act 10

何で?いつ?・・・何処で?

急速に心臓はドクドクと音を立て出す
まずは、落ち着いて・・・冷静に・・・えっと・・何処まで持っていた?
駄目・・分からない・・全然思い出せない
ずっと持っていたような気もするし、すぐになくしたような気もする・・

どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・




立ち尽くす神楽。額には一気に冷や汗が吹いた
喉を鳴らし、とりあえず落ち着こうと頑張ってみるが、全くの無駄。
後から後から感情が吹き出てくる・・・せっかくの指輪・・あんな素敵な指輪・・・

帰ったら笑顔でありがとうって、そんでごめんねって言うつもりだった

バチがあたった・・・?総悟にヒドイ事言って、勝手にこんな所まで黙って取りに来て、人のお財布からお金取っちゃって・・神様がバチを与えたのかも・・

知らず知らずに呼吸が浅く、早くなる

仲直り所か・・・本当に、今度こそ本当に・・・・別れるなんて言われたら・・・!!

とにかく神楽は動く。もう一度あのファミレスに戻る。
店員に聞くが、片付けた時には何も無かったと言う。ならばココは違う・・
もしかしたら道に落としたのかも知れない・・。

自分が歩いた場所を、もう一度隅々まで丹念に探す。大きなお腹抱えて、急いで・・・。
しゃがんだり、格好悪くても・・道の隅っこまで丁寧に探す・・

もしかしたら、落として取られちゃったのかも知れない・・
考えると、瞳に込み上げてくるモノ・・・潤んだ瞳を手で擦り、探す
本屋のトコまで、とにかく這いつくばって探しながら戻る。本屋の前・・本屋の中・・店員にも聞いて・・
でも本屋の店員もしらないと言う。どうしていいか分からない・・。
後は・・宝石店の前。ベンチ・・・。

道路を横切りながら、其処でも探す・・でもやっぱり見つからない・・
後は・・・後は・・・急ぎ足でベンチの前に来る。
荒くなった呼吸を整え、深呼吸をする。ゆっくり下を見た・・・・




な・・・・・い・・・・



我慢していた涙が一気に溢れた・・・
どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・どうしよう・・・
嫌われちゃう・・怒られる・・・別れられる・・・
せくりながら、涙は止まらなくて・・・どうしたらいいか分からない・・

『素敵ですわ・・綺麗・・愛されてますね・・・・・・・・・・・・』

脳内で言葉がぐるぐると回る

最後に控えめに聞いた・・コレって高いアルカ・・・・?
その言葉に、もう一度、微笑みながら言った女性の言葉・・・

「お客様は、本当に沖田様に愛されていらっしゃいますよ」

肯定も否定もしなかったけど、自ずと分かった・・・

大切な宝物なのに・・・
ありえない早さで心臓の音が鳴る。もう本当に飛びでてくるんじゃないかって思うほど・・
どうして・・・仲直りのきっかけ・・・二人を強く強く結ぶ指輪だったのに・・
もしかしたら・・これがきっかけで、本当に駄目になっちゃうかも・・本当に許してくれないかも・・
もう・・二度と笑ってくれない・・


そんなの嫌!・・・絶対いや!!
そんな事させない!絶対見つけるんだから・・・




もう一回・・・最初から・・探さ・・・・

「ぅあぁぁ!! い・・痛い・・何か変アル・・・・・・何か・・はぁ・・はぁ・・・・」

急に顔が歪む。
この間の痛みとは比べ物にならない・・冷や汗所の話じゃない。
立ってられなくなった。ベンチにすがるように体を支える。呼吸が浅く、何度も何度も声を上げる
長い間歩き過ぎたためだった。探すのに夢中になったことで、体に相当の無理がかかった
しゃがみこみお腹に圧を無意識にかけてた・・。探すのに夢中で・・走ってた・・
同じ所、行ったり来たり・・相当な時間を歩いた・・

負担がかかりすぎたのだった・・・・


「だ、大丈夫ですか?!」

異変に気付いた、道行く人が声を神楽にかけた。その中の一人はすぐに救急車を呼ぶ
一人が気付くと、異変に気付く人が、どんどん神楽の周りを囲む
神楽の額の汗を女性が拭って、大丈夫!大丈夫と励ます

