act 13

「オイ。ありゃぁ何だ?」
土方が後、一cmで水割りグラスを口に付けようとする所で口を開いた。あぁ?。銀時は面倒くさそうに土方の視線の先を手繰った。丁度浅野が席に付いた所であり、神楽が顔を引きつらしている所だった。何だありぁ。土方と同じく銀時は声を漏らす。何を考えていたわけではない。ただ自然に隣の沖田に視線をやった。そして神楽の顔と同じように顔を引きつらせた。

「お、沖田くん?君、目が据わってるよ。だ、大丈夫かな?も、もう帰ったほうがいいんじゃないかと銀さん思うんだけど…。」
銀時に言葉で土方も沖田を見る。ぎょっとした。銀時が言っていた様に、完全に目は据わっており、このままでは二個目のグラスも割りかねない程の勢いでグラスを握り締めていた。銀時は思わずグラスを持つその手を剥がしにかかった。が、その手は中々剥がれない。ガラスのグラスが撓った。いよいよ慌てた二人は、二人がかりでその手を離すのに成功する。

沖田は、銀時が気付く前から、いや、もうずっと。神楽の事しか見てなかった。
カウンターの中で一人で居る事、先ほどの神楽とのやり取りで自分が口走った言葉を後悔すると共に、少々酔いが冷めた。神楽が自分の言葉しだいでは店をあがっていたと言う事も気付いた。しかし酔った先、苛立つ感情が表に先立ってしまったのだから、しょうがない。かといって、もう一度自分から店をあがってくれ。何て事を、プライドが高い沖田が言えるはずも無かった。

カウンター。義正の隣には近藤が居た。これにより、少しは感情が落ちついた。何だかんだ言っても近藤は、上の役人との掛け合い。隊士の募集。話術には長けていると知っているからだった。土方ほどまではいかなくても、十分フォローに回ってくれている。そう確信、信頼していたからだった。

しかし神楽は百合に呼ばれてしまう。神楽を見る、あの浅野と言う男。義正より性質が悪い。いや、純粋な分、義正の方が性質が悪そうだ。とにかくどちらも性質が悪いのだが、この浅野と言う男は強引さが強いと言う事が分かる。

百合の席に行った神楽の様子に、胸を撫で下ろす。席に付く意思は全く無いと読み取れたからだ。しかしその神楽の細い手を浅野は強引に引っ張った。神楽は前に引っ張られるように椅子に手を付いた。百合、椿とは異なり神楽の着物は短く、ゆえに前に強引に引っ張られた事で更に太股が露になってしまった。
コレを見ていたのが自分だけなのが唯一の救いだった。

ぶっ殺してやろうか。沖田はグラスを握り締めた。しかし神楽のきっぱりとした態度に気分を良くしたのも嘘ではない。神楽がカウンターに戻ると案の定義正が声をかけた。若干気に障ったが、すぐに近藤が会話にくわわり、安心したのは言うまでもなかった。しかし、義正の隣にあの浅野と言う男が現れた。今はカラオケにも皆飽きてしまったようで、それぞれが会話を楽しんでいる。お登勢の客の中にも、母ちゃんに殺されちまわぁ。などと言い、席を立ち、店の出口に足を向ける男もちらほらとしだした。

店の熱気をあげて居たのが、この客達だったので、この客が数人帰ると、店は一揆に静まり帰った。

百合の席、浅野の連れは、その会話に夢中になり、浅野が席を立っている事は、もはや眼中にないといえた。
お登勢の客も、既に二人になってしまい、椿が、カチャカチャとグラスなどを片していた。静かに飲むタイプなのか、表情を和らげ、お登勢と三人、日々の事、帰ったら自分を待っててくれるカミさんの事、仕事の事、飲む量を押さえ。話しを楽しんでいるとみれた。

土方と、銀時は神楽の方へと目を向けつつ、この店で沖田が暴れないようにと必死だった。土方は沖田が暴れることによって、その修理費が請求され、近藤、そして新撰組まで巻き込んでの負債になるのを恐れた。銀時は、沖田が暴れる事により、神楽との関係がばれてしまい。暴れられたら最後、身内扱いされ、自分の負債が家賃にくわえ、更に増えるのを恐れたのだった。


……To Be Continued…

作品TOPに戻る







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -