act 8

見まわしてみれば、そこはあの公園・・
どんだけ縁があるんだと・・神楽はため息を付いた

確かにショックだった。でも、その後に見たあいつの顔。充分だと思った
どっちも大切で、どっちも選べない・・だから私が選んでやったノヨ。

まったく、これから先、大変そうあるナ〜。
空を見上げ歩く。
でも、うん、アイツの事好きで良かったって思える。後悔なんてしてないし、この先もきっとしない・・
私はアイツじゃなきゃ駄目なんだ・・
ちょっと寂しくなった、右側を見てみる。さっきまで居たのになぁ。掴むことの出来ない自分の右腕をプラプラと揺らす。送ってく・・・その声に甘えればよかったと思った。でもザキの顔・・・必死過ぎて・・・ちょっと笑えた

こうなったら、また愚痴大会だな先生と・・・あっ。そうだ、今日はミツバ姉の検診の日だっていってた
大きくなってるかなぁ。ミツバ姉の赤ちゃんはどっちだろう?男の子かな?女の子かな?
一つ分かってるのは、どっちが産まれても味覚オンチは決定アルナ
マヨネーズ&激カラ・・・あそこはキットおかしいアル。いやいやでも、だからこそスペシャルな赤ちゃんが・・まぁ、どっちでもきっと可愛いアル。
どっちに似てもきっと・・・・・













ぐいって・・・腕を引っ張られた。
全然・・気配に気づかなくて・・・思わず、目を大きく開いた・・・・・







「やっぱ・・・泣いてやがった・・・・・・・」







思わず、ごくって喉がなった・・・




「なん・・・・会議・・・」




何で分かった・・・・・何で分かったアル・・



そんなそぶり・・私見せて・・・・



見開いてた目が細くなる。ポカンって開けてた口が、わなわなと震える
さっきまで、唇の温度を感じてたほっぺに、涙が伝う
こらえてた声が、表に・・出た。
「っ・・・・・うぇ・・・うわぁぁぁん・・・そうごぅぅ・・・」

確かに思った。充分過ぎると思ったのも、満足って思ったのも・・
総悟が愛しいから、総悟に良く似た赤ちゃんが欲しいって思ったのも


全部全部本当・・ただ・・今日だけは、特別だった


今日だけは・・・今日だけは・・・

しがみついて、服を濡らす・・私の体ぎゅって抱きしめて・・ただ・・ただ・・抱きしめて・・・


「特別だった・・今日だけは・・私・・天人だから・・人とは違うって・・髪の色、こんな色だし・・・産まれてくる赤ちゃん・・私にっ・・私に似たら・・どうしようぅぅぅ・・・・・。
私だって・・皆と一緒だも・・・・こ、こんな格好いい人がいるって・・・誰にも負けない人がいるってぇぇぇぇ・・・・・あぁぁぁっ〜〜〜〜」

外で、皆に聞こえるかも知れなくて、でもそんなの考えられなくて、ただただ泣いた。
大きな声で・・ただ 泣いた

「な!誰がそんな事いったんでィ。」
緋色の目が、深く光る・・
崩れるように泣き喚く彼女を抱きしめながら

「赤ちゃん・・総悟に似なかったらどうしよぅぅ、わた・・私・・に似たら・・きっと皆に言われちゃうぅぅ・・そんなの嫌だぁぁ・・・・・
私だって、同じ人だも・・・ちゃんと一人じゃないもん・・・総悟が・・総・・」


興奮している神楽の背中を、抱き締めながらさする
こんな風に声をだして、興奮しながら泣いたのをみるのは、どの位ぶりだろう・・。
子供みたいに、大きな声をだして、全身で泣くような・・誰がココまでコイツを追い詰めた
普段見せないが、きっといつだって、その事で悩んでいたに違いない。しかし、自分も言わなかったし、考える事さえなかった
神楽は、神楽だからだ。何者でもない。こいつ自身

天人とか、人間とか、そんなのどうでも良くて、なのにどうして・・
許せなかった。単純に・・どうしようもなく・・
こいつを、こんな風にした人を、許せなかった・・・・

柔らかい、桃色の神髪の中に手を入れる。ひとつひとつがふわふわで、自分の手によく馴染む
綺麗で、大好きな、この髪・・・・・
何回も、何回も滑り込ませては、滑らせて・・・・よしよしと撫でる

背中を何回も、何回も、大丈夫と言うように撫でる・・・

それでも、まだ神楽は泣きやまない・・興奮状態・・我慢・・・痛み・・辛さ・・一気に出ていた

この際、全部だせと、総悟は、その声に、その訴えに耳を澄ませて、ただ・・うん・・うんっと頷く

「っ・・・皆居てくれる・・ささ・・えて・・くれる・・。一人なんか・・・。総悟だって・・いつも一緒に・・
そりゃ・・・わか・・っ・・。別れてたけど、今・・大切に・・夫婦じゃないけどっ・・ぁぁあぁああ・・・」