「うぅ・・痛い・・お腹痛いヨぅぅ・・総悟・・総悟ぅぅ・・」

悲痛に泣く。痛くてたまらない。どうして赤ちゃんまで・・・
失いたくない・・・赤ちゃんも・・総悟も・・・
痛くて・・辛くて・・総悟が側にいないのが心細くて
何で手を握ってくれないの?自分でこんな所まで来て置きながら強く思う
何処見てもいなくて・・寂しくて・・でも今来たら指輪の事・・・・


「指輪・・・指輪ぁぁ・・どうしようぅぅ・っふ・・っ・赤ちゃん・・赤ちゃん・・っ・・」

痛くて、失くした事が辛くて、せくる・・せくる・・せくる
急に呼吸がくるしくなる。異変に気付いた女性の中の一人が、買い物袋の中身を全部だし、口にあてがう

極度の精神状態・・過呼吸を起したのだった

そして、背中を擦りながら、落ち着いて・・・と優しく微笑む
もうぐちゃぐちゃで・・・何が何やら分からない・・・

人だかりは更に大きくなって・・・そうこうしてると救急車が来る
人だかりは左右に散らばって・・隊員が神楽の体を優しく担架に乗せる


お腹の痛みが少し落ち着く・・呼吸も楽になってきた
でも、待って・・・私まだ指輪探してない・・ねェ・・探してない・・・

担架の上、少し上体をあげて、手を伸ばす
指輪・・探さなきゃ・・・見つけなきゃ・・・・・・

「指輪・・・」
その体を、隊員が再び担架へと沈ませたのだった・・・

....

やはり出て行くべきでは無かったか・・?
どちらにせよ、不安にさせたのではないか・・しかし、あの時はああするのが精一杯だった
喧嘩になって、また前の繰り返しになるよりは、自分が頭を冷やすほうがいいと考えたのだ

ブラブラと街を、意味もなく巡る。何処に行っても、やっぱり心配なのは神楽の事
ならばいっそ帰った方が自分自身も落ち着くのではないだろうか・・そう考える

しかし、やはり、今帰ってもしも、まだ屯所にいたとすれば、どの様に顔を合わせればいいのかが分からない
そんな事を考えながら、うろうろと街をうろつく
人通りの多い公園に座る。ガヤガヤと通る人の多さに、神楽とよく行くあの公園の方が静かで良かったか・・・
などと考えたが、ココはココで余計な思考を止めるには丁度いい・・とアイマスクを取り出し、装着した
歩く人並み、相変わらず話し声が耳から絶えなく入ってくる。時折、声をかけてみようよ!などと言う、黄色い女の声が聞こえてくるが、無視して自分をまどろみの中へと追いやった



起きた時には、幾分頭もスッキリしており、コレなら、もしまだあいつが屯所にいてもスムーズに話が出来る。そう思った。が、しかし、神楽は屯所には居なかった。
総悟は若干・・いや大分安堵した。出来ることなら正直、今は会いたくなかった。
ゴロンと寝転がる。テレビをつけ、パッ、パッとチャンネルを変えた。部屋にテレビ音が流れる。
先程神楽が居なくて、安堵した。確実に安堵した自分。それがどうだろう。こんなにも今神楽が恋しい

寝転がり、右肘を付き、面白くもないテレビを見る。
いつもなら、大抵自分の前にすりすりとすり寄ってき、左手を神楽のお腹を囲うように、神楽を包み、テレビを見ていたのに・・

部屋を出際、何か神楽は言おうとしていた。もしかしたらその時謝ろうとしていたのかも知れない
今頃あの泣き虫は、万事屋の中で泣いているかも・・・


無意識の内にため息を付く

(電話すっかねェ・・・)

自分の袴を探る。
が、携帯が見つからない、何処かに落としたか?いや、そもそも最初から持って行くのを忘れていた・・
そう気付き、探す。その時、スパァァァンと空けられ、出てきたのは

「コルァァァ!!携帯に電話してもちっとも出やしねェ!!非番の日でも携帯だけは所持しろって何回言えば気が済むんだテメーわァァァ!!」

一瞬神楽かと思った総悟だったが、土方と知るや否や、思わず舌打ちをした

「ヘイヘイ。俺も携帯探してたんでさぁ、ちょっくら待ってくんなせェ。見つけたらかけ直すんで・・。」

「かけ直さなくても、今話すからもういいわぁぁ!ボケェェ!!」

ご立腹の土方を他所に、携帯を探す
まだ怒りのおさまらない土方は、この際ほっとけと探す。そして台の下に落ちているのを発見する
一瞬、なんでこんな所に・・・とも思ったが、そこは深く考えづに居た。
携帯画面を見てみると、おびただしい数の
『神楽』からの着信数。

