拒否を表しているつもりだった。
あてつけで、他の女とのキスシーンを見せるなんて、酷過ぎる。神楽はわなわなと震えた。沖田の表情は全く変わらない、無表情だった。女さえも見ていない。かといって、神楽を見ている訳ではない。空虚を見ている。
椿は顔をしかめた。少なからず、自分には自信があるわけで、その自分が顔を近づけて、キスしようとしているのに、喜ぶどころか、表情が全くないなど、面白い訳がない。椿は沖田の頬にそっと手をやった。
目を細め、微笑んだ。沖田の表情がピクリ、動く。しかし、間違いなく嫌悪感の為だった。

沖田からしても、はっきり言って、面白くも、なんともない。目的の為には手段を選ばない。しかしやはり、神楽以外の女に触られる事も、神楽に見られる事も、嫌で仕方ないのが本音だった。

椿の顔が少し、傾けられた。沖田の顔まで後、十cm、九、八、七、六、五、四、三… …。

「お、オイ神楽、お前何してっ―――。」
僅か数センチ、其処で、声がかかった。声の持ち主は銀時。椿はハッと神楽の方を見る。沖田も覚めた様に影をやどした瞳に光を取り戻し、神楽の方を見た。
「オイ!神楽、オメー何してやがる!?」
思わず声を荒げた。声の持ち主は沖田だ。
沖田が神楽の方に手を伸ばした。酒瓶を取り上げるために…。

後数センチ。現実から逃避したかった。そこまであの一瞬で追い詰められた神楽は目の前の酒瓶に手をかけた。
酒瓶には『武将』と名が書かれている。アルコールは25度。先ほどおろしたばかりだ。量にして720ml。そこの口に自身の口を付けた。そして立ち上がるとラッパ飲みをはじめた。
熱い。喉が焼ける…。一瞬にして瞳が充血し、赤く染まる。苦い。おいしくない。辛い。痛い。気持ち悪い。それでも飲んだ。小さな喉はゴクンゴクンと大きな悲鳴を鳴らす。体が拒否反応を起す。飲みたくないと押しもどす。それが小さな口から溢れ、喉元を濡らした。それでも飲むと神楽は喉を開いた。見たくない、見たくない、嫌、嫌、嫌!。

沖田が手を伸ばしたが、するりと神楽はその手をすり抜け、沖田に背を向け喉を鳴らした。
義正はただただ、ボー然と神楽に魅入った。浅野は、初め、義正と同じ様に唖然としていたが、その飲みっぷり、度胸、喉元から垂れる酒の名残に、魅入り、思わず喉を鳴らした。土方は皆と同じくただただ唖然としている。タバコの灰がポトリと床に落ちた。しかし気付かない。近藤は口を開け、目をまんまるくさせた。銀時はテーブルを乗りこえ様とした。その手を沖田が掴む。そしてガチャンとテーブルの上に上がり、またぐ。そして神楽の酒瓶を無理やり取り上げた。
しかし、振ったところで、小さな酒口から風のひゅうひゅうと言う音が鳴るだけだった…。


……To Be Continued…

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