脳天に衝撃を受けたような感覚を味わう・・・。
夫婦・・・・考える事はしていた。ただもぅ少し先でも・・産まれるまでは、急がなくてもと・・
まさか、そこまで言われていた事に、強くショックを受けた
自分がキチンとしないばかりに、全部こいつに辛い思いをさせていたのかと・・・
妊娠してから、別れて・・そして今まで、どんな思いで病院に行き、どんな思い出順番を待っていたのかと
母親学級と言うものに、自分で行ったと言うのは聞いたが、まさかソコでも、言われていたのかと。

(もしかして、俺までそう思ってると心配してやがったんじゃぁ・・・)


普段、自分を吹っ飛ばす神楽だが、変な所で、もろい。
自分が気にしている所を、集中的に突っ込まれ、ずっと溜め込んでいたのかと思うと、どうしようもなく、腹がたって仕方なかった。自分に・・。

服を、ぎゅううと強く握って、強くせくって居る
柔らかく、ゆっくり、もう一度抱き締めながら、総悟は言う

「俺は、お前にそっくりな子が産まれるのが一番嬉しいと思ってる」

せくってた体が、ゆっくりと止まる

そして、ぶんぶんと首を振る
「駄目アル・・私に似たら・・」
「宇宙一可愛らしい、ガキが産まれてくる・・だろィ」

見上げた総悟の顔

優しくって、あったかくて、嬉しくて、たまらなくて・・又泣けた・・



「鼻水付けんじゃねェや、ガキじゃあるめェし」

「つ、付けてなんか・・・」

鼻の頭が真っ赤になってて、本当は今日は嬉しくて化粧もしてた
それも全部落ちちゃって、ちょっとお化けみたいになった私の顔を
あいつは可愛いって、キスしてくれた
泣いたらすっきりして、うんうんって、聞いてくれて、聞いてるだけなのに、胸のモヤモヤが取れていった
もしかしてら、最初から話してたら、もっと楽になったのかな・・。
こいつなら、全部受け止めくれるって、分かってたのに・・
こいつも、本当は、ちょっと思ってるかも・・って思ったら恐くて仕方なかった

ただ、皆に見せたかった。誰の旦那より、きっとうちの総悟が一番デショって・・
格好いいんだからって。私だって、天人だけど・・・ちゃんと幸せだって・・皆に自慢したかった・・。

「お前・・会議大丈夫・・・」

私を取ると言う事が、こいつにとって、どれだけのリスクをしょうのかが、分かってきた。だから納得できたんだヨ

「大丈夫。ちゃんと近藤さんに、訳話してきたから、心配すんじゃねェ」
良かったと、神楽は泣きっ面で笑った
....



「あ〜俺帰ったら確実に殺されるってぇぇ・・・」
駐車禁止の所で止まっている、ひとつのパトカー・・・
山崎は項垂れていた・・・。
「近藤さん・・総悟でさぁ、わりィが、俺は欠席しやす。処分は何でも結構でさぁ。」

「え?オイ、ちょ、総悟ぉぉぉぉ!!??」

「コルァァァァ!!総悟!テメー今日が大事な会議って事くらい・・」

「耳元で、ピーピー喚かんでくださせェ。耳が腐らぁ」

「総悟ぉぉぉ・・戻ってきてぇぇぇ・・おねがぁぁいい!!」

「総悟!帰ったら部屋に来いィィ!!絶対だ、いいな!ってオイ聞いてんのかコルァァ!!」
ハンドルに顔を埋めて、山崎は、ため息をつく

「後に残される俺たちの身にもなってくれよ・・・・・・・でも、あんな必死になって走っていく隊長、そうそう見れるもんじゃないから、得したけどさぁ。さぁて!!帰りますか、副長の雷を受けに・・・・」

その窓に反射する顔には、何故だか、微笑が浮かんでいた・・・
「じゃ、行くか」

「何処にアルカ?」

「決まってんだろィ。俺の女を泣かせた罪を償ってもらいに・・・・でさぁ」

寂しかった右側に、ぶらぶら遊んでいた右腕に・・・神楽は強く腕を絡ませ言った・・



「総悟大好き!」
....

ねぇ、分かってる?