(こりゃ相当怒ってンなぁ・・・)
頭の後ろ・・項(うなじ)を掻く。どうやって謝るか・・今から言って謝ってくるか・・
そんな事を考えながら、ピコピコとボタンを押す。土方の着信も、しっかりと、神楽と張るほどの勢いで表示される

「あれ・・・」
登録されてない番号。しかしこの番号は確か・・
指輪の注文をして居た店の・・だがどうしてだろう。通話された事になっている
首をかしげながら、その番号を押す。土方は一通り文句の言葉を並べて、そして、総悟の耳に自分の声が入っていないと分かり、舌打ちをしながら部屋を出て行った

総悟の耳に、コール音が響く。一回・・二回・・三回・・・

プッ・・・

繋がる音と共にでた女性の声。この声の持ち主は担当の女性の声だとすぐに判別する

「あっ。スイヤセン。沖田ですがね、携帯にかけてくれた見てェなんですが、通話されてるみてェで・・」

「お、沖田様ですか?!沖田様ですね!!」
だから、最初に沖田と言ってるが・・・そう沖田は思わず思う

思わず耳鳴りがなりそうな声が向こう側から聞こえてくる。営業用の声ではなく、普段の女性の声。半分悲痛に叫ぶようなそんな声・・面食らった総悟だったが、ハイと答えた・・・




「ッチ・・あの総悟だきゃぁ俺の言う事を聞きゃぁしねェ・・」

ブツブツと文句を言いながら、長い廊下を歩く土方の後ろから、もうスピードで走ってくる総悟が居た

エエーーーー!!!

目をまん丸にさせる。しかし、その総悟の表情。おかしい・・何かあった
的確にそう判断させると、そのまま通り過ぎていこうとする総悟の手を掴んだ
一瞬の殺意の目。構うな・・そう言っていた。しかし、怯まない土方。何があった、と聞く。しかし、総悟は離せ!と
凄い力で振り払ってきた。いよいよ何かあったと考えた土方。射抜くような目で総悟を見た

「何があった。簡潔でかまわねェ。話しやがれ!!」

苦みばしった表情を向けたが、諦めたように早口でまくし立てた
どんどんと目が見開いていく土方を見ながら・・




............












自動ドアが開くのを待てないように体をすり抜けさせ、急ぎ足で中に入る
入ってすぐ、受付の所に走り、救急車で運ばれた神楽と言う患者が何処に居るかと、まくし立てた。
受付の女は、その気迫に少々驚いたが、別にこんな風に家族の者がまくし立てるは、病院上珍しくないことなので、慣れた手つきで早急に調べ上げた。4階病棟。あそのこエレベータをお使いください。簡潔に説明する。総悟は、軽く礼をし、再び走った。


........


『お客様が・・お客様が・・・救急車で・・・・救急車で・・!!!』

一瞬聞き間違いかと思われた言葉。お客様。何故神楽がそこに行っているのか、通話された痕跡を妙になっとくした自分が居る反面、真っ白で何も考えられなくなっていた。
宝石店のあの女性・・。外が騒がしいと出てみると、其処には担架に運ばれそうな神楽、思わず人の隙間から神楽の元へと行く。
目を空ろにさせ、指輪・・と言っている。思わず声をかけようとしたが、隊員は神楽を乗せて出てしまった。最後、隊員に聞いた病院の場所。

集まる人だかりに、神楽の荷物を持っている女性を見つける。
事情を話し、荷物を貰い、神楽の携帯からの方が出るのではと何度も何度もかけた。
だが出なかったのだ・・そして、時間が立った頃、祈るように早く早くかけてきて・・。

そう願う女性のもとに、神楽の携帯の着信音が鳴る。
接客中であるにも関わらず、女性はポケットにしまっていた神楽の携帯を取り、悲痛の声を上げたのだった・・・

.......


四階に着く。又もや体をすり抜けさせ、ナースステーションへと駆け寄った
呼吸を整え、ゆっくりと、運ばれた神楽と言う患者は・・と聞く。
すると担当ナースの一人であろう女が沖田を見つけ、少々お待ちくださいと先生を急ぎ足で呼びに行く。
担当医は、駆けつけ、沖田の顔を見るなり、安堵の表情を見せた

ご家族の方ですね・・
その担当医の質問に、ハイと答えた総悟・・

「よほど強い精神的ストレスのためか、過呼吸を一度起しています。それと・・切迫早産をおこしています。今現在張り止めを点滴しているので、・・・赤ちゃんは大丈夫なんですが・・・」

総悟はその場に立ち尽くす。
過呼吸・・?切迫早産・・?
強い精神的ストレス・・?
何だそれ・・・・

こいつが苦しんでいる時に、自分は何してた・・・・?

