act 2

部屋の中。ダンボールを裂いた後の切りカスが、そこら辺に飛び散っている。一人で黙々とやっていたが、隣の男の事でイライラとし、途中から放棄をする。
気分が悪い事このうえ無い。ドキドキしながらお菓子も選んだ。
一体どんな人なんだろう。優しい人がいいな。時々ばったりあって、ご飯多く作った時には、隣に言って、ちょっと作りすぎたの…。
なんて、テレビドラマみたいなシチュエーション。楽しみだった。それを、粉々に、跡形もなく、砕いて、散った。
神楽は床に背をつけ、思わずため息を付いた。
(最悪アル…。)
隣の部屋からは、あいも変わらず甘えた声が響きだす。マンションのクセになんて壁が薄いんだと神楽は頭を抱えたくなった。
これからちょくちょく他人の情事の声が聞こえるのかと思うとうんざりした。
神楽は気分を変えたいのと、この声から逃れたいのとで、ダンボールの中とぐちゃぐちゃに探し出す。
手に取ったのは、お風呂セット。お風呂をためながら、よもや浴室へと逃げ込んだ。マンションとだけあって、そのお風呂は銀八の家の浴室より広かった。
とりあえずバスタイムを楽しむ間は音もショットダウンされ、心地よいひと時を味わえた。

そして、風呂から出れば、今度は何もやる気が起きない。腹も減った。
何か作るにしても、又ダンボールから探さなければならない。考えた末、神楽は買い物に出かける事にする。
まだ4月に入ったばかり、まだ外は肌寒いと上着を着る。財布を持って、ドアノブを持つ。ドアを開けると、丁度今しがた隣の来客も出るトコだったらしく、重なってしまった。

一人は、ショートカットの女の子。見た目からすれば目もぱっちりで可愛らしいと言う印象を持つ。先ほど甘えてた女はこっちかと神楽は考える。そしてもう一人は、神楽ほどの長い髪。黒眼が大きく、そして気の強そうな瞳だった。そうこう見ていると女と目が合い、反射的に逸らしてしまう。
そこにひょこっと沖田が顔を出した。が、沖田が顔を出した時には既に神楽は走り去った後だった。残ったのは、先ほど入った風呂の残りがだけが残った。

.....
「あ〜あんな奴が隣なんて最悪アル」
そこそこ走った所で神楽は足を止め、息を吐きながら言葉を口にした。走った事で、体の芯がじんわりと温かく、頬を赤く染めた。言葉を口にした事で、今しがたの嫌悪感と先ほどの苛立ちがふつふつと浮き上がってくる。
(彼女は一人で十分アル!それをアイツ…。あぁ、もう信じれない奴ネ!)
神楽は、ブンブンと頭を振って、その感情を顔に表した。

「何そんなに怒ってんでさぁ・・」
「あぁ〜?隣の馬鹿に・・・うぇぉあああ!!!」
平然と答える自分の横には男が居る。あまりにも驚いた事で、人の言葉にさえならなかった。
「お、お前何シテルネ?てか、あの女の子…。」
「あぁ?女ですかィ?あんなの何でもありやせんぜ、いつもの事でさァ」
ひょうひょうと言い放つ沖田に半分呆れ、半分苛立ちを含め神楽は口を開く。
「お前、自分が最低な事言ってるって、自覚してないダロ?其処が余計に気にさわるネ」
そう言うと、神楽はこんな奴に関わりたくないと、自分の足を速めた。しかし、沖田も負けじと付いてくる。しかも、沖田は歩くその横から、神楽の顔をコレでもかと見つめている。」
「アンタ…綺麗な面してんなァ…」
神楽は思わず吹いた。足がきゅきゅと止まる。顔を真っ赤に染めながら、沖田を見る。が、その口はどもる。
「お、お前、恥ずかしくないカ?いつもそんな事軽く言ってるアルカ?私には理解できないアル。さようなら!」

神楽はそう言うと、全力疾走で走り出した。それには、さすがの沖田も付いて来る事なく、神楽は一安心したのだった。やれやれと、買い物を済ます。昼間に買い物に出てたら良かった…。今更遅いけれど本気でそう思った。
本当はもっと今日はいい一日になるはずだった。思い起こしてみると、確かにツイてなかったのだ。本当は荷物の手ほどきも銀八に手伝ってもらう予定だったが、入学式の準備で中々忙しいと断りの電話が来る、お妙にも頼んで置いたが、それも急なな用事で断られてしまった。そしてあの男。今日は厄日だ。そうに違いないと神楽はがっくりと肩を落とす。まだ部屋の中は、ぐちゃぐちゃ。考えただけでも嫌になる。

やっと家路に付く頃には、お腹がぐ〜と鳴らせ、早く食い物を寄越せと騒いでいた。
「お腹すいたアルぅぅ。」
神楽はたまらず言葉を漏らす。当然その言葉に返答を返すモノは居ない。
家のノブに手を掛けた時、又もや隣の部屋からガチャリと音がした。ゲッ…。そう思った時には既に遅し、目と目が合ってしまったのだ。
「アンタ。一人暮らし?」
なんつー質問を聞くのだ。これはセクハラです。ハイ、逮捕ォ。
「そうアル。」
「食器出した?」

神楽は、あっと思わず声を出す。ちょこっとしたお皿でも何でも、とりあえず何も出してない。このお腹が減ってる今、とりあえず早く食べたかったのに。水を飲むグラスを探す事から初めなければならない…。顔には、まずったと言う表情が出ていた。
「俺んちに来なせぇ。グラスくらいなら出してやらぁ。」
沖田は平然と言った。
「んな、誰がいくカ?お前みたいな奴の部屋に行ったら、きっと襲われるアル。」
「じゃあ、食器なしで?」
沖田は口元をあげ、勝ち誇ったように口元をあげた。
いや、いや、ありえない。こんな男について行くなんて何処の馬鹿女だ。神楽は考えるが、それを覆す様に、お腹の音は更に大きさを強調した。目の前の男と空腹。―――何でもいいから食べたい!!。
勝敗は空腹へと傾き、馬鹿な女は隣の家をくぐる羽目になってしまった…。


……To Be Continued…

作品TOPに戻る







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -