act 8

嬉しかった。総悟が、キスしてくれて。ココロの氷が溶かされたノ。
凄く、凄く、嬉しかった。多分、あたし。やり方は間違ってたけど…。
うん。無駄じゃなかった気がする。何となく、お互いのココロの奥、覗けた気がした。
こんな事して、良かった…。なんて今も言えないけど、きっかけになったヨ。
これであたしと総悟。きっと…きっと…。

.....

頬を染めて出た先、神楽の視界に入って来たものは、信じられないものであり、其処に唖然と立ち尽くす。
そこへ、お登勢が、声をかける。
「あぁ、其処にいたのかい?丁度いいところさ。椿、百合。」
唖然と立ち尽くす神楽にと、呼ばれた二人は振り返った。お登勢は言葉を続けた。
「今日は忙しくなりそうでね。あんたを客の席につける訳にも行かないんで、今日だけ、なじみの店から貸してもらった子達さ。」
まだ、突っ立ったままの神楽に、2人はお辞儀をした。
椿。そう呼ばれた女性は、綺麗なストレートの腰までの髪。淡いピンクの着物に、華が散りばめられている。
年も20歳と若い。どちらかと言えば、見た目は少々きつそうな、しかしその顔は綺麗で、より引き立っていた。

百合。そう呼ばれた女性は、ミツバほどのショートカットで、真っ白な着物に百合を咲かせていた。柔らかい頬笑みは、間違いなく男を虜にしそうだと思えた。そして、椿と同じ20歳。
二人とも、神楽の様に短い着物ではなく、お妙の様に、足を隠ししっとりと着こなしていた。

対照的な二人だが、身振り、仕草、共にプロのホステスだと言う事が、嫌でも分かった。
百合は、沖田にぴたりとくっつき、沖田の足に手を沿え、話しをしていた。出てきた早々。神楽は顔を歪め、唇を噛んだ。沖田は、百合をまったく相手にしては居なかった。が、神楽が出てきた事に気付くと、ばつが悪そうに項を掻いた。

唖然としている神楽に、義正が席を立ちあがり、手を引いた。
刹那、沖田の瞳がかげる。
義正は、お登勢の目の前のカウンターに座り、神楽を促した。冷めちゃったけど…。そう言いながら出された肉まんを神楽は手にとり、おずおずと義正の隣に座った。
はむ。一口。おいしい?義正が聞いてくる。神楽は軽く微笑みながら頷いた。しかし意識は背中越しの会話にいく。

今日は、他にも何組かくる予定だとお登勢は言った。しかし銀時から預かりもんの神楽を客につかすわけにも行かず、かといって自分ひとりでは手が足りない。この百合、椿と言う女の子は、若いながらも話術にたけており、あしらい方も上手い。たまたま女の子が足りていたと言う事もあり、快く貸してくれたと言う。

本当は、沖田や銀時の席にはつけなくてもいいだろうとお登勢は思ったのだが、二人自ら席についたと言う。
ふーん。神楽は言った。後ろの会話は、誰も皆、とりたて興味がない様な相鎚を打っていた。
銀時でさえも、興味ないように声が聞こえるのはやはり神楽が居るからと言う事もあった。
それでも椿と百合は、嬉しそうに話しかけた。これほどの男に囲まれると言う機会は、ホステスといえど、中々ないらしい。近藤は、少々微妙だったが、残り三人は間違いなく女がほっておかない面がまえだ。

椿は土方の足に手を添えた。土方は面倒くさそうに息を吐いた。
いつもの土方ならもう少々キツイ言い方をしそうなもんだが、この椿と百合と言う女。聞くところによれば、近藤の上司、松平片栗粉のお気に入りだというのだ。下手な事をすれば、自分達にとばっちりが飛んでくる。
ひいては近藤に迷惑がかかってしまう。その思いから大人しくと言う言葉が二人におさまったのだった。

沖田は、百合の話しを適当に、その視線は神楽と義正に向けられていた。
神楽ちゃん、ここに付いてるよ。そう言いながら義正は神楽の口元に触れた。
瞬間、沖田は立ち上がる。と其処で、近藤に肩を抑えられ、立つ事が出来なかった。
頼むから暴れないでくれ…。そう近藤の顔は引きつって居た。土方、近藤、銀時。三人は、沖田と神楽が、続けさま手洗い場から出てきた事で、何かしら感ずいた。本当は、義正を説得しようと試みた。だが、丁度、義正の携帯がなり、一旦外にでてしまい、帰ってくると同時に椿と百合が入ってきてしまった事でタイミングを逃してしまったのだった。
沖田は、近藤の顔を見ると、ため息を付いた。
神楽は、後ろをちらりと振り返った。沖田と視線がかち合う。沖田が鋭い眼光を神楽に向けた。
神楽の顔は少々引きつった。その神楽の視界に、百合が頭をこてんと沖田にしなだれかけたのを入れる。
神楽はたちまち顔を歪ませる。そしてぷいっと振り返ってしまった。そして、大きな口で肉まんをほうばった。
口に入れすぎた所為で、神楽は咽た。義正は神楽に水を渡しながら背中をさする。そして大丈夫?そう顔を近づけた。
沖田の瞳は再び黒を帯びる。

近藤は、義正の頼みを聞いた事を心底後悔した。
土方は、近藤の頼みを聞いた事を心底後悔した。
銀時は、土方の頼みを聞いた事を心底後悔した。

まだ、まだ夜は長い。これからの事を考えると、既に帰りたくてたまらない三人だった…。

……To Be Continued…

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