act 9
(めずらしいな。あいつが動くなんて・・・)
先程までの、一部始終を見ていた土方は考えた
カフェテリアに来てから、キョロキョロと周りを見回す沖田
それを、何か気になり、沖田の観察を始める
目の前にある飯を黙々と食べる
相変わらず、周りに女がやってくる
そして、それは自分も変わらない事だが、土方にいたっては、相思相愛の彼女が居る事は、広まっている
席には、近藤、山崎と居るが、女は常に沖田にへと視線は向けられる
しかし、沖田は、全くの無視。聞こえてないといった方がピッタリな表現
黙々と食べながら、時折、入り口付近に視線をよせる
誰か探しているのかと、一緒に土方も探る
ピクリと沖田は動く。視線の先には、先日沖田と言い合いをしていた桃色の髪の女だった
すぐに沖田は、視線を伏せた。
だが土方は見ていた。沖田が視線を伏せた瞬間、入れ替わりの様に神楽がキョロキョロと誰かを探すような動作をとる
思わず、神楽と沖田を交互にみる
(こいつら・・・)
沖田に視線を向けていると、がっしゃ〜んとの音が聞こえる
視線を音の方に向けると、桃色の髪の女が汁を被り、お盆を持ったまま熱いと叫んでいる
何やってんだと、土方は立とうとした
そう思い立とうとした時には、沖田に甘え触っていた女の手を払いのけ、ガシャンと自分の食器に当たり、こぼれ、そんな事お構いなしに、桃色の髪の女のもとへ、血相を変えて走る沖田が目に入る
普段、滅多、いや一度もこんな沖田を見た事がなかった土方は、もともと開いている瞳孔を、更に広げる
いつも、ひょうひょうと、滅多な事では動じない。顔色ひとつ変えない男
(総悟の奴ぁ、あんな顔も出来んじゃねぇかよ)
手を引かれ、キッチンへと行く二人を見つめながら土方は思った
.............
「あ、ありがとうアル」
目を伏せたまま、視線を流れる冷水に向けながら、ぼそりとつぶやく
思わず、先日も、反対の立場で、同じような事があったと思い出されるが、夢中でかき消す
「手に跡が残ったら、どうすんでさぁ」
左上から聞こえる低い声。背中のあたりから、ゾクリと感じた
「き、気をつけるネ」
沖田の体は神楽から離れた。沖田の香水の匂いが、ふわりと掠める
甘ったるい、それでいてクールな・・言いがたい香。しかし、沖田にはピッタリだ・・なんて考えてた
人を惑わすくせに、自分はクールで・・。
「ほれ。コレで後は冷やしなせぇ」
渡されたのは、袋につめた氷。神楽の手を取り、ひんやりとのせた
渡されたのは、冷たい氷。
触れられた手が、又、火傷したみたいに熱くて、折角持ってきてもらった氷が溶けそう・・
手を引かれ、キッチンを出て行く沖田の背中を見ながら、そんな事を考えた
……To Be Continued…
作品TOPに戻る