act 1

「は?マジ?嘘だろ?嘘だと言ってぇぇ!!」
部屋の中に響く声。銀髪の男が、ムンクの叫びを出す

「神楽ちゃん。本当なの?それ、沖田さん知ってるの?」
若干落ち着いた雰囲気で話すのは、新八だ

「あ〜ん?アイツの話はしないで欲しいアル。アイツとはもう終わりアル!」
腕組みをし、フンと怒るのは、18歳になった神楽であった

「お、お前。ど〜すんだ?一人で全部背負い込むのか?んな事出来るわけねえだろ?よく考えろ!な!銀さん一緒に行ってやるから・・。」
取り合えず、落ち着け、落ち着け・・と神楽に言う銀時。そんな銀時こそ、少し落ち着くべきだと思うほどうろたえている。

「そ〜だよ。神楽ちゃん。これは二人の問題だからね」
言い聞かそうとする新八だが、あいも変わらず、神楽はそっぽを向いたまま怒る

勘弁してくれと銀時は項垂れる。
沖田と神楽は、付き合ってもう3年になる。いつも喧嘩していた二人がくっ付いたときには、土方と目を丸くしたが、順調に続いていき、神楽も18歳になり、沖田も、もう22歳だ。一緒になっても何ら不思議はない年だったし。年月も重ねてきた。しかし、神楽から出てきた言葉は、

「妊娠したアル。ちなみに総悟とは、終わったから、私一人で育てるネ」

だった。この調子では、沖田にも話しは通ってないはずだと思う。そもそも何で喧嘩をして、3年も付き合っていたのに、拗れて、別れてしまったのか・・。
ここで、どんなに神楽に問い詰めてみても、言う事はないだろうと、銀時はそうそうに話を終わらせ、直接、屯所に出向いた






「オイ。大串君。総一郎君から、何も聞いてないの?」
山崎に出されたお茶を、ずいっと避け、身を乗り出して土方に詰め寄る

「あ〜?何かあのクソ女、今度こそ終わりだっつって、部屋に怒り狂いながら入ってったぞ」
暢気にタバコに火を付ける。その煙を、ふ〜と銀時に吹きかけた
煙の中から、顔に青筋をつけた銀時が、もわもわと浮かび上がる
カッ!!と目を見開き、土方の襟元をねじ上げた

「・・んの野郎ぉぉ!!。オメーんとこのボンクラが、ウチの娘妊娠させたんだよ!!どう責任取ってくれんだ!ゴラァァ!!」
火を吐き出しながら、土方の首元を締め上げる
土方の目は、銀時と同じように、カッと開かれる。しかし、銀時が首元を締めてるため、ぐ〜と唸り、そして、ブンとその手を払いのけた

「はぁはぁ・・マジかよ・・」

「はぁはぁ・・大マジだ。しかも神楽は総一郎君と別れて一人で産むと言ってやがる。どうゆうこった。説明しやがれ」

未だ、土方は信じられないと言う顔をしている。そして、山崎を呼びつけ、すぐに沖田を呼びつけた

...........


「神楽が別れると言って帰って来た。どういう事だテメー。」
平常心を保ちつつ、銀時は、それでも隠しきれない表情で、顔をヒクヒクとさせている

頭を掻きながら、言葉を開いたのは沖田だ

「アイツの我侭は知ってやがるが、近頃は本当に度がすぎてらぁ。仕事と自分とどっちかを選べなんて・・ふざけた事言いやがるから、終わりだっつたんでィ」

神楽は、普通の女見たく、めそめそする事もなければ、仕事と自分と比べるような女では無いと思っていたが、近頃、そんな女の台詞を吐く様になり、沖田はイライラを募らせていた。とうとう我慢できなくなった沖田は、神楽に終わりだと言う台詞を突きつけ、その場を後にした。

いっぽう、神楽のほうは、近頃やたらイライラし、そうかと思えば、寂しくなり、自分でも感情のコントロールが出来なくて、イライラしていた。泣きたくなったり、怒りっぽくなったり、情緒不安定。
そういえば、生理も来ていない。胸が痛い・・。皆に内緒で言った病院。先生に4週目だと言われた

純粋に嬉しかった。先生には、人には色々な症状がある。怒りっぽくなったり、泣きたくなるのは、情緒不安定になるからだと言われる。赤ちゃんの為にも、興奮はせず。出来るだけ穏やかに過ごしましょうと言われる

沖田には、会って言いたかった。

約束をこじつけ。公園で会う

仕事の合間に来た沖田。恥ずかしそうに、モジモジとする神楽に、イラッとする。沖田は、早く言いやがれと催促をした。時計をちらちらと見ながら。神楽はカッとなる。自分と仕事、一体どっちが大切なんだと。こんななんじゃ、子供が産まれても、家族になっても、いつも二番目。いつも一番は仕事。きっといつだって大切なときには来てくれない。今、聞きたい。安心させて・・そんな思いから出てきた言葉だった。

しかし沖田から出てきたのは、舌打ちをし、面倒くさそうに言い切った
「おめーとは終わりだ・・・」
その一言だった。すぐに反転し、仕事にと戻ってく背中。心が氷付く
ほんの何十分前には、彼の喜ぶ姿を想像した自分。情けなかった。一体自分はこの男の何処を好きだったのか?
悔しくて、悔しくて、辛くて・・涙が溢れる。
そしてそれと比例して、湧き出てくる怒り。だったらこの子は私が育てる。アイツには、何一つ世話にならない。
自分ひとりで立派に育てて、沢山愛情を注ぐ。

頬に伝う涙を、掌で、きゅっと拭う。もう涙は出てなかった。綺麗な蒼い瞳には、力強い、母親の光が指していた

...........







「うっ・・・・」

銀時に、頭を冷やして来いと、家から追い出される。
いつもの様に、散歩する。小腹もすいてくる。家に帰るのは面倒だ。そこら辺で立ち食いをしよう・・
そんな事を思いながら、ぶらぶらと、街を歩く。いつもなら美味しい匂いに誘われ、ついふらふらとなるこの空間
しかし、今日は違った。鼻につく。気持ち悪い・・何とかして・・
そう思ってた矢先だった。喉から込み上げてきたもの。思わず小道に走りこむ
はぁはぁと肩で息をする。

つわり・・・きっとそうだ・・・。
気持ち悪い。けれどコレは、自分のお腹の中に赤ちゃんが居る証拠だ。気分は最悪だが、思わず優しく微笑む。

「マミー頑張るからネ。お前も一緒に頑張るアル・・」
優しく、お腹を擦る。目は既に母親の目だった



「旦那と、土方さんが言ってた事ぁ。間違いじゃなかったって事かィ」

しゃがんでいた自分。影が自分に出来、思わず顔を見上げると、今一番会いたくない奴だった
さっきまで、優しく微笑んでいた顔が、豹変する

「何しに来たアル。お前とは、終わったアル」
冷めた目で、沖田を見つめる

「そんな簡単には終わる話じゃねぇダロィ。おめーの腹の中には、俺のガキがいるんでィ」

「お前のガキじゃないアル。私の赤ちゃんアル。お前には、関係ないネ」
ここ何年も見た事のない冷たい目。沖田は正直まずったと思った。公園でのあの話。あれはコレを伝えようとしていたのかと気付く。それを自分から切り捨て、終わらした。どうするか・・と。

そんな沖田をほって、神楽は沖田の横をまるで他人の様にすり抜ける。
しかし、間一髪、そのすり抜ける腕を掴む

「俺のガキでもあるんでィ」
「知らないアル。お前とは終わったアル。離せヨ」
パンとはたかれた自分の腕。
これは、完全に自分が悪い。なんと声をかけていいかも分からず、沖田はそこに立ち尽くした

.........

「姉御ぉ〜。気持ち悪いアル〜」
思ったより神楽のつわりは酷かった。日に日に食べられなくなる。
アレから、既に2週間。沖田は何回も、何回も万事屋の前に立つ。しかしそこから入る勇気がない
神楽に説得したが、沖田とはよりを戻すつもりはないと言い張る。
あまり興奮させるのも良くないと、とりあえず、毎日妙に来てもらえるように頼む
お妙だって、妊娠中のことなんて分からない。それでも、男よりはマシだろうと考えての、銀時と新八の気遣いだった

どんどん悪くなる。食べられない。水を飲むだけで吐いてしまっていた
銀時、新八、お妙は心配していた。入院は一人だから嫌がる神楽のために、銀時は、毎日点滴に通わせる
長い時間の点滴。だったら入院してもと神楽に言うが、神楽は首を縦に振らなかった

ちょうど、銀時と新八は仕事に行っている
神楽は、ソファから動かなくなっている
お妙は心配そうに、神楽の側による。
「神楽ちゃん。ねぇ。やっぱり入院した方が・・・」
「い・・やアル・・一人は嫌アル」
ぐったりとしながら話す。銀時と、新八は少しでも稼ぎに、珍しく仕事を頑張っていた
朝から何回もトイレに駆け込んだ。
もう吐くものはなく、ただひたすら耐えていた
本当は病院に連れて行きたい。点滴をしないと・・そう思うが、銀時は、帰りが遅くなりそうだと電話が入った
優しく手を握り、少しでもと背中をさすった


チャイムがなった

ちょっと待っててねと神楽にいい、戸口に出ると、そこには沖田が立っていた
「あいつ・・居やすか・・?」
控えめに聞く。妙は、正直救われた。四の五の言ってる場合ではない
とりあえず病院に・・そう思う

妙に、早くと引っ張られ、リビングに行くと、ぐったりと項垂れる神楽だった

「神楽!!」
一瞬血の気が引く。この二週間自分は勇気がなくて、ドアの前に立つことしか出来なかった
自分がそんな事をしている間、こんなにも酷い状態だったのかと

神楽は沖田に気付く。あからさまに嫌な表情。自分に障る手を払いのける
視線を沖田に合わせようとせず、俯く。
そんな神楽を無視して、沖田は抱かかえる

「ねぇさん。こいつ病院に運ぶんで一緒に来て下せぇ」
お妙は二つ返事だった
拒んだのは神楽だ

「お・・前の・・世話になんか・・」

弱く、沖田の腕の中から出ようとする
顔には、冷や汗が垂れていた

「黙っていう事聞きやがれ!!」
焦り、怒り、混乱。混じったような顔。思わず強く出てしまった声

妙も一瞬動きを止める。しかし、神楽には効果があった
沖田の胸の中で静かに、自分を預けた。認めたくなかったが、それは確かに安心した


……To Be Continued…

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