act 3

沖田、高杉。それぞれ、顔を傾げた。
名前を名乗った覚えもないのに、知っている二人、しかも先輩と呼ばれる違和感。
少々の間、お互いが立ち尽くしていた。それを一人の男の声が裂いた。
「総悟、高杉!戻れ!」

四人一声に、その声の方へと振り向いた。
先には、土方が居た。顎をホールへと。高杉と沖田はそれぞれ手をあげた。
「どうすんでィ。入りやすか?」
いきなりかけられた言葉に驚く二人。
入る入らない…以前に。
『お金、持ってる?』
二人顔を見合わせて、同時に出た言葉。そして、おのずと答えは出ていた。
小さなため息を、神楽とまた子は漏らした。せっかく、せっかくのチャンス。しかし当たり前だが此処に居るわけにはいかない。二人とも、頭を深く下げた。
『どうも、ありがとうございました。』
そして、スイマセンでしたとココロの中で謝った。
二人して、沖田と高杉に背を向けた所で、その背中に声がかかった。

「とりあえず入ってなせェ。てか金はいいから。」
思わず勢いよく振り返った。言葉を出したのは沖田の方だ。今しがた空いた席を指差すと、座ってろと合図した。
そして、高杉と二人、店内へと紛れていく。その背中をボー然と神楽とまた子は見送る。


しばらく立ち止まっていた二人だったが、先に口を開いたのは神楽の方だった。
「いい…アルカ?」
その言葉に、また子はしばらく考え込んだが、くすりと笑い、いいんじゃないっスか?そう口にした。
丁度二名様の席にと座る。
改めて店内を見てみる。ふむ。女性客の殆どは店員狙いだと一目で分かった。
今、ホールを動かしているのは3人。沖田、高杉、土方。主に土方が統率を取っているらしい。
しかし、沖田と高杉が言う事を聞かないようで、目を吊り上げている。神楽とまた子は顔を見合わせ思わず吹いた。

何気ない雑談を興奮ぎみでしてると、目の前にオレンジジュースが置かれた。
二人して見上げる。
「飲んでろよ。何か持ってきてやるから。」
高杉はそう言った。また子は下を向く。勿論恥ずかしさの為。変わって神楽が口を開いた。
「本当にいいアルカ?こんな事してもらえる様な事なんてしてないヨ。むしろ迷惑をかけたアル。」
コクンとまた子も頷いた。そんな二人をみた高杉は含み笑いをした。
「気にすんな。もうちょっとしたら、いいモン持ってきてやるよ。」
そう言うと、高杉はホールに紛れていった。いいモノって?分からないヨ。
そんな会話をしてると、間も無く持ってこられたのは、熱々の鉄板の上でジューシーな音をならすオムソバだった。それを持ってきたのが沖田だった事で、今度は神楽が俯いた。
「特別メニューな。」
そう沖田は笑った。

また子と神楽は簡単にお礼を沖田に言った後、その音が鳴るオムソバを口につける。
それまで、俯いていた神楽の顔は満面の笑みにへと変わる。続いてまた子も笑みを見せた。
沖田はそんな二人を見て笑い、ホールへ戻る。
柔らかな卵に包まれたやきそばがとてもソースとマッチしている。
特別メニュー。沖田はそう言った。どうやらこれはメニューには載ってないらしい。

周りの客は、物欲しそうに二人を見た。
なんだか特別な感じがして、すこし嬉しい。ふざけた二人組みの女にも、感謝してやろうじゃないか…。
2人はそう思う。

容易く平らげたそのオムソバを思い出すように二人はうっとりとさせた。
しかし何時までも此処には居られない。
しかし、会計はないと言えど、どう帰っていいものか…。2人は考え、ホールをキョロキョロとさせた。
すると其処に、近藤が現れる。緊張し、ありがとうございました。そう言った神楽とまた子を近藤は視線を往復させながら見る。
キョトンと見る二人。すると、近藤は、ちょいちょいと手招きをする。
神楽とまた子は顔を又、顔を見合わせ近藤の後についていく。
何故奥に入るのか?視界の中には沖田、土方、高杉も目に入った。
それから、まだ言葉を交わしてない、お妙。山崎も自分達を見ている。
キッチンを通りぬけ、休憩所へと、2人は連れてこられてしまった。

何かしたか?何か…。もしかして、やはり金額を請求される?
二人は緊張な面持ちで近藤を見る。そして近藤は口を開いた。

「此処で、バイトしてみないか?」
思わず二人は絶句した。

……To Be Continued…

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