act 5

「神楽ちゃん・・どうかしたの?また・・総ちゃんと喧嘩・・した?」

窓から見える空は、壮快なほどの青
土方の部屋に来ているミツバに、丁度沖田の部屋で待っていたが、遊びにきた感じとなっていた
考え事をしていたようで、何回も呼ばれていた事に、全く気が付いていないようだった。
やっと気付いた神楽は、ごめんと謝り、視線をミツバの方にずらした

柔らかく笑うミツバの側に、思わず擦り寄る
「ミツバ姉・・つわり・・辛くないアルカ?」
心配そうに覗き込む神楽の髪をそっと撫でながら、ミツバは口を開く

「大丈夫よ。私、つわりが殆ど無いみたいで・・心配でお医者さまに聞いたら、人それぞれだから、気にしなくていいですって。赤ちゃんは、順調に育ってるのよ。ココでね」
くすっと笑いながら、自分のお腹を、愛しそうに撫でた

よかったと笑う神楽に、ミツバも逆に質問してきた。
「どう?今も動いてるの?」
神楽のお腹に、ゆっくり手を当ててみる
すると、ミツバの掌で、ぽこ。ぽこと振動が感じられた

「わっ。神楽ちゃん、動いてるわ。触ってるの、分かるのかしら」
ふふっとミツバは柔らかく笑う
「きっと分かってるアル。嬉しいんダヨ。きっと」
そぅ、笑う二人は、すっかり母親の顔だった
ミツバは、丁度3ヶ月。つわりも軽く、体も大丈夫だといわれ、快適な妊娠生活を送っていた
神楽も、五ヶ月に入り、つわりは、完全に止まり、体も楽になり、毎日、仕事は出来ないものの、散歩をしたり、ミツバとこぅして話したり、お妙の所にいったりと、楽しい妊娠生活であった

あれほどの、喧嘩をし、別れていた総悟・・

今は、信じられないほど、大切にしてくれていた
再度、銀時の元に出向き、キチンと挨拶をし、近藤の所にも、二人で挨拶をしに行った
いつも、めんどくさがり、基本やる気のなさが前提の総悟だったが、もぅ一度神楽とやりなおしたいと、双方に頭を下げたのを見た時には、自然と涙が溢れた

病院は、アレから、女医にして貰えとひと騒動実はあったのだが、神楽が、断固として、コレだけは譲らなかった
しかし、総悟とて、譲らない。絶対に嫌だと言い張る。周りが、先生だと説得した。その中には土方も入っていた。
土方は、もぅ少し大人になれと総語を呆れながらなだめた
そして、総悟は、ミツバを、その先生の担当患者としてもらう。実際あった時の土方の顔。
見ものだった。総悟より、少し年が上。丁度土方、銀時ほどの年。男

すぐに断固拒否を始めた。そこで、総悟はしてやったりと、土方の言った台詞を、そのまま返す
ぐぐぅぅと言葉に詰まる。結局神楽、及びミツバも、担当患者のままで、事は得た

新撰組きっての、剣の使い手。副長、及び一番隊隊長に、いつ寝込みを襲われるか分からないレッテルを、勝手にはられてしまった、哀れな産婦人科医だった
「あ、あのね、ミツバ姉、あの、その・・・・えっとぅ・・」
言いにくそうに、もじもじと、神楽は、畳をいじいじと人差し指で擦る
なぁに?とミツバは言うが、神楽は、そこで言葉に詰まったまま、言えないで居た

「あの、え、え、え・・・だぁぁぁ!!やっぱ何でもないアル!!今の無しネ!!」
神楽がワタワタと、一人パニックを起してる中、声が入ってきた

「ォイ、ミツバ、買い物に行きたいっ・・・お前何してんだよ・・そんなボサボサ頭して」
無残にも、振りまくった首の所為で、長い髪は、ぼさぼさにと変形していた
「なな何もないアルぅぅぅ!!じゃ、じゃ私はコレで・・失礼するアル!!」

勢いよく神楽は立つ。大きなお腹をしてるため、バランスを崩す。
ぅわっと思った時には、畳の上で、体が傾いていた・・

その体を、がしっと捕まえられた


「何してやがんでィ。あぶねェじゃねェか」

振り向いた先、総悟がいた。
「ぅ!!ごめんアル・・」
仮にも、自分ひとりの体じゃない。しょぼんとなりながら土方を出て行こうとする神楽に、ミツバは呼びかける

「私は、とっても大事な事だと思うわよ。大丈夫。仲がいい方が、きっと喜ぶわ」

何も言ってない。一言も言ってない。まだ相談する前。
それなのに、どうしてこの人は分かってしまうんだろうと思う
それでも、ミツバの言ってる事が、神楽にも分かる。
そして心配ないと言ってくれた。デリケートな問題、だからこそ心が軽くなった。
途端笑顔を作る神楽。
「そうアルナ!きっとそぅアル!」
訳がわからないのは、男二人。一瞬珍しく目をあわした後、首をかしげた

.....
「むぅ〜〜可愛い下着が、全然可愛く見えないアル。これじゃダメヨ」
タンスの中をひっくり返し、自分のお気に入りの下着を装着した自分を鏡に映す
けっしてナイスバディだと言えれない・・・分かってる。だってお腹の中には、愛する赤ちゃん・・

でも、でも、神楽にはずっと悩みがあった

あの日以来、ううん。妊娠してから、一度も・・ない。

ない・・処か、あの日を境に、キスさえも無い
アレだけの、仲直り劇をを繰り広げたんだ。嫌われてるとは思わない
むしろ大切にされていると言うのは、凄く凄く、感じる

だけどどうしてだろうか、自分の方が物足りない
離れていた分、強く感じる。触れたい、キスをしたい
もっと強く抱き締めて欲しい・・・。なのにHはおろか、キスさえも無くて、自分を大切に、扱う総悟

だから、今日久し振りに、総悟の胸板に自分がおさまった瞬間
気持ちが沸騰したように、ぐらぐらと沸き起こった。心臓はドクドクと音を立て、もっと、もっとと強く願った自分、だがそんな自分を他所に、さっさと体を離してしまった総悟。

喧嘩してる時は、どうでも良かった。でも、仲直りをした今、不安で、どうしても不安で仕方ない
馬鹿みたいに盛ってた奴が、絶対我慢できるはずが無い。何処かで・・・そんな事を考える
もしかしたら、自分には、もぅ魅力がなくなってしまったのか・・そう焦る

だがしかし、そもそもしてもいいものだろうか・・。
先生に遠回しに聞く。そしたら、悟られて、大丈夫と言われた。だが、周りの人たちはどうなんだろう?
こんな事考えるのは自分だけなのか?そもそも赤ちゃんがお腹の中に居るのに、こんな事考えるなんて、最低なのか?

けれど拭えない不安。そしてミツバから帰って来た言葉。とっても安心した。

ちょっと頑張ってみよう。自分達が仲良くする事が、赤ちゃんにとっても、嬉しい事だと思いたい・・。
そう思って、下着を探す。がしかし、やはり、体型が変わった今、勝負下着も、何も意味が無い
思わず鏡の前でため息を付いた

それでも、頑張ってみたい。
どう考えたって、不自然だ。あの、エロの申し子の様な総悟が、こんな我慢できるはずが無い。
モヤモヤ考えるより先に行動あるのみと、王道の真っ白い、可愛らしい下着を身に着ける
お腹だけ、出ていて、あまり下着には支障が無かった。あるとすれば胸のカップだけ。しかし、より谷間が出来るようになったと神楽は気に入っていた。

チャイナ服を着る。
勿論見せるは素足。昨日丹念に手入れもした。すべすべつるつる。
季節は移り変わり、蒸し暑くなってきた。・・が、今日はもぅ日も落ちている。汗はかかないだろう
お風呂だって入った。いつもより念入りに、髪に潤いと香。

鏡の自分を見る。お腹が大きい。それでも、大丈夫。色気が出てきたと自分に言い聞かす

もぅ、銀時にも、総悟のとこに行って来るで、フリーパスになった

久し振りに、女100%モードになった神楽
5ヶ月ぶりに、未来の旦那の元に、夜這いを仕掛けにと、部屋を後にした・・・・・

....

