act 11

火傷した所が熱い。ジンジンと脈を打つ
氷・・・今更おそい。

「この痛み・・嫌いアル・・」
それは、高い音を鳴らす、この心臓に突き刺さる音、それとも、火傷の跡か。神楽も分からなかった

..............

(すっかり遅くなったアル・・)
短時間のコンビニのバイト。着替え終わった時には、9時を過ぎていた
仕事をしていても、頭の中で何度も出てくるのは、あいつの事ばかり、客の前で、何度フルフルと頭を振ったか分からない。となりのレジで、長谷川と言う男が、何度も笑っていた
その度、神楽は毒舌を吐く。ちょっとそんなに怒んないでよ・・と長谷川は言った


一人、ポツン、ポツンと帰る。
途端、後ろに同じような足音が聞こえるのに気付く。
少し止まってみる、不自然がないように、ミュールのかかとを意味もなくつつく
追いぬくと思っていたが、同じように足音が止んだ
自分が歩き出すと、その足音がふたたび聞こえてきた

人通りの無い小道。なんで近道だとこっちの道を選んだのかと後悔した
どうする・・振り向いてみるか・・でも誰も居なかったら・・そして自分が前を向いたときに幽霊が目の前に立っていたら・・・!!!!!

ブルルと恐くなる
後ろの人間が恐いのか、自分の中の妄想が恐いのか分からないが、とにかく早足になる。
途端。後ろも早足になる

(何か・・恐い・・)
神楽は走り出した。もう少し走れば家に着く
もう少し、もう少し・・何も考えないで、心臓のドクンドクンと言う音を聞きながらマンションに駆け込んだ

肩で静かに息をする
耳の奥から聞こえる心臓の音。誰も来ない・・
恐い・・そのままポストをさっと覗いて郵便物を急いで取り、目を這わす

「えっ・・・・」
ピタリと神楽は止まる
手の中にある郵便物の中の一つ
その中に、赤い文字で『消えろ』と書いてあった

(何コレ?何で?何も私してないヨ)

何度も自分の行動を思い返すも、何一つ心当たりが見あたらない
後ろの足音。ポストの文字
冷や汗が背中に伝う。とりあえず家に駆け込む

恐い・・誰が・・?

一人で居るのが無性に恐くなる
隣に行けば、あいつが居る。でも行きたくない。あいつと居ると自分はおかしくなる
それが、何なのは、まだ分からない

ふと気付く

(銀ちゃん!!)
急いで携帯を探す

が、また無い。今度はあいつは関係ない、多分自分が忘れただけ。
銀八の所に行くには、外に出なければいけない。そんなの恐い
でも隣には行きたくない・・・。とりあえずテレビ・・音が無いと余計に恐いとリモコンを探す

その時に目に入った物
ベランダ・・誰か人が居る
背筋が凍った。電気を付けた時点で、人が帰ってきているのは分かっているはず・・
そういえば、ここ何日か、洗濯物がなくなっていた
風で飛ばされたかと思っていたが、違ったとしたら

さっきからの追い討ちで、珍しく体が動かない
声も出ない。
咄嗟とった行動
自分のバックを、フルパワーで隣に通じる壁へと投げつけた
自分達だけの秘密の合図。
その音は景気よく破壊音が響く

その瞬間、ベランダからは影が消える

そして隣のドアのガチャリと言う音
大嫌いだったこの音が、今は何よりも自分を安心させる音へと変化している事に神楽は気付く



……To Be Continued…

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