act 34

「なぁ・・何でそんなに黙ったまま怒ってンでィ」

テレビの音もない、炊事場のシンクに、ピタン・・ピタン・・・と水滴が落ちる音のみが響く
ソファの上で、寝そべり、突っ伏したまま、無言の神楽
長谷川は、神楽の顔を確認するなり、何かトラブルに巻き込まれては・・と逃げるように帰っていった

何がそんなに怒る事だったのか?自分たちの思いは重なり合い。別に何も不自然ではない事だと沖田は思う
しかし、神楽はアレから、特に会話もなく沖田だけが神楽に呼びかける
何度めかの呼びかけで、やっと神楽は口を開く

「何で・・そんな事、勝手に決めるアルカ?私何ひとつ聞いてないアル・・」

やっと沖田は、神楽が口を開いた事への安堵。そして、確かに何も相談してない事に腹を立ててるのかと思う感情。
そして、やっぱりそれだけの事で怒るのかと言う不満。全て飲み込み
神楽が寝ているソファに、浅く腰掛けた

「確かに、悪かったが・・俺は正直そうしたいと思ってる」

「私は、一緒にはまだ・・住みたくないアル・・」
沖田は耳を疑った。相談してない事に腹を立てたのは、100歩譲って分かるとする。だが一緒に住みたくないと言うのは、裏を返せば、スキではないと言う事に結びつくかもしれないと言う事

むっとさせ、神楽に噛み付く

「そりゃどーゆう事でさぁ、スキだから一緒に住みたい、側にいつも居たいと思うことは普通だろィ。それじゃ何かィ。てめーはやっぱり俺の事・・」
「違うアル・・お前の事は好きアル・・でも一緒に住むとか、その・・・そうゆう事するとか、まだしたくないアル。でもお前、一緒に住んで、一緒に寝たら、きっと我慢出来ないアル・・だから・・」

最後まで言い切らない神楽の言葉を防ぐように沖田は声を上げた

「冗談じゃねェ。スキだからヤリたくなんのは当然だろィ」

負けじと神楽も声を張り上げた

「だって!だってお前・・・色んな人とそうゆう事してきたンデショ?何か区別が欲しいアル」

勘弁してくれ・・何を言い出すこの女・・と思わず冷や汗までかき、額に手をやった

「区別って、十分してるじゃねェか、テメーとその他の女とは天と地の差ぐらいあらいてらぁ」

これは、沖田の正直な気持ちだった
神楽と、他の女、意識的に見ても、外側から見ても、それは十分わかるほどだった
だから、お妙も気が付いたし、土方だって気付いた
比べる方がおかしいと思う。それを、目の前の女は何か区別が欲しいと言い張る
なんで、その基準がソコなんだと、頭がクラクラしてきた

「嫌アル。何が何でもしないアル。他の女と一緒にされるのは絶対嫌アル。スキなら我慢してヨ!」

その言葉にイラっと来たのは言うまでもない、気が付いたら声を張り上げていた
「スキだからだろィ!・・スキだから我慢できねェ、スキだから触れたくなんだろィ。それを断ち切るほうが不自然なんでィ」

一瞬、張り上げた声に神楽は、体をビクつかせた。寝ていた体を、そそくさと座り直し、それでも何か納得がいかないらしく、黙ったまま、声を発しない。
沖田は、これ以上を話をすれば、もはや既に遅いが喧嘩になると思い体を玄関の方にむけ、
頭を冷やしてくらぁと、自分の部屋に帰ろうとした。
その後姿に、神楽の声がかかった

「・・Hの事だけじゃないアル。喧嘩した時に、頭を今みたいに冷やす場所は必要アル。もっと、もっと知り合ってから一緒に住むのじゃいけないアルカ・・?そう言う時間って、とっても大事ヨ・・」

ソファから立ち上がり、真っ直ぐにその瞳は、紅い瞳を見る。
沖田は何も言わず、考えるような表情を見せ、あぁぁぁっと唸るように言葉をだしたと思いきや、神楽の元にスタスタと行き、腕を引き、ぎゅっと強く抱き締めた

「ったく・・おれはテメーに一生かなわねェ気がすらぁ」
神楽は顔をほころばせ、ふふっと柔らかく笑った
神楽を抱き締めたまま、沖田は口を開く

「どれくらい待てばいいんでィ」
「何がアルカ?」
「両方でィ」
「うぅぅん・・・分からないアル」

沖田は、眉間に線を作る

「オイ・・そりゃ俺に死ねって言ってのかよ」

そんな沖田を他所に、神楽は楽しそうに言葉を出した

「スキなら我慢するヨロシ。お前がどれだけ私をスキが見せてみるアル」


「はっ。見せてやろうじゃねェかよ。覚悟しときなせェ」
ニヤリと笑う沖田は、いつもの沖田のサディスティックな一面を見せた

そんな沖田に対抗するように、神楽も不敵な笑みを浮かべる
「楽しみにしてるアル・・」

お互いに、にらみ合い、そして、同時に笑みを漏らせた
くすくすと腕の中で笑い、ふと笑い声が止む、コツンとくっついたおでことおでこ。
それは、あったかくて、心地よい・・

沿うように、鼻をくっつけ合わし、流れるように、唇がちゅっと重なった・・・



……To Be Continued…

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