act 34

星海坊主が屯所に姿を現したのは、神楽が屯所に着く30分程まえの事だった。
初め、何処か料亭を構える。そう携帯で星海坊主は言ったが、彼氏を紹介するのに、其処まで大げさにするのは嫌だという神楽の意見の元、新撰組とは面識もあり、沖田は其処の一番隊隊長と言う事もあり、屯所内で済ませるようにしたのだった。

屯所の入り口、星海坊主がただ立っているだけだと言うのにその威圧に近藤は押しつぶされそうになった。
確かに、この先に娘の彼氏がいる。それだけで星海坊主がピリピリするのが分かるような気がした。近藤が中へ促すと、うむと低い声で頷き、上がる。部屋に通されると既にそこには沖田が正座をして待っていた。一際星海坊主の瞳が光った。星海坊主も馬鹿ではない。この沖田総悟が只者ではないと気づくのは一瞬だった。ただただ座っている様はまるで爪を隠す鷹の様だった。座っているだけでもその威圧でビリビリと肌が痛い。

星海坊主が無意識か意図的かで出している威圧に押されないようにと沖田も威圧したのだったが、おかげで屯所内の客室はもうもうたる雰囲気に駆られていた。思わず茶を持ってきた山崎がその威圧感に押され部屋に入れないほどだった。其処はくさっても局長、近藤の出番である。まぁまぁと二人を宥めにはいった。

その時であった。此処に居てもおかしくはない、土方の声が障子越しにかかったのは。近藤の代わりで先ほどまで屯所を留守にしていたが、今しがた戻ってきたらしかった。近藤は土方に気付く、おぉ、トシか、入れ。そう言った。すっと障子を開けられる。土方が姿を現し、星海坊主が視線を合わせる、その威圧に土方も気付いたが、土方の後ろ、シルエットに姿を現したその人物を見るなり、威圧も何も吹っ飛んだ。跡形もなく。そしてそれは星海坊主と真向かいに座っている沖田にも言える事だった。

........

「――ハゲ。オイ、ハゲ!娘の姿に呆気にとられんのも分かるが、とりあえずコチラ側に戻ってきやがれ。」

星海坊主が気付いた時には、自身の向かい側。神楽の横にまるで付き人の様に銀時が袴すがたで新八と座っていた。そして、同じくあちら側の世界に吹っ飛んでいる青年が一人。土方の肘でつつかれるが戻ってきそうにない男。
「銀さん。沖田さん呆気を通り越して放心状態になってますよ。」
新八に言われて銀時は沖田の方をみてみれば、なるほどと納得がいった。神楽の姿に見惚れたのであろうが、自分の中の神楽と同一人物であるのかを、脳内データーをひっぱりだした所で、プスンプスンと音を立ててしまったのだろうと見て取れた。神楽は沖田の横に付いた。袖をつんつんと引っ張る。ねェ沖田。ねェ。神楽は何度も呼びながら目の前で掌をふりふりと揺らす。やっと戻ってきた沖田だが、ま隣にいる神楽を視界にいれると同時、不覚にも赤くその顔は染まった。そう、父親の前でだ…。

星海坊主がわざとらしく咳ばらいをした。皆の雰囲気がシンとなる。銀時を覗いて。
「オイ、ハゲ。娘の彼氏にいちゃもんつける様な事ァ、天下の星海坊主がする訳ねェよなァ。」
どこから調達したのやら、扇子を勢いよく取り出し、華麗に開く。そこの口元をかくし、何ともイタズラな目で笑った。一本。星海坊主の額に青筋が引かれた。
銀時は、フォローしにきたのか、めちゃくちゃに邪魔しに来たのか分からない面持ちをしている。
「オイ。天パ。貴様何故ここに居る。俺ァ呼んだつもりはねェぞ。」
「悪りィが、俺も呼ばれたつもりはねェ。」
「だったらさっさと帰りやがれ。斬るぞ。」
「テメーが暴れた時に抑える人間も必要ってこった。まァそんなに気にするな。」

そう言うと銀時はちょっくら便所にいってくらァと席をたった。部屋を出る際、新八にも声をかける。その雰囲気を察した土方、近藤も席をたってしまう。残されたのは3人のみ。台を挟み、星海坊主。そして神楽と沖田。
沖田の口から、お嬢さんを下さいとの台詞がでてくる様なこのシチュエーションに、ここ最近で一番緊張している神楽と、すっかりいつもの様子を取り戻した沖田。
そして、銀時との会話で青筋が一本でたままになっている星海坊主。

何とも微妙な空気が辺りを流れたのだった…。


……To Be Continued…

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