思わず顔を歪めた・・・

・・・
個室・・・。ゆっくりと、ドアを音を立てないよう開ける。薄いカーテンの向こう、音を立てないように入ると、ベットが横向きにおいてあり、そのベットに神楽は背中をさする看護師に背を向け・・ただただ・・泣いていた・・。

『どうしたモノか、ずっと泣いているんです。赤ちゃんはもう大丈夫だと言ったんですが、泣いてる理由はそれだけじゃないみたいで・・また過呼吸を起す可能性もありますし、興奮し過ぎて、何で陣痛を引き起こすか分かりません。看護士が慰めているんですが・・どうにも・・』

担当医の言葉が一瞬脳裏を巡る

先に総悟に気づいたのは看護師の方だった。目と目があった瞬間、総悟はシーと口に手をやり、微笑みながら頷く看護師と椅子をゆっくり交代させた。
そして、先程看護師がやってたように、反対側を向きひたすら泣く神楽の背中を優しく擦る
そんな二人を見ながら笑みを見せ、看護師はそ〜と部屋を出て行った


「っ・・・っふ・・・うう〜〜・・」
泣きながら、背中を震わす神楽を後ろから見つめ、思わず手を頭に添えようとした・・その時、神楽が口を開く

「・・もう駄目アル・・絶対・・別れる事に・・・・っ・・・・指輪ぁぁ・・・っふぇぇ・・そんなのやアルぅぅ・・・」
神楽頭上、止まっていた手を今度こそ、下にとおろした。
泣き声がピタりと止んだ・・震わせていた背中の振動も同じように止まる。しかしその顔は振り向く事はない

(この・・感触・・)

動かない背中とはうらはらに、別の理由でドクドクと音を鳴らす真ん中のハート。
触り方一つで、すぐに分かる。だてに何年かを、一緒に過ごしてきてない・・間違いない・・。
でも・・何で?・・恐い。振り向くのが恐い。振り向けばきっと聞かれてしまう

どうしてココに総悟が居るの?
いつから居たの?
さっきの自分の言葉、聞かれてた・・?

きっと指輪の話しになる。そしたら・・・・・・そしたら・・・・・

泣かないようにって、下唇を噛む
口をきゅって結んで、それでも、瞳から、ぽろって涙が落ちる。それを手の腹をつかって頬の上で擦る
落ちる・・擦る・・落ちる・・擦る・・・・・・・・・

ゴクンと喉を鳴らし、顔を布団の中に隠す
もう気持ちなんて、本当にぐちゃぐちゃで、どうしていいか自分でも分からないくらいで・・逃げたかった・・

「指輪くらいで別れるわけねェだろうが・・」
低い声で話された言葉・・思わず布団の中で瞳を真ん丸くさせた・・
しっ・・・てる・・・?


「神楽」

呼ばれた声に、ビクリとなる体。無理・・硬直したように、手も足も顔も体全部が・・動かない・・

椅子を立つ音がした。思わず思い切り布団を被る。こつんこつんって、ゆっくり自分の前に回りこんだのが分かった
自分の真正面、立ってるのがわかる。内側から布団をぎゅって握って、ちから一杯込めて・・震えた・・
袴のすれる音。ベットの高さまでしゃがんだのが分かった
全身に神経研ぎ澄まして・・でも何も考えられなくて・・とにかく恐かった

「出てっちまって、悪かった・・・」
布団隔てた向こう側・・・総悟の声がした・・・
悪かった・・・言葉聞いて、ちょっと力が緩む・・。だって私が悪いんだヨ・・・

その少し開いた隙間から、ゆっくり総悟の手が入ってきた。反射的に掴んだ。ぎゅううって・・・恋しくて・・。
ゆっくり、めくられて行く布団・・・
涙交じりの神楽のぐしゃぐしゃな顔が出てきた

「ごめ・・ごめん・・ゆび・・」
神楽の儚い声を掻き消すように、総悟はゆっくりと神楽の口に重ねた・・
軽く・・・ちゅっと音を立てて・・・何度も・・何度も・・
興奮状態が、嘘の様に、総悟のキス一つで、体が落ち着いていく・・・
うれし涙が、ホッペに一回だけ筋を作った・・・



