act 1

※こちらの小説は、現在のコピー本の物語です。
小説は、漫画と違い、ちょっとパラパラと見ただけでは
その物語の奥深さ、内容、面白さは、伝わりぬくいんです。

なので、途中まで公開していきます。


「神楽ちゃん、どうっスか?」
「ちょ…待つアル…。い、居た!居たアル!」
「エッ!、ちょっと私にも見せて欲しいッス。」

――――ちょっと前まで、元気よく蝉の鳴き声が重なり合い、うっとうしくも、心地よくもあった温度は、少しずつ下がって行き、その季節を秋へと移らせていた。
短い制服のスカートにニットを合わせ、学校帰りのおきまりパターン。目的の、その時間が来るまで、いつもまた子と神楽はぶらぶらうろうろとしている。途中ナンパされ、それを撃退しつつ…。
下校時間、話し内容は、もっぱら自分の意中のあの人の事。公園で時間潰して、ファーストフード店で雑談して、本屋に立ち寄って。
 何度も何度も時計をちらちらと見て…。そんな二人のうち、こらえきれなくなったように口を開いたのは、また子だった。
「ね、そろそろじゃないッスか?」
神楽は、頷く。
早く、早くとお互いを急がせるようにその場所へと足を向けたその先…。


―――――午後7時30分――――

居酒屋【よろず処】に、いつもの様に神楽、また子は来ていた。
来ていたと言っても、店内に入って食事をするのではなく、入り口のドアに顔だけ覗かせて、中に居る二人の男をチェックしているだけ。
まるでストーカーの様に訪れだしたのは、つい最近の事だった。
きっかけは、部活の打ち上げで、この店を利用した事。

その日は、テニスの大会であり、また子と神楽ペアがダブルスで準優勝を飾った。ギリギリまでの接戦の末、わずか一点差での負けだった。
しかし、後悔する事無く、とても清々しい気持ちだった。家に帰り一度シャワーを浴びて、適当な服でまた子との待ち合わせ場所にへと神楽は行く。居酒屋に行った事も無い二人、少しワクワクする。興奮する気持ちを抑え、店内に入るとその熱気と広さにまず驚いた。

大きな声で店員を呼ぶサラリーマン、おしゃべりに華を咲かせるOL。せわしなく動く店員…。様々な声が重なり、異様にテンションが高くなりそうな雰囲気に飲み込まれそうになる。
客の7割は女性客。確かにサラリーマンも多いが、仕事帰りのOLの姿の方が目立っていた。家族ずれもちらほらと見え、その活気溢れる店内に、神楽とまた子は思わず唖然となっていたが、不意に聞こえた後ろからの声に思わず二人して振り向いた。
「お客さん。そんなトコに突っ立っていちゃ邪魔ですぜィ。」
まず固まったのは神楽の方だ。さらさらのキャラメルブロンド、整った顔、スラッとした体。
文句のつけようが無いその男から目が離せない。ガヤガヤとした店内も、神楽の周りだけ、音も空気の流れも止まってる様に思えた。
突っ立っている神楽を、また子は肘で小突く。しかし神楽は全く動かず、ただただ男に瞳を奪われていた。
しかし男はそう言う事が日常的によくある事なのか、動じず神楽の横をすり抜けていった。
「ちょ、神楽ちゃん、意識戻して、コッチ側に戻って来て欲しいッス」
神楽の目の前で手をひらひらとさせるが、一向に戻ってくる気配は無く、仕方なくずるずると引きずって行く。広い店内をウロウロとしてると、奥の座敷から後輩がちょこんと顔を出すのが分かった。やっと居たァ…。と、また子は安堵の表情をあらわし、神楽と二人、座敷にあがる。何を注文するとの声に、神楽はピクリと意識を覚醒させ、高速で口を動かし、次々に食べたい物を上げていく。そんな様子を、げんなりと横でまた子は見る。
「さっきの乙女心は何処に行ったッスか?」
「べ…別に…。」
「何が別にッスか、あんな乙女100%の顔しといて。」
「そんな顔してないアル!」
ほっぺたを風船見たく膨らませる神楽にハイハイと相槌(あいづち)を送りながら、また子は軽くあしらう…。まだ納得のいかない神楽だったが、座敷に入ってきた人物の顔を見るなり急に大人しくなる。固まった神楽の視線の先を見るとまた子は納得がいった。先程の男。正直また子はどうでもよかったが、視線をそらす瞬間に男の後方から、別の料理を持ってきた男に、今度はまた子が瞳を奪われた。
紫がかった髪。切れ長の片目…。
神楽の事なんて言えたモンじゃない。完璧に、一瞬で心を奪われた。

神楽が注文したおかげで、テーブルの上には、ありとあらゆる料理が並んだ。確かに女子テニス部員総勢だが、こんなに注文してどうするんだと普通なら引いてしまうレベルだ。しかも、余計な事に命知らずの後輩の1人、うららが口を開いた。
「神楽先輩、またちゃん先輩、ちゃんと注文した分食べてくださいね!」
無邪気に笑う、うららをよそに、二人の顔はいっきに赤みがさした。、瞬間湯沸かし器の様な早さで心臓が跳ね上がった。恥ずかしさのあまり、言葉を発する事ができない。しかしその黙った華奢な体から、みるみるうちにぐちゃぐちゃのオーラが沸いた。うららはヒッ!っと顔を引きつらすが遅い。
『後で絶対シめる!絶対殺す!』
その殺気を全身で叩きつけた。
うららは、何を其処まで怒っているんだと、顔面蒼白になる。神楽の大食いと、それに続くまた子の食いじの悪さは、テニス部員であれば有名だった。むしろ部員じゃなくてもクラスメイトであれば誰でも知りえる事だった。うららは、全身から溢れる怒りのオーラに身を奮わせ、視線を思い切り、恐いィィと、そらしたのだった。

怒りに身を震わせていたので、二人は、そのクツクツと笑う声に気付くのが遅れてしまった。
気付き、ハッとし、その声のする方を見る。しかしその時にはその背中は座敷から出て行くところであり、まだ笑いがおさまらないように背中を震わせていた。神楽とまた子は、クラクラと、首をうな垂れさせ、その目を瞑ったのだった…。




……To Be Continued…

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