act 4

「神楽ちゃん、これ二番にお願い。」
「分かったアル!」

「またちゃんは、これを五番にお願いね。」
「分かったッス!」
差し出された料理を受け取り、トレーに乗せ、手際よく運んでいく二人。
神楽とまた子の後姿を見ながら、柔らかく笑ったのはお妙だった。
あの、近藤の衝撃の言葉から2週間…。
初め、まともな返事どころか、日本語さえ話せなかったまた子と神楽。
何事かと裏に覗きに来たお妙に近藤は、内容を話す。お妙は喜んだ。今回の事は、実はお妙から、前々からずっとリクエストされていた事だったからだ。

むさい男共の中に可憐な華が一輪だなんて寂し過ぎるます。そう言ったお妙の言葉で、近藤は懸命に人を探すがどうにもこれだと言う人が見つからない。一度、募集のチラシを店頭に貼って見た所、募集が殺到した。しかし大半所か、全員男性従業員目当てだった。あわよくばと狙う女達の視線に、お妙は首を振った。自分がほしいのは、こんな女じゃなくて、もっと、こう、妹みたいに可愛らしい子だと。結局募集までかけたが、お妙のおめがねにかなう女の子は居なかった。そして近藤は神楽とまた子を見つけた。

二人がどう思ってるかは、勿論近藤も分からないが、自分達の店の料理を食べるその表情、笑顔に、人として惚れたのだった。そして、念願のお妙のお眼鏡にもかなったようだった。

お妙は、神楽とまた子を覗きこむ。
「ね、駄目かしら?」
その笑顔は、とても柔らかい、近藤もほっと胸を撫で下ろすと共に、笑みを見せた。
惚れてる女の願いをかなえてあげたいと思っては居たが、仕事上、適当な人間を使うことは許されない。
そして、お妙も又、自分の直感ではあるが、この二人なら大丈夫だと思ったらしい。
数多くの面接には、近藤となぜかお妙が同伴した。みるみる内に青筋を額に浮かび上がらせていた表情と今の表情とでは裏表だった。

神楽とまた子は、初め、驚いた表情をしていたが、顔を見合わせ、はにかみながら頷いた。
お妙は喜び、嬉しいと二人を抱き締める。神楽とまた子の顔は終始照れていた。お妙が、可愛らしい妹分が出来たように、二人もまた姉が出来た様な感覚に早くもくすぐったさをみせた。

そして間も無く、きちんと紹介された従業員。土方は面倒くせェ。そう言った。初めの印象がそれだったので、少々、いや、かなり近寄りがたかったが、仕事を一生懸命覚えようとしている自分達を、誰より世話をやいてくれるようになったのはこの男だった。言葉こそきついが、最後まで面倒をみてくれる頼もしい存在になっていく。キッチンにいる山崎と言う男。皆がザキ、死の呪文。などと言う。二人は思わず笑った。
以外にもこの人が一番優しい。二人はそう思った。少々頼りないが、分からない事も聞きやすく、安らぎの場になっていく。近藤は、キッチン、ホール、そして事務仕事に出かける事も多かった。よろず処の顔といえた。

沖田、高杉、この二人はホールの顔だと言う事が分かった。客あしらいも上手く、店まわしも上手い。しかしそこに土方がでてくるなり、口喧嘩になる事も多く、ちょっとした名物になっている事にも気付いた。
初め、心配していたバイトだが、思ったよりも、ずっと面白い事に二人は気付く。仕事自体が楽しい事で、覚えるのも意外に早かった。近藤は、やはり自分の目は正しかったと満足そうに二人を見つめた。
心配していたお妙との相性もぴったりであり、近藤は三人を10時あがりに設定した。山崎を含め、その他全員は明日の仕込み、掃除、事務。いつも帰るのは深夜近くだった。

土方は神楽、また子、お妙を心配して、早く帰れ。いつもそう怒鳴った。しかし終わった後の雑談がどうしようもなく楽しく、いつも三人は帰るふりをして駐車場でこそこそと話しをしていたのだった。



.....

「神楽ちゃん。またちゃん。もしかして、お店の中に好きな人…居る?」
近くの自販機でジュースを買い、三人で話す。土方に見つかって怒鳴られないように隅に隠れてこそこそ話していた。
いきなりのお妙の言葉に、思わず神楽とまた子は、盛大にジュースを吹いた。
アスファルトの上に、コーラ、ファンタ。それぞれ飛び散った。2人は濡れた唇を必死で拭いながら口を開いた。
「ななななに言ってるアル!」
慌てぶり。その動揺が肯定と結びつけた。
お妙は、ふふっと笑った。当てて見ましょうか?そう言うお妙。
「沖田さんと、高杉さんでしょ。」
また子は俯き、手をモジモジと、神楽は首をぶんぶんと振り回した。
分かりやすい。そうお妙は笑った。ここまでこれば、どうやっても誤魔化しがきかないのは、ふたりとも十分分かっていて…。神楽とまた子。二人、ため息を付いた。
「やっぱ、分かっちゃいまスかね?」
そうまた子が言うと、少なくとも私は気付いたわよ。そうお妙はくすりと笑った。
神楽はコーラを口に含む。ゴクン、喉を鳴らし、飲んだ。
特に気持ちを前に出したつもりは全くと言っていい程なかった。むしろ上手く誤魔化せたつもりだった。
それでも出ていたのか?何故気付かれたのかは、やはり女の子ゆえか…。

「まぁ、うちの従業員は、誰かしらファンが居るくらいだから、好きになっちゃうのも分かる気がするんだけどね。」
お妙の声に、二人はファン?!と声をかぶらせた。
「そうなの。近藤さんは色んな世代の人に好かれてるし、山崎さんも顔が広いし、土方さん、沖田さん、高杉さんは性格はまぁ、置いといて、顔が顔だからファンも多くて…。本性知ってる私からすれば、何処に魅力があるのって感じなんだけど…。」
そう頬に手をお妙はやった。本性?!再び神楽とまた子は声をかぶらせた。あぁ、別に気にしないで。お妙は言う。
お妙は付け加えた。
「二人が好きなら、あたしも協力はするわよ。あんまりオススメはしないけど。」
最後、少々苦笑しつつも、お妙はそう言った。


……To Be Continued…

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