「世話焼かせやがる・・・俺以外にテメーみたいなじゃじゃ馬・・扱えるわけねェだろィ?」
笑いながらそう言うと、沖田は神楽の左手を取り、その薬指にするりとはめた・・



「こ・・・れ・・・」

見間違うはずもない・・正真正銘の・・あの指輪
思わず神楽は総悟の顔をみた。

確かに神楽は指輪を忘れたのだ・・最初のベンチで・・。そのベンチに、丁度運よく、神楽と同じように指輪を買いに来ていた男性客が、店内から出てき、ベンチに座ったトコで気付く。出際、思わず神楽に見とれた一瞬の間。確かに持っていたあの袋だと思う。すぐに男性客は店内にもう一度入り、事情を説明する。
神楽と話していた、あの女性スタッフ。丁寧に男性にお礼を言い。おそらく神楽が探しに戻ってくるだろうと考える
総悟にその時点で知らせなかったのは、落としました・・なんて、わざわざ喧嘩の火種になるような事は避けるべきだと判断したからだった。

そして、事が起きてしまい、神楽に告げることが出来なかった言葉。
更に繋がった総悟との通話。是非とも、病院に行く前に、寄って貰いたいと言う。最初総悟はその話を突っぱねたが、この指輪こそが今回の発端なので、どうか、と神楽のためにも・・・と。

うりゅ〜と涙を滲ませたのは神楽だ。愛しそうにその左薬指にある指輪を強く抱き締める・・・
神楽の頭をくしゃくしゃとするのは総悟だ・・・

「ごめんなさい・・・全部・・・ごめんなさいアル・・」
うれし涙流しながら謝る・・・そんな神楽の涙を拭って笑う総悟

バタバタと、さっき総悟がした様に駆けつける足音・・六人分・・・
総悟の話を聞いた土方・・とりあえず総悟に行けと言う。その後はさすがフォロ方十四郎だ
まず、万事屋に連絡を取る。そして、車を出す。万事屋に駆けつけたときには、話を聞いたお妙も来ていた
皆を乗せ、車を出す。途中山崎、近藤の乗ったパトカーとすれ違う。中にはお妙。

私情を含めた近藤は、お妙を追う。そして後ろに気付いた新八。改めて携帯で事情を話す
総悟含めた白黒の車三台・・・一般人が見たら何事かと思うだろう。
受付の所に来て、礼儀もクソもない。気迫迫った銀時にヒィィと怯えながら受付嬢は4階と教える
うぉぉぉぉ!!とエレベーターを無視し、階段を駆け上るのは銀時だ

そして四階へと到着した

神楽の部屋へと、6人まとめて足を向ける
土方、近藤、山崎にいたっては隊服のままだ。看護師も驚きを隠せない。程なくして神楽の部屋が視界へと入る

其処には看護師3名。覗くように部屋の中を覗いている

「いいなぁ〜あんな格好いい人にプロポーズされて・・」
「私もされたい〜」
「アンタもう人の妻でしょうが!」
エヘヘと笑う看護師・・銀時らに気付くと恥ずかしそうに去っていく

同じように、ゆっくりとドアを開ける。
顔を、覗くように部屋の中に見入る・・・
「ずっと側には居られねェかもしれねェ。それでも涙くらいはこうして拭わせてくれねェか・・この先も・・」
銀時らに見えるのは、総悟の顔のみ。神楽は背を向けている

その背中がかすかに震えながら、言葉が話された
「泣かせてるのもお前ダロ・・・先に泣かさない様に気を・・付けるネ・・」

ツンと出た言葉。思わず皆で顔を見合す・・・
でも・・・・
神楽の再度口から出てくる言葉に、又もや皆は全神経を二人の方に集中させた

「お前みたいなドS野郎は・・私以外に扱える奴なんて居ないアル・・・だ、だから・・・だから・・・」
もう既に結婚するって決まってるけど、赤ちゃんだってお腹に居るけど、
女の子だもん、プロポーズの言葉・・聞きたかった


部屋の入り口、すけるカーテンの向こう側。もしかしたら総悟はとっくに気付いているかも知れないけど・・
思わず、それぞれの視線を交差し、柔らかい笑みを見せた・・・
『結婚してやってもイイヨ・・』
そう言った神楽に、身を乗り出すように・・まるでおとぎ話の眠り姫みたいに・・・
総悟は神楽にキスをした・・・・・



……To Be Continued…

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