総悟の事皆みてる・・・こそこそ話してる・・。格好いいって話してる・・
これが、私の・・総悟なんだヨ・・

入り口から入って、エレベーターを抜ける
受付のお姉さんも、女医さんだって、看護婦さんだって、皆見てる
みんなの視線、私通り越して、総悟に、注がれてる・・。
ねぇ、私こんな人に愛されてるんダヨ・・。こんな人の赤ちゃんを産めるんダヨ・・
それって、凄く、凄く幸せなんだから・・・

絡めてる腕を、もっと絡まして、もっとギュって体を寄せた。普段なら、くっつきすぎると、そんなにくっつくなとか
外では人の目があるからって、剥がされる。なのに、ここ病院の中。人だって、いつも以上に見られてる
なのに、ぜぇんぜん言わないの!嬉し過ぎて・・たまらない。



「間に合ってよかったな、ちょっと俺自販に行って来るから、待ってろィ」

いつもより、優しくしております?みたいな感じ。ちょっとくすばくて、でもにやけちゃう。
全身から、興奮して鳥肌がぶわって立ってる。勝手に笑いが込み上げて来て、どうなの・・こんな気持ち。
素敵すぎると思わない?


そんな事考えてたら、部屋の扉が開いて、大きな、いわば教室みたいな感じ。
そこに、どうぞって通された。まだ総悟がって思ったけど、ボードに、ちゃんと『両親学級』て書いてあるし・・。
寄りによって、一番最前列に通された。既に来てる人も居て、見たこと無い顔もチラホラで、いたたまれない
指導の先生が、にっこり笑いかけたけど、作り笑顔でしか笑えないよ

後ろの方から、声が聞こえる
ほら・・一人だって、やっぱり・・。本当だ・・・くすくす・・くすくす・・・
大丈夫、今日は総悟が居る・・でも、正直こんな声聞きたくないし、聞かせたくない・・・
とりあえず、前を向いたまま、振り返らないようにする
でも、そんな事構わず、話しは続けられて、そのうち、他の人の視線まで感じてきた
男の人も、女の人も、若いとか、髪の色がどうとかって話すのが聞こえる

今日は大丈夫。総悟が居るから・・・・
それにしても遅い。まさか迷った?不安になる。でも、今ここで席をたったら、まるで逃げてるみたい
どうするべきかと、思考をめぐらせてる中、一斉に教室がざわついた
でも、耳を聞きたくなくて、塞いでたから、そんな事全然分からなくて・・・・

神楽の知らないトコで教室はざわめく。一斉に入り口をみる。本当に皆。看護師さんも女医さんも、妊婦さんも、皆・・・次々に発せられる言葉。隣に夫が居るなんて忘れて・・・その夫でさえ、自分とのレベルの違いに怒りもわかない・・。

男が自分の目の前を通り過ぎる。通り過ぎた後、その面影に、ほぉっと頬を赤らめる


肩に、手を置かれた。やっと来た!!神楽は耳から手を離し、振り返る

「・・・へ?何で?」

思いがけない・・いや、考えても見なかった人物がそこには立っていて・・

「ふふ。ちょっとした偶然の重なりでね、参加出来ることになったのよ」

柔らかい笑み・・・可愛らしい声・・・そして・・・
「あぁ・・・どっかの誰かさんの所為でな。会議が中止になっちまってね」
「トッシー、ミツバ姉?!どうしたアルカ?」
ガタンと思わず席を立つ

「丁度ばったり会いやしてね。聞いた所じゃ、姉上も土方の野郎も参加するって聞いて一緒にきたんでさぁ」

土方の後ろの方で声がする。身を乗り出すと、総悟がいた

ざわざわとしている教室は落ち着かない。あの男二人。どういう関係なのかと・・・会話がおのずと耳に入る
最前列でざわつく四人。総悟は、目の前の指導の先生に一礼を礼儀正しく行い、お騒がせして、すいやせんと頭を下げた。その総悟に遅れを取らず、土方も同じように深く頭を下げる。二人の態度を見た指導医は、微笑み、お掛けくださいと席を指した。

神楽の隣に、当然総悟。その隣にミツバ、土方と座る
こう見れば、必然的に分かってしまう。それぞれの関係・・・

後方から、うっそーと言う声が聞こえる。それもいくつも・・
総悟が、ふと横を見てみれば、にやつきそうな顔を、一生懸命、両手で頬を引っ張って我慢している神楽を見つける
思わず吹きそうになる総悟。そんな沖田に気付く神楽。恥ずかしくて、顔が真っ赤にへと変化する
なんだろう・・この心地よい空間・・・。神楽は思う

その隣のミツバ、土方。一生懸命に話を聞く。時折、ミツバがメモを取る
対して神楽、総悟は、あいも変わらず、ののしりあいを小声で続ける。そんな二人を後方からみる他の講習者
口で言い合い、時折ホッペをつねり、そうかと思えば手を繋ぐしまつ・・らぶらぶにしか見えない・・。
正直・・悔しかった・・・。

