act 33

「姉御ぅ、何で此処までするアルカ?」
キュッ。お妙が後ろで帯をきつく締め上げた。神楽はうっと低い声を出す。
「父親に自分の彼氏を見せるんでしょ?沖田さんが正装するなら神楽ちゃんも正装しなくちゃ。」
ハイ!後ろでお妙がポンと綺麗に締めた帯を叩く。神楽は又、小さくうっと唸った。
着物が苦しいアルぅ。神楽がそう言うと、着物はそういう物です。にっこりとお妙が答えた。

鮮やかな紅色を下に、同じように小さな、それで居て鮮やかな花々が散らばっている。
足元の方に行くにつれ、黒く染まっており、其処には金色の弧が、まるで波紋のように描かれていた。
初めて履いた足袋にも、キツイと文句を言うが、一度妙がにっこりと微笑むと、顔が引きつり、それ以上何も言う事はなくなった。金色の帯には、同じように波紋がかった模様が描かれて居た。

神楽の淡い髪は一つにまとめ頭上でとめ、少しだけ髪を残し、肩越しに鎖骨へと流していた。
そして寂しくないようにと真っ白な花を頭に散りばめている。
お妙の余所行きセットが、こんな所で役に立つなんてと、お妙自身、結構なノリだった。
殆ど化粧はしていないが、ほんのり、頬だけを淡く染めた。控えめな色を唇に落とすと、其処には別人が出来上がった。
別人といえど、殆ど化粧はしてないので、神楽そのものの質がやはり引き立っただけなのだが、どうやってもいつもの神楽からは想像出来ないほど美しく、お妙も思わず唸った。
「とっても綺麗よ。神楽ちゃん。思わず見とれちゃったわ。」
お妙が本気でそう言うと、神楽ははにかみ目を細めた。お妙が、いいですよ。そう言うと、襖の向こうから銀時と新八が姿を現し、絶叫した。

「だだだ誰コレ?ぎぎぎ銀さんこんな人知らねェよ?。てか間違いじゃね?!お宅家を間違えてんじゃ―――。」
「何言ってるアルカ、銀ちゃん。」
神楽がいつもの様に口を開くと、口をあんぐりしたまま開けていた新八が言葉を口にした。
「か、神楽ちゃんだよね?!ほんっとに神楽ちゃんなんだよね?」
そうアル。神楽がそう言ってもまだにわかには信じられないような面持ちで見ている。
そんな二人の様子を見ていたお妙は自慢げに笑った。
いつもより断然動きづらく、動きが小さいため、いやでも、汐らしく見えてしまう。あまりの神楽の変貌振りに銀時と新八は息を呑んだ。

......

銀時は一連の話しを神楽から聞き、とりあえず息をはいたのだった。
息を切らし、肩で息をする神楽だったが、銀時に話しをした事でいくらか落ち着いたようだった。
星海坊主は、男に会わせろ。そう神楽に言ったと言う。散々神楽は彼氏なんて居ないと言い張ったが、一番最初にうろたえた姿を星海坊主にはっきりと感ずかれていたので、どうあがいても後のまつりだった。
これから仕事に行く、また後で連絡するからその時に連れて来い。そう低い声言うと背中をむけ去って行ったというのだ。

ほどなく神楽は吹っ飛ばした沖田を探した。
見つけた沖田は、少々ふて腐れていたが。星海坊主の恐さを知らないわけではないので、其処はあえて神楽に感情を向ける事はしなかった。
神楽から話しを聞き、すんなりと沖田はOKをだした。

近藤に事情を話すと、さすがに隊服ではまずいだろうと言われる。当の沖田はそんな事をみじんも気にする風ではなかったが、土方さえも、仮にも彼女とは言え、父親に会いに行くのに、隊服はまずいと近藤と同意見だった。
ならば普段着にと沖田が言ったところ、近藤が、沖田にちょっとまってろ。そう言い上等の袴を出してきたのだ。
近藤の青年時の物だったが、その質は折り紙付きだった。

袖を通してみると、以外にもピッタリであり、土方もこれならと頷いた。
しかし、これで神楽がチャイナ服とはなんともアンバランスだと言われ、神楽は万事屋に戻り、銀時に撒くし立て、お妙に話しが行き、今に至ったのだった。


……To Be Continued…

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