act 4

「ね。コレ、どうかな?」
雅は蒼と隼人をショップに呼び出す。二人が立ち上がる際、思わずため息が漏れた。
女の買い物は長いと、初めて知った瞬間だった。
雅は鞄を指指して、隼人と蒼を交互に見た。
「小学校6年生…なんですよね。ピッタリだと思います。」
雅は蒼に微笑んだ。
「これで気に入らないなんて言ったら怒るからね。」
寧々は隼人に言う。蒼と二人、その鞄を見つめた。

『沖田 朱璃』
総悟の朱色、神楽の瑠璃色から取り、今度こそ二人でな名づけた名前。おきた、しゅり。

性格は、神楽の情の熱く優しい所を取った。容姿?神楽と総悟の一人娘が可愛くないわけがない。
女に対して、冷徹非道っぷりをおしげもなく見せる蒼と隼人だが、母親と妹には、弱かった。
特に妹の可愛がりっぷりは、周りが目を見張った。朱璃が微笑むと、隼人も蒼も、どんなに機嫌が悪かろうが、
どんなに喧嘩の後でイライラしてようが、柔らかく微笑んだ。
隼人、蒼、総悟と同じハチミツ色のストレートの髪を肩の所で揺らし、笑うと、いつもその頭を二人は撫でてやった。
そして、その鞄を見る、その視線も、とても優しかった。

隼人は蒼をみる。うん。いいんじゃねェか?蒼はそう頷いた。
自然に雅と寧々にも微笑が浮かんだ。
可愛くラッピングされた鞄を雅は隼人に渡す。
空はもう暗く陰り始めている。雅は、じゃ、帰ろうか?そう寧々に言った。
しかし、それを隼人が待ったをかけた。何か奢るとの提案を持ち出した。しかし此処でも雅はNOと言った。
理由は簡単、いつもと同じだった。
しかし蒼も粘った。もうすぐ暗くなる。そんなに見えないからと。寧々を見る。
寧々はわざとらしく視線をそらした。どうしていいかわからない…。そう顔に出ていた。
雅は考える。ふむ。一応礼くらいなら受け取っても支障ないかと。
雅がいくのなら、と寧々も答えた。女を口説くのに、かつてこんなにも苦労した事はない。

しかし、どうだ。この感情。正直顔がにやけてしまう。味わった事のない気持ちに戸惑いを隠せないのは二人とも…。

さて、どうしようか…。この二人相手だとどうも、身構える。何が気に入って、何が気に入らなく帰ると言い出すか分からない。とりあえず隼人は聞いてみることにする。

「何が食いたい?」
「ぅぅ〜。ハンバーガー。アイス。クレープ。お団子。ケーキ。お肉。野菜。果物。お菓子。ジュース――――。」
「ちょ、待て待て、そんなに食えんのか?てか肉って何?野菜って?果物?意味わかんねェけど。」
「だって…。でも、どれかを食べたいの。」

蒼は寧々に聞く。
「何か食べたいものありやすかィ。」
「っえ?あ、あたしは別に…。」
「それじゃ、礼になんねェや。今雅が言った中で何か一つ。言って欲しいんですがね。」
「あ、じゃあ、ジュース…。」

あ、やっぱり。蒼はそう思ってしまった。寧々の事だ。恐らくジュース一本。そういう気がした。
しかしコレ以上粘ったトコでそれしか言葉が出てこない様な気がする。それで手を打つことにした。
しかし雅は、一旦礼をしてもらうと決めたので、妥協しない。ジュースなんて礼の一つには入らない。常識の範囲だと言い出し。真剣に考える。

外の日はとぷんと沈んだ。しかし、賑やかな街。ゆっくりとネオンの灯りがつく。
よし、雅はそう隼人の制服を掴む。まずは…。そう言いながら引っ張った。あっ。寧々は雅を視線で追う。
蒼はその寧々の手をゆっくり掴んだ。寧々は手を無意識に引く。しかしそれより強い力で蒼は握った。
寧々は恥ずかしそうにその顔を俯かせた。蒼は寧々の髪を耳にかけた。
「顔だしてる方が綺麗ですぜィ。」
たちまち、寧々の顔は真っ赤になった。
「その顔も結構そそられやす。」
「なッ…。そ、そんな事言わないで下さい。」
寧々の握った手にきゅっと力が入る。
か細い声。蒼はクツクツと笑った。
「あんたのそんな声初めて聞きやした。」
「そん、そんな事…。もぅ、しゃべりません!」
あっ。やべ。癖になりそうでィ。蒼は思う。珍しく寧々は拗ねた様にそっぽを向いてしまった。
しかし、やっぱり手は繋がれたまま。蒼がそっと力を込めた。
そっぽを向かれた表情の向こう側、寧々の顔はくしゃりと染まった。


「何これ?もしかして誘ってんの?」
掴まれた制服を見ながら隼人は言う。ぅをっ!雅は勢いよく離した。
その手を隼人は掴んだ。
「別に離せなんていってねェけど。」
「だだだって、こんなトコ人に見られたら!」
「じゃぁ。こうすれば誰にもわかんねェだろ?」
そう言うと、隼人は雅の手を握り、自分の制服のポケットに突っ込んだ。
「う、うひゃぁ、な、何っッ!!」
「こうすりゃ誰にもバレねェだろ?」
隼人は口元をあげ。笑った。
だって、くっつき過ぎ…。そう雅は初めて顔を赤く染めた。
こんな感情、味わった事ねェ。何コレ。まじやべェんだけど。
つか何?この抱きしめたい的な要素。
しかしそんな事をすれば、即帰られる事も分かっている訳で…。
ならばと雅の手をポケットの更に奥へと持って行く。当然雅の体はくっつく。
隼人!!小声で叫ばれるその甘い声。
「大丈夫。誰にもバレねェよ。」
平然と話す隼人。
そんな問題じゃ…。そう雅の顔はくしゃりと染まった…。


……To Be Continued…

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