はやる気持ちを押さえる。自分が何をしに行こうとしてるのか考えると、少しくすぐったくて、顔がにやけた
屯所の前。さすがに前から行くのは気が引ける。
この後の自分の行動を考えると・・

前は、よく登っていた、塀。お腹を見つめ、うぅ〜んと一瞬悩む。でもココしか道は無い
いけるはずだと、足を勢いよく地面から蹴った。ひょいと登れた。私もまだまだいけると、ほくそ笑む
ゆっくり、落っこちないように、進む。
総悟の部屋の前。行く途中、ひょっとすると居ないかもしれないと言う考えに、実は捕われた
間抜けな自分にならないように、どうか居ますようにと願ったが、確かにそこに明かりはついていた

ほっとした。何故だか分からないが、気を引き締める。
髪を手でとき、無意識に、汗臭くないかと確認し、石鹸の匂いがする事を確認し、よしっと気合を入れた

「誰だ・・!」

「ぅえ??きゃっ!!!」

塀の上から、これから飛び降りると言う時に、総悟の部屋の襖が開き、総悟が出てきた
刺客と間違ったのだろうか、低い声で、殺気がこもっていた。
驚いた神楽は、バランスを崩す。お腹が出ているため、下が見えない。だからバランスも崩れやすいし、気を抜くと転んでしまう。そこまで分かっていたが、塀に登ってしまった
自分を後悔する。しかし、神楽の中には、絶対受け止めてくれると言う確信があった

後に、怒声が待っている事は、予想してそうで、予想してなかったが・・



「てめー何やってんでィ!昼間といい、今といい・・腹ン中に、ガキがいるってこたァ、十分分かってるはずだろィ」

もっとも・・。
返す言葉も無かった。一生懸命、塀の上でとかした髪は、ぐしゃぐしゃになり、総悟の部屋で、甘い雰囲気所か、正座をして、説教を受けるハメになっていた。

「大体・・何しにきやがった・・こんな時間に。風呂入った後だろィ。湯冷めして、ガキに何かあったらどうすんでさぁ」
てめーは注意力が大体のところ足りてねェ。もっと体を大切にしろ。腹でも打ち付けたらどうすんだ・・。
総悟の説教は止まらない。しゅんとした神楽から一変。もぅもぅと湯気が発しだした

何でここまで言われなきゃ、いけない?折角会いにきたのに・・せっかく・・。
あふれ出る怒り、しかしココで喧嘩をしては意味が無い。俯き、ゆっくりと深呼吸を繰り返す

(落ち着け・・落ち着くアル・・何をしに来たか思い出すアル・・)
丁寧に、目も閉じた。総悟の声は、耳に届いてない
そして、カッッと目を開けた

「夜這いしに来たアル」

「そんでお前は・・・って夜這いィィィ?!」

継続して行われていた説教の途中、あまりにも想定外の言葉を聞き、思わず聞きなおした
だが、神楽の表情は、いたって普通。冗談を言ってる風には見えない
総悟は顔を、真顔に戻した

「何いってんでさぁ。さっさと湯冷めしねェうちに、帰りやがれ」
スパンと言い切られた言葉。こちらもとても冗談を言ってる風には取れない。


にらみ合いが続いた。思わず本来の目的を忘れそうになる。
喧嘩でも、再び引き起こしそうなオーラだ。しかし、それ先に破いたのは神楽だ


「ぅを!ってェェェ、何しやがんでっ・・グエ!!」

まず総悟を後方に突き飛ばした。何をしても、どんな戦でも死なないコイツだ。大丈夫だと・・
そして、体制を立て直す前に、マウントポジションを取った

「降りやがれ」

「嫌アル」
そぅ言うと神楽は、総悟が、まだ隊服だった事もあり、スカーフをぐいっと引っ張りあげた
総悟の体は、引っ張られた反動で、強く神楽の方へと近づく。
神楽は、その近づいてくる唇を、ぶつけるように、自分にと重ねた

「んんっ。おまっ!やめ・・んんん」
総悟は、両手で、神楽の肩を剥がしにかかる。しかし、神楽の肩は動いても、重なった唇は動かなかった
角度を変え、神楽は、奥にある、総悟の舌を、絡ます
無言の神楽と、止め様とする総悟の声。唾液が絡まる音が、響く
総悟の力なら、正直、簡単に剥がせる神楽の体。絡まる舌が嫌ならば、口を閉じればいいだけの事

それでも、やっぱり絡めてたのも、引き剥がせずに居たのも、心の奥底では、望んでいた事だったからに他ならなかった・・

しかし、それでも、やっとの事で、神楽が、唇を一度引き離した

どれほど強く絡ませたかと言うほど、二人の息は上がって、もはや肩で息をするほどだった

「何考えてやがる・・腹ン中には、ガキがいるんでィ。盛ってんじゃねェ」

冷静な総悟の一言、カチンと来た神楽は、丁度台の上で、整理してたであろう、その書類を、がしっと掴み、その束を、総悟に向ってぶつけた

バラバラと、あちらこちらに、ひらひらと書類の束が、舞う
書類にまみれて、互いの顔が見えず、その中から、総悟の罵声だけが聞こえた

「何しやがんでィ、このクソ女ァ!土方のやろう・・に・・」

言葉は最後まで終わらない内に、途切れた。
書類が全て舞い落ち、自分と神楽の周りを埋め尽くした後に現れたのは、神楽の泣き顔。クシャリと歪んだ顔を、両手で隠し、マウントポジションをとったまま、微動にせず、そこで嗚咽を漏らし始めた

「っ・・・だって、お前・・他の女で・・・っ・・・そう言う店に行って・・シテルんだろ?」

肩は小刻みに震え、手からこぼれた涙は手首の筋を通った
相変わらず、泣き声のやまない神楽の元に聞こえてきた総悟の声

「何でバレたんでさぁ」

ピタリと肩の震えが止む。鼻のすする音が無意識に響く
ショックだった。半分信じていた気持ちを、あっさり翻されて、涙も止まるくらい・・ショックだった
翳す両手の奥で、見開いた蒼い瞳・・・震えも・・時間も・・神楽だけが止まった


「そう言う店に行った・・戸口までな。ただ、テメーの顔が浮かんでどうしても先に進めなかった・・」

一瞬止まった時間が再び動き出した。思わず両手を退ける。目の前には、自分と同じ目線の総悟・・

「だったら・・余計におかしいアル・・こんな長い間・・お前が我慢できる筈ナイヨ・・他の女としてたアルカ?浮気してたアルカ!?」

泣きっ面で思わず叫んでた。だってそれしか思い浮かばない・・まさか、せずに何て、コイツに限って考えられない・・

「浮気っつ〜か、別れてたし。ただ・・我慢できねェのは、確かにあたってらァ、俺ァ自分で処理してたからな・・テメーで・・」

さらりと言ってのけた総悟だった。しかし神楽は意味がよく理解できなかったらしい
首をかしげ、考えこんだ、そして、次の瞬間、百面相の様に、ぼはっと赤くなった。火照った顔は、更に火照る。

「ななな自分でって・・・わわわ私でって、何を想像してやってんだぁぁぁ」
思わず振り上げたて、ぶんと総悟の方へと吹っ飛ぶが、意図も簡単に、それを受け止めた

「何って、オメーだって、それが分からないウブな女じゃねぇだろィ?やりまくってたんだ・・ぶふぉぉ!!」

「言わなくても分かるアル!なななんで、一人で・・少なくとも今は・・」
言葉を濁らす神楽に付け加えるように、総悟は口を開いた

「馬鹿かオメーは。触れるとしたくなる、だから触れなかったんだろィ。今は腹の中のガキが一番じゃねェか」

思わず、口をあんぐりと開けた。
ただひたすら我慢をしてたのだろうか。触れるとしたくなると言う事は、少なくとも自分にあきたわけではなさそうだと。しかも、お腹の中の赤ちゃんを、コイツが気遣うと言う事自体、信じられないような事だった

思いがけない所で、総悟の赤ちゃんへの、愛情の深さを知った神楽だった・・

……To Be Continued…

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