act 15

彼女の細い手が、彼にと近づく。細く白い手の先には、淡く控えめなピンクが綺麗な爪へと装飾されている。しゃらり。手首のブレスレットが音を鳴らす。くすっ。彼女は笑った。コクン。彼は喉を鳴らした。あぁ、もうすぐ…もうすぐで…。
パチンッっ。
小気味良い音が銀時の額で弾けた。額、ど真ん中に打ち込まれては、例え女の力であっても痛いものは痛い。只でさえ、額は肉が付いていないのだ。ゆえに痛みが近い。銀時は、額を押さえ悶えた。ふふっと笑ったのは百合の方だった。椿は皆から割箸を回収し、じゃらじゃらと手の中で混ぜた…。

沖田が将軍様ゲームにのった事で、人数は、神楽、椿、百合、浅野、近藤、義正、銀時、沖田、土方の9人になり、カウンターを出て、結局沖田や土方が座っていたボックス席へと移動になった。向って、右端から、銀時、沖田、土方、百合、そして、折り返し地点に近藤、百合の前から義正、神楽、浅野、椿と一周した。

沖田は丁度、神楽の右斜め前の向かい席。が、しかしこともあろうに両側を義正と浅野に取られてしまった。義正の思いは神楽には正直届いていない。ただ、彼氏である沖田がやきもちをやいている相手、位にしか認識してなかったが、浅野の場合は違う。真っ向から神楽に行為をよせていると言っているため、正直神楽も気を抜けない。時折重なる沖田の視線が、もう逃げ出したい程恐かった。何も自分はしてないじゃない。神楽はそう叫びたかった。イライラを通りこし、貧乏揺すりをしてしまう。

すると、浅野が神楽の太股に手を添え、ふっと笑い、揺すりを止めさせた。ぞわわわと神楽の背筋に鳥肌が立つ、さっさと浅野の手を神楽は払う。クツクツを笑う浅野に神楽は言いように遊ばれているのを気付いていない。神楽は関わりたくないと言うように体を義正のほうに向けた。義正は頬を染めた。あぁ、もう、どっちむいても危険地帯アル!そう思いながら神楽は義正に微笑んだ。総悟?!そんなの見れる訳ナイアル!。神楽の罵声がこちら側に聞こえてくる様だった。

「沖田君、ありゃぁ、神楽は演技してんだ。な?分かるだろ?あいつは今ガラスのカメンの世界に入ってんだ。邪魔しちゃいけねェ。分かるだろ?な?な?」
「分かってますぜ、旦那、さしずめ俺はその女に思いを寄せ、嫉妬のあまり女の客を切っちまうって設定でしょう?」
「ちっがーう!!ちげェよ。おめェは入んなくていい。おめェは客だ。徹しろ!」

虚ろ目な沖田と焦りまくる銀時を隣で額に手を添えながらため息をだす土方。そんな三人をよそに、再び土方の前の椿が皆に箸を引かせる。将軍を引いたのは、百合だった。ふふっと妖艶な笑みを浮かべる。
「キスをしてください。番号は…。」
皆がゴクンと生唾を鳴らした。
「一番と七番。」

きゃぁっ!椿が箸を見せた。番号は確かに一番。ならば七番は誰だ…。キョロキョロと皆は見渡す。その時、長いため息が聞こえた。えっ。と視線を集める。吐かれた息、沖田の手には、確かに、七番と書かれていた。神楽は唖然とする。土方、銀時も沖田の様に息を付いた。椿はくすりと笑う。その一瞬の隙、百合と視線と交したのだ。仕組まれた。神楽には分かったがどうする事も出来ない。神楽は真っ直ぐに沖田の方を見る。が、しかし、面倒くさい事は早く終わらしたい。そんなオーラが駄々漏れだった。

椿とのキス。沖田にとって、正直言えばどうでも良かった。沖田には、目的があったからだ。その目的の為に、この下らないゲームにも乗った。そしてそれは、銀時や土方、近藤も乗っている。目的。それは二人を飲みつぶす事。義正はゆっくり、ゆっくり近藤が飲ませてくれている。問題は浅野の方だ。なかば顔がいい分、女の扱いには慣れているし、神楽がふりまわされているのにも、沖田はとっくに気付いている。自分の女を遊ばれるのは、正直な所、カナリ面白くない。しかしこの場で一番てっとりばやいのは、浅野、義正をつぶす事だった。勿論、百合と椿のやりとりにも気付いては居たが、どうでも良かった。

こんな事で時間を裂かれたくなかったのが本音だった。自分と他の女がどうこうよりも、まずは神楽の両側の目障りな男を先につぶす方が先だと考えた。

しかし、この事が、神楽をある行動へと追いやるキッカケになってしまったのだった…。


……To Be Continued…

作品TOPに戻る







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -