act 4

トントンと階段を上がる、あの音。あの足音だけで、誰か・・分かる
ドキドキして、玄関から見える、ソファの上に座った

銀ちゃんはとっくに気付いてる。
読みかけのジャンプを、読んだでるふりしながら。反対側に座ってる私が、隣に座る意味・・
ガチャリと音が鳴る。
やっぱり、あいつ。姉御と何かいつも話してる。手には大きな袋持って、それを姉御に渡す
私の事見てるんでしょ?

大きな袋なんていらない。
こんなもの欲しいんじゃない。
入ってきてよ。声かけてよ。

でも、いつもあいつは、入ってこない。
銀ちゃんも、新八も、何も言わない。姉御が、入ったらって聞くけど、あいつは入ろうとはしない
ソファの上で、いじいじと手を遊ばす

銀ちゃん、ため息つかないでヨ

台の上に置かれた、袋いっぱいの食料
こんなの・・いつも、一緒に買っていたのに・・
心配してるだけ?
あんなキスしといて・・・
隣には、もぅ私は必要ない?

膨らんできた、お腹、愛しくて愛しくて、胸も、大きくなって、銀ちゃんや、新八や、姉御に自慢した

ねぇ。お腹大きくなってるんだよ
総悟の赤ちゃんここで、ちゃんと育ってる・・

本当は、もぅとっくに、自分の気持ちなんて認めてる
どんな人が現れても、私は、総悟じゃなきゃ・・嫌

でも、自分からなんて・・そもそも私悪くないヨ

早く謝ってヨ。そしたら、きっと・・

それでも、あいつは、玄関からこっちには、絶対来ない
毎日、毎日、大きな買い物袋を渡して、私の様子を、姉御に聞くだけ・・
何で?私の欲しい言葉は一言だけなのに・・・

ただ、悪かったって・・謝って欲しいだけなのに・・

もしかして、やり直す気なんか、無い?
義務で持ってきてるだけ?

私の様子を見かねた姉御が、ミツバ姉を連れてきた
相変わらず、あいつとは、大違い、とってもとっても優しくて、とってもとっても可愛い
私とは、大違い・・

柔らかく笑うのを見て、私もこんな風に笑ったら、総悟も又・・一緒に居てくれるの?なんて思う

「神楽ちゃん、いい事教えてあげるわね」
ミツバ姉が柔らかく笑った

「総ちゃん、ほら、昔から女の子に好かれるじゃない?」

うん。そんな事知ってる、あいつ自慢ばっかりしてたから
今日はどんな女の子に告白されたとか、サド笑いで私に言ってたから・・
凄く凄くムカついて、仕方なくて、泣いちゃいそうだった
そんな私の顔見ながら、あいついつも満足そうだった
それが、またムカついたの・・覚えてる・・

「私ね、何回か、見ちゃった事があってね、総ちゃんたら、前は手紙なんかもビリビリさいてて、よく私に怒られてたんだけど、ある時から、ちゃんと、その人の目を見て、惚れてる女がいるって・・・・かっこいいと思わない?」


あっ・・絶対、ぜったい今顔が赤い!
ミツバ姉、だって笑ってるもん。

「どうして、そんな態度が変わったのって、わざわざ聞きに行ったのよ。そしたら総ちゃんたら、俺がアイツに惚れてる気持ちと、同じ気持ちを、軽く返す事は出来なくなったって、照れながら言ったのよ。」

は、はずかしいヨ・・。
あんなに、いっぱい自慢してたのに・・
ミツバ姉、そんなに嬉しそうにしないでヨ・・・・
私まで、嬉しくなっちゃう・・顔がにやけちゃうヨ・・

「ふふ、まだあるのよ。神楽ちゃんたら、こんなに美人なのに、モテないって、いつだか言ってたじゃない?そしたら総ちゃんたら、神楽ちゃんの事、ブスとか、モテない女とかって、酷い事言ってたでしょ」

そうそう、確かに言ってたヨ
すっごく悔しくて、でもモテないのは仕方なくて・・総悟ばっかりモテて・・

「あれはね、神楽ちゃんの居ないところで、全部総ちゃんが蹴散らしていたんですって。十四郎さんが、ぼやいてたもの。屯所の前に、よく神楽チャン宛ての手紙もった男が、転がってるって。総ちゃんたら、かわいいと思わない?よっぽど、神楽ちゃんの事好きなんだわって思ったの」

う、嘘!?
ぅう〜でもミツバ姉は嘘なんかつかない
って事は本当?全部本当?
頭なんか、混乱してる。顔や手は何か火照って熱い・・
恥ずかしくって、顔を隠す

「総ちゃんの事許してあげてね」

そんなに、優しく微笑まないで・・
私、何も言えなくなっちゃう・・

「じゃあ、私帰るわね。ふふ、そういえば、総ちゃんの赤ちゃんと、同い年になるのね」
ミツバは、これでもかと思う笑顔で、口を開いた

「エッ?誰・・がアルカ?」

「・・コレから・・色々教えてくれるんでしょ?」
首を傾け微笑むその姿は、花の様にも見えた

「え?え?まままさかぁぁぁ!!まさかアルカぁぁ!!」

誰も居ない万事屋・・神楽の通る声に、定春だけが、ピクリと動いた


・・・・・

うぅ〜気持ち悪い
まだつわりの余韻・・残ってたのかな・・?
自分の背中を擦ってくれる手
大きくて、優しくて、あったかくて・・パピーみたいって言ったら、そこまで歳をとってないって笑いながら怒られた
じゃあ、銀ちゃんみたいって言ったら、あの天パーの人って言われて、思わず笑った
二人でベンチに座って色んな話をする

先生は、なんだか私の事をよく分かってる
なんで?私って単純?
ストレスから来る吐き気だから、改善できる問題なら解決しようねって言われる
そんなの、あいつが一言謝れば、そく解決する問題・・
しかし、どうしてか中々、解決しないんだぁ

私が折れる?そんなの絶対嫌ヨ
だって全部全部あいつが悪いもん
むりむり、絶対無理。ちゃんとあやまったら許してあげるヨ

くすくすと笑う先生が、なんだかとっても大きく見えて、やっぱりパピーみたいって言ったら、笑われた

送ってあげるって先生が言った

そうだね、今日、もし総悟が来たら、視線くらい・・あわせてやってもイイヨ。
なんて考える。だから気が付いたときには、石につまずいて体が傾いてた・・

良かった。先生がいなかったら、きっと二人とも転んでた。そんでお腹に何かあったらきっと私自分を許せない
大事な、大事な、二人の赤ちゃん
先生・・守ってくれて、ありがとう・・総悟の赤ちゃん、守ってくれてありがとう・・

感謝の気持ちいっぱいで、先生を見てたから、すぐには分からなかった
自分が総悟の腕の中に居るなんて・・
....

きっと、私今・・顔真っ赤ヨ

「彼が、ずっと待ってる相手なんだね。素直になるんだよ・・」
なんて・・

だって、私先生に、総悟の事、何にも話してない・・
やっぱり先生には、何でも分かっちゃうんだよね・・

でも、先生・・。それやっちゃ駄目ヨ。
耳打ちなんて・・隣を見れば、ほら、不機嫌な顔
ヤキモチやいちゃってる。

不機嫌な顔、そんなヤキモチやくくらいなら、さっさと一言言ってくれれば
総悟が喜ぶ事、言ってあげれるのに・・

何で一言、言うだけなのに・・そんなに言えないこと?
私、何か間違ってる?謝って欲しいって思うこと、そんなにいけない事?


不機嫌で、無愛想な言葉
ちっちゃく、先生って言ってみる。でも、聞こえなかったみたい
嘘つき、本当はちゃんと聞こえてるくせに・・嬉しいくせに・・
むかつく・・・でも、そのほっとした顔・・ちょっと嬉しい。態度で丸分かりヨ。

総悟のばか・・診察くらいで怒るなら、とっとと、私に謝ればいいのに・・

総悟のばか・・そんな顔するなら、どうしてもっと大切にしてくれなかったの・・

総悟のばか・・そんな目をするくらいなら、どうして名前を呼んでくれなかったの・・

総悟のばか・・全身から、私の事好きって言ってるのに・・どうして言葉に出してくれないの・・?



たまんない・・こんなバカな人

たまんない・・こんなバカを愛してる自分



何も聞こえてない
そんなに怒るくらい・・
どうして・・あんな酷い事・・
『総悟』もぅ何ヶ月も呼んでない・・

思わず、声に出してた。大きな声で、ちゃんと気付いてって・・

感情が高ぶった。ちょっと貧血で、体がふらついた
そしたら、いつも側にいて、いつも抱いてくれてた、総悟の胸

久し振りに聞いた・・総悟の『あぶねぇ』
つまずいて、転びそうになるたび、そう言って、いつも私を支えてくれた
嬉しくて、泣きそう・・



ねぇ、本当に総悟だけが悪かった?
ねぇ、本当は私も何か言わなきゃいけない事・・なかった?

万事屋に来てくれた時、本当は、凄く嬉しくて、もぅとっくに、まだ好きだって思った
抱かれてる時、時間なんてとまればいいって思った

なのに私、総悟に、何も言ってない

入院費を出してくれた時も、お金を助けてくれた時も、毎日袋いっぱい買って来てくれた時も、何も言ってない
私のは、ただの意地・・
でも、総悟は、ちゃんといつだって態度で示してくれた

いつも、先のこと、ちゃんと考えてくれてる
それを、私が、拒否しただけ・・謝る機会をあげようとしなかったのは・・私
部屋に、上がらなかったんじゃない・・上がれなかったんだ・・

私を見るだけだったんじゃない。見るしか出来なかったんだ
全部、全部、私が拒否をしたから・・



「ごめん・・・」

一言、言うだけのつもりだった

でも、一言の所為で、ぜんぶ、ぜんぶ、出てきた

ゴメンネ、謝る事さえ出来なくさせて
ゴメンネ、言葉を出す事ができなくて、態度にだけでも出そうとしてたのに、気付かなくて

涙なんか、いっぱい出て、止まらなくて
でも、ぜんぶだしちゃえ・・って思った

離れたくない・・本当は好きで好きで、たまらない

総悟が、悪いのは俺だって・・
そんな事、もぅどうだっていい・・
なんで意地になっていたのか分からない
ただ、呼んで欲しかった。ただ、触れて欲しかった。ただ、抱き締めて欲しかった
ただ、愛して欲しい・・それだけだったのに・・

意地張って、バカみたい・・・。我慢して、泣けて来ちゃう・・

隊服姿の総悟・・本当はかっこよくて大好きで・・でも素直になれなくて、汗臭い・・なんて言ってた
隊服さえも恋しくて、思わず両手でぎゅっと握り締めた


..............


沖田は、震えるその肩を抱き締める
神楽は、その大好きな隊服に、自分を絡める

もぅ離れたくない・・

見慣れた桃色の髪が、ふわふわと動きながら、その自分の隊服の中から、頬を濡らした貌を見せる

一体どれだけ?
自分たちは離れていた
決して遠くないのに、誰より遠い距離

口をきゅっと結んでいた口から、漏れる声
「総悟ぉ・・そう・・っ・・そう・・」

泣きながら出す声、名前を呼ぼうとしてるその小さな口は、興奮して最後まで呼ぶことが出来ない
貌をゆがめた
「かぐら・・・悪かった・・俺ァ・」

隊服の中で、首を振り続ける
ゆっくりと、顔をあげ、重なった、蒼と紅の瞳

それは、どちらからでもなかった
それは自然に、重なった・・・

僅か、隙間があるほどの、躊躇いながらのキス
それでも、どきどきして、お互い、音が聞こえてるんじゃないかと思う
そして、それは確かに、聞こえてた
お互いの、鳴るこの音が愛しくて、それだけでスキだって叫ばれてるみたいで・・嬉しくて
又、重ねた・・

隙間なんてあげないくらいの・・
私の酸素なんか、ぜんぶあげる。だからあなたの酸素をちょうだい
あなたの温度を感じてあげる、だから私の温度を感じて

体に絡まっていた腕は、やがて首にと巻かれる
肩に置かれていた腕は、やがて腰にと巻かれた

絡めて、絡めて、口の中から水分がなくなるほどに・・
感じて・・他に何も感じなくなるほどに・・

気持ちは高まる
この体に浸透する気持ち
誰でもない、あなたにだけに感じる気持ち
決して、もぅ無くしたくない


「「愛してる」」


……To Be Continued…

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