act 4

「確かに俺は今まで勿体ねェ事してたのかもな。」

触れた唇、離した少しの合間、沖田がまるで独り言の様につぶやいた。
神楽を下に、頭の横、両肘を付いて、至近距離で神楽を見下ろす。神楽はそんな沖田の腕をぎゅっと掴みながら、自分が何処かへ行ってしまわないようにと何とか理性を保っていた。

沖田の下で見せる神楽の表情はあまりにも艶っぽかった。
先ほど泣いた事で腫れた目の周りは、既に肌色に戻り、その瞳はゆらゆらと濡れていた。それは、先ほど辛く、腹ただしく流した涙ではなく、嬉し過ぎて、幸せな自分の今の気持ちを表す涙として流れていた。

半開きになった小さな唇はしっとりと濡れており、そこから浅い呼吸が沖田の唇に触れた。生暖かい感触に気持ちを揺さぶられる。同じように濡れた瞳は恥じらいを含みつつ、早くも沖田が欲しいと言うように甘く睨み付けていた。

沖田の言葉の意味が分からない神楽は一瞬眉間に皺を寄せたが、直後に降って来た感触により、瞬く間に肢体を跳ねさせた。声が、音が、空気が漏れた。僅かな隙間から、どれも同時に漏れた。

唇をついばむ様に落としながら、沖田は僅か自分の瞳を開け、神楽を見る。
長いまつげを、儚い涙で濡らしており、大小の小さな雫が付いている。
神楽が動くとまつげの上で弾かれて消える。が、直ぐにまた内側から出てきた涙によって、しずくがくっ付いた。

綺麗。素直にそう思ったと同時に、神楽が何故ないたのかを、今頃になって理解した自分が居た。

全身全霊で、気持ちを叩き付けた神楽の気持ち、あたしを見て、そう叫んでいる様に思えた。事実自分は行為自体に没頭し、神楽をちゃんと見ていなかったと。かといって相手が誰でもいいのか?自分の性癖についてこれる女であれば、神楽でなくても良かったのか。

むしろ、そういうプレイが好きな女も居るし、沖田がそうしろと言えば、喜んでする女も居そうなもんだろうと思うが、沖田も又、結局は神楽でなければいけなかった。

その理由だけは自分も分かっている。簡単、好きだからだ。
しかし、神楽がこうゆう行為が嫌にも関わらず、自分に付き合っていたのも、体を反応させたのも、もっと奥の奥。基本的なトコロ。自分を好いていてくれて居たからだと言う事だった。

考えると、改めて胸が締め付けられる思いに駆られた。

沖田は神楽から唇を離した。自分の真下、鼻先、神楽の顔がある。それをまじまじと見つめる。

「沖田…。どうしたアルカ…?」
神楽は不安げな表情で沖田を見る。

神楽の声は聞こえているが、沖田はしばらく返事を返さないまま、神楽の顔を見続けた。
さらっと額に流れる淡い色の前髪、小ぶりな唇に、整った鼻の線。紅潮した頬。白い肌、自分を見つめるその瞳。
改めて見ても、文句の付けようがないパーツに沖田は息を呑んだ。その小さな唇から、再度自分の名が呼ばれる。

今まで幾度となく、行為の中、懇願するように呼ばれていた名前。しかしどうだろう。かつてコレほどまでに自分の名を呼ばれ気持ちを揺さぶられたことがあっただろうか。

沖田は何も言わず神楽の首筋に顔をうずめ、神楽を抱き締めた。見開かれた瞳からは、何やら分からないが涙が伝った。幸せだと唄っている様な気がした。沖田の上半身が自分の体とピタリとくっ付いた。たったこれだけ、たったそれだけ。

36度何ぶの体温が、直接体ごしにくっついただけ、重なった体の上と下、右と左で音を鳴らす、その振動が伝わるだけでこんなにも幸せじゃないか…。沖田は思う。

「もう、絶対ェあんな事しねェ…。」
沖田は小さくつぶやいた。けれどしっかりとその言葉は神楽に伝わっていて…。
短く言われた言葉の中にある気持ちを汲みとった神楽は目を細め、沖田の体をぎゅぅ。抱き締めながら小さく頷いた。

「あたしの事…好きアルカ…?」

「あぁ、たまらねェくれェ…。好きだ。」

もっと、もっとと、沖田の体を抱き締め、神楽はたまらなそうに目を瞑った…。

……To Be Continued…

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