「土方さん、アンタ全然なっちゃ居ないですぜ。俺の方がよっぽど」

「あぁん?誰に負けることもないが、テメーにだけは更に負けたくねぇよ」

そういうと二人は、ゆっくりと赤ちゃん人形を片手に抱き、入浴させる
お互い負けたくないがためか、その手つきは完璧だ。そんな二人を、神楽、ミツバは笑ってみている


「何だこれ?こんなに重てェのか」

「土方さん、アンタ意外と非力なんですねェ。俺はこの通り・・・」

「これは、お前がの問題じゃねェんだよ、ミツバやチャイナが負担がかかるって事をいってんだ!」

その言葉に、思わずグぅぅとなる総悟。
又神楽は微笑む。正直こんなに楽しくなる予定ではなかった。今日の出来事を、自分は絶対忘れない・・そう思う
指導の先生も、二人の出来にはとにかく頷いた。囲む女の視線・・。そんなものはいつしか、気にならなくなる
つねに側で笑ってくれる総悟。隣で支えてくれるミツバ、土方
終始笑顔で終わることが出来た

「腹減ったぁ、土方さん、何か奢ってくだせぇ」
「なんでテメーに奢らなくちゃならねェんだ!自分で払いやがれ!」
「姉上、こんなケチクセェ男と一緒になったって幸せにはなれやせんぜ」
「オイィィ!ふざけんな総悟ぉぉ!!たたっ切るぞコルァ!」

間に入ってミツバが宥める。この人にかかれば、猛獣とでも言えれる二人も猫同然だ
.....

「先生!!」
神楽の声に反応した、担当医。あの一件以来、よくも悪くも迷惑をかけっぱなしだった

「よかったね、ちゃんと一緒に参加できたんだね。ほら、もう一組居ただろ?あの二人も丁度ミツバさんを診た後迎えに来てたみたいで、僕が一緒に参加したらどうかって勧めたんだよ」

今日のきっかけを与えてくれたのは、この先生だったんだ・・・
神楽は深く深くお礼を言った
お互いに、笑みをもらし、そして後ろ姿の先生を見送る。そして振り返ると丁度ばったりと会ってしまった

「ねェ、前に結婚してないって言ってたわよね?こんなにお腹が大きくなってるのに、結婚しないなんて・・」
今まで、本当に散々言われてきた自分。その女の声に、丁度教室からでてきた複数の夫婦も、少なからず興味を持ち、聞き耳をたてる

「ちゃ、ちゃんと一緒に・・・」

「いつ?」

突っ込んで聞いてくる。下唇を咬む。言い返せない・・・
いつ?私だって聞きたい・・・。でもそんなに催促するような事言えれる訳無い・・。
女の、その微笑みは、勝者の笑みに変わっていく。どんなに格好良くても、所詮他人・・・そういわれてるみたいだった・・。

目をキョロキョロとさせ、その女の視線と重ならない様にする・・。
「来月・・・式を挙げようとおもってるんでさぁ」

その女と自分。丁度真横から聞こえてきた声・・

「総悟・・・」
視線を一度、神楽に合わし、総悟は再び、その女に戻した

「いや、俺が、コイツにベタ惚れでしてね、やっと結婚もOKしてもらいやして、挙式の計画を実は一人で練ってやしたんでさぁ、こいつに内緒で。」

営業用のスマイルで、女に微笑みかける
口を、ぱくぱくとさせながら、その顔は真っ赤だ
それは、何もその女だけではなかった。話をおもしろ半分で聞いてた周りの夫婦。恥ずかしがる事もなく、公共の場での大胆告白。女なら誰でもあこがれると言うやつだ。しかも言ってるのは、これでもかと言う程の男。

しかも、その隣に居るのは、先程姉上と呼んでいたから、姉弟だと言う事。そして、その隣には目の前の男に負け時劣らずの男・・・・
背は高く、。ぞくっとする様なその切れ長の目。なんと言うか、特有のフェロモンが出ている

どうして、この女の周りにばかり集まっているのかと。
まとめて見ると、なんとも絵になる四人。神楽のその容姿に適わない事も、反感を買う一つになっていたからだ。

そして、その表情は、神楽にも当てはまった
何を言い出すこの男・・そんな風な目で隣の男を見上げた

ぐぅのネもでない女、そそくさと帰る始末。
見上げる神楽に、どうでィと、得意そうなサド笑い

悔しいけど・・・本当に悔しいけど
「うれしい・・・アル」

髪をくしゃくしゃとかき乱し、手を引いて歩く

「今日の飯は土方さんの奢りだそうですぜィ」
「マジでカ!」
「いや、ひとっことも、んな事言ってねぇよ」
「いいじゃないの十四郎さん。皆で仲良く食べれば・・」

「ったく、じゃ何処にするんだ・・・」




ちょっとお昼には遅い時間

総悟は神楽の手を引きながら、土方はミツバの手を引きながら
その幸せをかみ締めながら、歩いていった

……To Be Continued…

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