act 14


何で、何でこんな事になってしまったアルカ…。

神楽は、今日始めてこんなに、バイトを引き受けた事を後悔した。もっと、もっと銀ちゃんの言う事を聞いとけばよかった。もっとちゃんと考えとけば良かった…。
あぁ、何てあたし、馬鹿アルカ―――。

「ハイ。じゃぁ神楽ちゃん引いてぇ。」
目の前に出される割箸。その下のクジを見えないように百合が持っている。その目はランランと輝いていた。
その割箸を、神楽は一揆に引き抜いた…。

......


「神楽ちゃんてさ、彼氏とか居るの?」
盛大に近藤が吹いた。

神楽は、本日二回目の地雷質問に固まった。近藤は噴出した焼酎を手拭きで拭きながら、大量の汗を額から首筋へと、滝の如く流している。キョロキョロと視線を動かしつつも、神楽の方をちらり、ちらりと見る。
神楽はため息を吐いた。
「その質問今日は二回目アル。だからもう言わないネ。」
二回目?浅野は聞き返す。神楽は上手くかわせたと内心思った。ふーんと浅野はなにやら意味深に笑った。これだ。この笑顔が駄目アル。ナンかムカついて仕方ない。神楽はそんな事を思いながらカウンターの雑用にと目を向けた。義正や近藤には悪いが、この男の相手をしたくない。洗ったグラスを丁寧に拭く。そして出来るだけ浅野を見ないように背を向け、カチャカチャと片付けた。しかしどうだろう。この視線。まるで纏わり付くように背中に感じる。意を決して神楽は口を開いた。

「お前、自分の席に帰るヨロシ。あたし忙しいし、相手なんてしてられないネ。ちゃんと相手ならいるアル。」
このはっきりとした態度にも浅野は引かない。
「さっきも言っただろ?俺はあんたと話したい。」
「あたしはお前なんかと話したくないアル。残念アルナ。」
浅野と神楽のやり取りを義正は、半ば唖然と見ていた。少なくとも、義正には神楽はこの様な態度は一度たりとも取った事はない。神楽の本質は正直今の神楽なのであったが、義正の中の神楽は優しく、笑顔が可愛らしい神楽だった。しかし義正もこれしきの事でどうにかなるような思いではなかった。むしろ軽々しく言い寄ってくる男をすぱっと切る物言いに、好感さえもてた。

「どうやったら、あんたは笑う?」
「お前が居なくなったら。」
即答で神楽は言い放った。手厳しいねェ。浅野はそう言うと、よしと立ち上がった。神楽は大きなため息を出した。沖田の方は見なくても、沖田が自分を見ているのは分かる。浅野の視線とは別方向からくるその視線に神楽はとっくに気付いていた。だからきっぱりとした態度をちゃんと取った。しかしほっとしたのも束の間だった。
浅野は百合にも椿にも話しをかけている。何か嫌な予感が自分の体を走った。浅野はコチラがわに親指をむけ、なにやら誘っている風だった。見れば百合の客。つまりは浅野の連れはよほど楽しかったのか、ソファの上で夢見心地である。そんな二人に困っていた百合に声をかけた事もあって、百合の顔は明るく、頷いた。そして、銀時の席に付こうとした椿にも声をかける。ちらり、椿は迷った様にも見られたが、至近距離で浅野に返事を迫られ、頬を赤くしながら頷いた。

お登勢はそんな様子を気にも留めることなく、若いモンは若いもん同士、楽しくやりゃぁいいさ。と馴染みの客と談笑をしている。なにやら嫌な予感につつまれた神楽を他所に、椿と百合もカウンターにと入って来た。神楽は何が起ったのだと言う面持ちで二人を見る。百合は神楽の右側に、椿は神楽の左側に。
神楽は二人を交互に見る。椿は割箸を袋から抜き取るとパチパチと割り始めた。
段々と嫌な予感は現実となっていく。神楽は顔を引きつらせた。
椿はその割箸の下に番号を書いて行く、思わず神楽は声をだした。

「ちょ、ちょっと待つアル。それってもしかして…。」
「そ、将軍様ゲームよ。皆でやろうって。楽しそうじゃない?」
「ぜ、全然楽しそうじゃないアル!。あたしはいいアル。」

「そんな連れねェ事言うなよ。皆で楽しもうっつってんだから。な?」
そう椿の方を見て浅野は微笑むと、それにつられる様に椿も微笑んだ。
「と、とにかくあたしはやらないアル。」
「だぁめ!」

男ならともかく、女の子相手に神楽は強く出られない。神楽が何をどういっても百合と椿はだめだと言い張った。どうしたものかと神楽が困り果てていると、百合が椿や神楽の横をすり抜けていった。神楽は不思議に思い視線で後を追う。百合は銀時の席の前で止まった。

「あの、皆さんも一緒にしませんか?」
土方と銀時は唖然と百合を見る。沖田は百合と視線を合わそうとしない。百合は沖田の前に手を差し伸べた。
「ね。一緒にしましょう。」
そう、微笑んだ。
神楽の心臓は、今にも破裂寸前。音はまるで騒音の様に鳴り響く。
何かを考える様に沖田は視線を伏せた後、ゆっくり、ゆっくりとその手を取ったのだった。



……To Be Continued…

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